山本章子のレビュー一覧
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【「上からのひきとり」の進行】
三沢、厚木、岩国、嘉手納の米軍基地と築城、新田原、馬毛島の自衛隊基地の街が「日米地位協定の現場」として描き出される。本紙でもささやかながら築城、新田原、馬毛島の基地問題を報じてきたが、本書で掘り下げられた続報が得られた。
近年は普天間、辺野古以外の米軍基地問題について本土メディアがふれることは極めて少ない。三沢、厚木、岩国、嘉手納基地周辺の住民たちが直面している、日米地位協定のもたらす不合理を、本書からかいま見る必要があるだろう。
ひきとりの観点からは、岩国市議会議長の桑原が2013年からすでに「沖縄の基地負担の軽減に協力する」決議を、全国議長会を通じて基地を抱 -
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日本の米軍基地の様々なところを取り上げて、その問題を日米地位協定で説明している。山本章子が筆頭者になっているが、実際は宮城裕也が新聞記者として回ったところの説明である。嘉手納基地だけではなく、三沢基地、岩国、築城、新田原、馬毛島、首都圏の基地について書かれている。
首都圏の基地が手薄であるように感じられるので、厚木基地、横須賀基地、横田基地について、また別の本で、首都圏の基地としての問題を書いてほしい。
日米地位協定と米軍基地について、ところどころに大学生からのインタビューもはいるので、学生が知るのにはわかりやすい本であり、ところどころに大学生からのインタビューもはいる。 -
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本書は今年読んだ本の中でも図抜けている。私は本書が、日米同盟並びに日米地位協定に対する国民の考えに根本的な変化を引き起こす力を持っているとすら言いたい。もし今年、自分の周りの人に読んでもらいたい一冊を選ぶならこれを選ぶだろう。
筆者はあとがきで沖縄への感謝を口にする。
私は、筆者がこのあとがき部分を含めた本書全体を通して読者対し非常に大きな配慮をしたことを感じた。筆者の配慮を台無しにしないためにもそれについて多くは語るまいが、その配慮があってこそ本書はその読者がどんな立場にある人だったとしても読みやすく、価値のあるものになっていると思う。
ぜひ皆さん読んでください。 -
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われわれは在日米軍の基地問題について、あまりにも無関心すぎるのではないか。騒音被害などを日常的に受けている周辺住民は別にして、わたし自身を含む国民の大半は、どこか「対岸の火事」のような存在としてしか認識していないように感じる。このままではよくないと思い、第41回石橋湛山賞を受賞するなど評価が高い本作で、在日米軍の地位の根拠でもある日米地位協定について学んでみた。読んでみてわかったのは、「日米地位協定合意議事録」という巨大なブラック・ボックスの存在である。日米地位協定がいわば「不平等条約」であることは広く知られているが、著者いわく、その根源にはこの議事録の存在があるという。わたしは毎日新聞を熱心
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【合意議事録という不誠実】
沖縄で事件・事故が起こるたびに在日米軍の権利を保証する日米地位協定の改定が叫ばれてきたが、本書はそれでは問題は解消され得ないと主張する。なぜか。
日米地位協定は1960年の日米安保改定時に、占領期の米軍特権が色濃く残る日米行政協定を改正したもの。自国の利益を最大限追求するアメリカをなんとか説得するために、日本政府が「合意議事録」という「密約」を取り交わしてようやく改正にこぎつけたという経緯がある。
文言上は「改正」されたのだが、実際は「合意議事録」によって占領期そのままの米軍の排他的な自由運用は担保されてきた。しかもそれは国民の与り知らぬところで2000年代初頭まで -
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日米同盟を扱う本は多々あるが、本書は、同盟の骨格を為す日米安保条約の更に奥の院である日米地位協定の成立経緯を紐解き、最近まで明らかになっていなかった合意議事録こそが第一次安保の日米行政協定下における特権構造を維持するシステムの核心であり、外務省・防衛省など政府がひた隠しにしてきたことを明るみに出す名著。
終戦時から米軍駐留の歴史や特権成立の歴史を簡潔にまとめ、これが第二次安保・沖縄返還時に合意議事録制度として成立し、見かけ上は改善したように見えて実態は変わってなかった事実を指摘。
また、その頃までは協定改正や基地返還に取り組んできた外務省が、冷戦の終結や米国における対日感情の悪化により、フ -
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在日米軍との関係を定めた日米地位協定。多くの摩擦、紛争の原因はこの協定にあるのだろうが、日米安保条約に比べるとあまり知られていない。歴史、ドイツやイタリアとの比較など。日本の防衛体制の根本に関わる非常に重要なテーマ。
他国と米軍の関係の比較、歴史を交えた日米地位協定の解説。テーマが奥深いだけに自分の少ない知識ではちょっと難しかった。
アメリカは国務省と国防省、日本は外務省と防衛省で意見が相反することが問題を大きくしているように思える。
国民に反発されないように密約を結んだり、議論を避けてきたツケが現在につながっているように思う。
沖縄の基地問題を知る上でも良い1冊。 -
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クラシック音楽、演劇、オペラなど、次第に縮小している?といわれている
芸術のマーケティング本。
フィリップ・コトラーの推薦序文つき。
内容は
第1章 芸術ビジネスの可能性
第2章 現状と顧客の特性をつかむ
第3章 芸術鑑賞のメリットとは
第4章 芸術マーケティングの計画を立てる
第5章 作品、会場、コミュニケーション
第6章 芸術の値段
第7章 市場調査の手法とプロセス
第8章 インターネットと芸術ビジネス
第9章 芸術におけるブランドとは?
第10章 顧客ロイヤリティを築く
第11章 気まぐれな顧客を重視する
第12章 芸術鑑賞の経験をもっと豊かに
さまざまな角度からのマーケティングを -
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コンサートや舞台など、芸術をビジネスとして成り立たせるために、
観客をどう集めるかについて、マーケティング視点から書かれた本。
芸術関係に携わっている人であれば、どれも参考になると思う。
では、関係していない人にとってはどうか?
マーケティングの重要性は当然ながら、
ものを売るためのやり方は無尽蔵にあること。
売れないのは工夫が足りないということが実感できる。
何事も外部要因のせいにしてはいけない。
・企業にとって製品は目的だが、顧客にとっては手段
・「お金に見合う価値」でなく、「時間に見合う価値」で勝負
・顧客経験に重点を置く
等、自身が身を置く業界でも見習わなければならない内容も多か -
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舞台芸術の分野での4P/4C(製品・価格・場所とチャネル・プロモーション/顧客にとっての価値・顧客にかかるコスト・顧客にとっての利便性・顧客との会話)の考え方を、実際の事例や調査データとともに解説。
顧客のターゲティングでは、年齢、ライフサイクル、性別、人種民族による分析と事例。高齢者に向けては、11時開演にしてラッシュ時間とずらしたり、20~30代、10代にはそれぞれにメリットの異なる割引制度など。
価格と販売方法については、定期会員制とシングルチケット購入者へのプロモーションとが対立するような形で書いてあり、おもしろい。
アメリカでは特に、1960~70年代に定期会員制度が定着、芸術