山口意友のレビュー一覧
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最近,世の歯の浮くような「きれいごと」を聞くたびに虫唾の走るような思いがしていたので,久々にすっきりする主張を呼んだ気がする。
ただ,著者はいくつかの社会問題に対する主張を例に取りつつ世の「きれいごと」を切り捨てていくのであるが,道徳教育における現実的なスタンスの必要性を,社会問題に対する自己の主張と絡めて書く書き方に少し疑問を感じた。
わたしはそのそれぞれの意義を認めるが,一緒に語ることによって,本人のその社会問題に対する主張を述べているのか,道徳教育のあり方に対して投じた一石であるのか,かえって混乱するのではないかと感じた。
むしろ「きいれごと」という名の過剰な平等主義に偏ることがお -
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現代に蔓延る「キレイゴト」を批判し、「己の美学」を持つことの重要性を語った書。
これを読んで、いかに自分の考えが浅いか分かった。それにしても鋭い語り口で、今話題の「夫婦別姓」や「死刑廃止」問題では、筆者は立場を鮮明にして肯定派を切り捨てている。
自分自身の「美学」=行動の規範を持つということはきわめて重要なことであると考えるし、現在の学校教育の場での「道徳」は形骸化したものになっているということも、事実であると思う(教育実習などの拙い経験ではあるが)。
自分としては、本書では大いに揺さぶられるものがあった。子供に「己の美学」(この表現は不適当かと思うが、本書中の表現であるから使用する)を -
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久々の会心の一作。最終章の8「正義を疑え」を読んでから本文を読むと理解が深まります。
正しさの二義性があり、1つめは「真実・真理などの事実を語る正しさ」と「己が信念としての正しさ。つまり正義」がある。この二つめの正義には立ち位置によって定義が異なり、為政者としての立場なのか、個人としての立場なのかによって変わる。
多くの平等は為政者の立場からの平等がうたわれているが、それは決して個人の平等ではない。たとえば男性と女性で法律的には平等であるが、これは為政者(=法)から見た平等である。男性と女性はそもそも役割が違うのだから、個人としての立場では平等ではあり得ない。
正義を疑うとは、為 -
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正義とは何かを考える。あなたの正義は本当に正しいのか?ということを問う内容である。二律背反という言葉が出てくるがまさにこの言葉に意味するところに尽きると思う。第3の案があってもよいと思うが、それは現実社会での問題であり、学問的にはどちらかに決めなければならないということになるのだろう。現職場(大学)での調査結果などが示されて、とてもユニークである。社会人よりは学生のほうがしっかり考えを持っているのかもしれない。
かぎ括弧がたくさん出てくる。言葉の定義のようだが、引用文か?表示形式には論文のように決まりがあるのか?各章末にまとめとして示してあり、簡潔な言葉で説明されているために、理解の確認をでき -
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[ 内容 ]
「正義」とはいったいなんだろう?
「秤」と「剣」に象徴される正義概念は、今日、都合の良い解釈によって混乱をきわめている。
「均等性」の一義的解釈から生じる「悪しき平等主義」や、あるいは「力」で相手をねじ伏せようとする「他者批判の正義」など、巷に溢れる正義概念に対する誤解や曲解を一刀両断し、己の不完全性に目を向ける「まっとうな正義」を説く。
目からウロコの「正義論」入門。
[ 目次 ]
序章 争いと正義
第1章 正義の源流
第2章 平等主義の問題点
第3章 庶民の正義
第4章 愛と正義
第5章 生命と正義
終章 道徳と正義
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆ -
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平等偏愛にメスを入れる一冊。
学芸会で桃太郎が数十人出てくる喜劇。
運動会の徒競争でみんな1位の喜劇。
学期末の通知簿でオール5の喜劇。
みんな仲良し。命は地球より重い。
みんな助け合って譲り合って、みんな一緒。
学校や家庭でそう教えるも、現実との乖離は否めない。
そこを鋭く追及する。
格差社会や夫婦別姓、死刑制度や死生観など
デリケートな問題をテーマにしているだけに
そのズバリ批判はなかなか爽快な部分が多い。
リアリスト、というのもまた違う。
著者自身は法律でも憲法でもない部分に「美学」を求める。
どんなものが美学なのか、ということではない。
自分なりの美学を研ぎ澄ましているのか、 -
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内容は現行の「道徳教育」への批判というよりも、
世論で広まっている様々な「キレイゴト」について、
いろんな人の立場や状況に立って考察し、
痛烈に「キレイゴト」を批判するもの。
実際、著者の批判する「キレイゴト」には
ボランティア、夫婦別姓、教育勅語、死刑制度など、
かなり社会的な問題についてのものが多く、
学校現場で扱われる「道徳教育」への批判としては
少々ずれた論の展開になっていることは否めない。
(実際の授業は、主に日常の話題が多いので…)
ただし、彼自身の得意分野は「正義」で、
著者自身が教職の授業に関わっているために、
教師を対象とした道徳教育の「論」として
自身の見解を述べている -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
電車の中で化粧する女。
外見ばかり気にする男。
批判的な眼差しを向ける大人に対し若者達は言う。
「別に人に迷惑かけてないじゃん!」。
この殺し文句に対する反論を、現在の道徳教育は持ち得ない。
「価値の多様性を認めましょう」といった美辞麗句では何も解決しない。
子供達には「己の美学」を持つことを教えるべきなのだ。
ほんとうに身につく道徳教育論を展開し、さらに「立ち会い出産」「強制ボランティア」「男女産み分け」「夫婦別姓」「死刑廃止」といった問題にも一石を投じる意欲作。
[ 目次 ]
序章 相手の立場を考えるとはどういうことか
基礎編(キレイゴト教育からの脱却 立ち会い出産は感動的