木村靖二のレビュー一覧
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[一変の戦]主にヨーロッパを中心として甚大な人的・物的損害をもたらし、その後の世界の在り方を一変させることにつながった第一次世界大戦。一つの暗殺事件がどのようにこの歴史的災厄につながっていったのか、そして戦争の過程で国際社会や各国の国内体制がどのように変化していったのかを、最新の研究を基にまとめあげた作品です。著者は、西欧ヨーロッパ、特にドイツを専門とされている木村靖二。
日本の歴史の教科書ではどうしても小さく扱われてしまいがちな第一次世界大戦ですが、それがもたらした今日にまで続く影響の大きさに驚かされます。また、従来の見方とは異なる見解も紹介されており、第一次世界大戦そのもののみならず、 -
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馴染みの薄い事実が多く大変興味がそそられる。
開戦のきっかけは第三次バルカン戦争だったこと。多民族国家の帝国であるトルコとオーストリアの衰退、そしてネーションステートへの欲求を前提に理解しないと「火薬庫」を語ることができない。
ベルサイユ条約が語られるほどドイツに極端に不利ではなく、とっても不利…程度だったこと。後のヒトラーの台頭が極端に不利説を後押ししたのかもしれない。
そして、第一次大戦を近代と現代の結節点として捉えること。日本では1945年を政治的変化をもとに現代の始点としていることが多いと思うが、それはイデオロギー的に過ぎるのではないか。世界史的には本書で述べる通り第一次大戦が現代への -
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アメリカのコメディを観ていて、以下のようなやりとりがありました。
俳優「行かなきゃ!第1次世界大戦の兵士の役なんだ!ナチスと戦ってくるよ!」
友人「待てよ!ナチスは第2次世界大戦だよ!第1次は違うよ!」
俳優「そうなの?第1次は誰と戦ったの?」
友人「・・・。早くいけよ!時間がないよ!」
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大いに笑ったのですが、実は自分もあまり笑えないなあ、と思いました。
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と、言うわけで、ちくま新書の「第1次世界大戦」。227頁。お手軽です。
2014年、第一次世界大戦開戦100年記念の年に出版されています。
著者の木村さんという方は、1943生。歴史学者で、専攻は西洋近現代史、ドイツ -
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第一次世界大戦開戦から100年にあたる2014年に多く出た関連本の一冊。軍事的な動向を中心に、大戦の概要がコンパクトにまとめられている。
「おわりに」によれば大戦がもたらしたものは以下のようである。
・列強中心の国際関係は否定され、対等な国家からなる国際関係(国際連盟)へと移行した。
・多民族帝国が崩壊し(ロシア、オーストリア、オスマントルコ)、国民国家への移行が進んだ(民族自決権の承認)。
・戦争に動員され、多大な負担を求められた国民は、義務に見合うだけの権利を求め、国家もそれに応じざるを得なかったため、ここに国民参加型の国家が成立し、福祉国家への道が拓かれる。また、戦時下においては戦場に -
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第一次世界大戦についての、どちらかといえばミクロ視点の入門書。
第一次大戦は何故勃発したのかという起源についての学説を序章で概観し、以下、1914年以降の時系列に沿って大戦の戦史、政治史、時に社会史にも目を配りながら、明快に記述されている。
第一次大戦についての膨大な先行研究に立脚した論述の厚みや、学会や社会での大戦の受容のされ方の推移についてもコンパクトに述べられているのが特徴。
深みにはまりすぎずも、大戦の幅広い面についての理解をしっかり深めてくれる、一般向け図書としては大変良くできた一冊。
教科書執筆に携わっている著者だけあり、文章がこなれている。
欲を言えば、後の歴史に与えた影響や -
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第一次世界大戦の概要とそれが世界に与えた影響。
日本ではあまりよく知られていない第一次世界大戦について百年後に書かれた本。
緒戦に今までにない量の砲撃と大殺戮が行われていたことや物量戦に移行してどう戦時経済体制、総力戦体制が構築されたかや、戦前から戦争終結に至るまでの各国の外交や、前線での兵士の話なんかも抑えてます。
また、第一次世界大戦の後に社会が変わり、列強体制から対等な国家から成る国際関係が生まれ、国際社会の構成単位が帝国から国民国家に移行。総力戦体制で国民各層に国家への協力を強制したことから、公的領域へ国民が参加するようになったと。