キジ・ジョンスンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本屋でカバー買い.ヒューゴー賞,ネビュラ賞,世界幻想文学大賞受賞,というカバーの文句は伊達ではなく,とても良い本に巡り会えたと思う.
SFと思って読むと間違いで,むしろ,南米の作家の書く小説の,奇妙な風合いに似たところがあって,変な設定を舞台にしているところは確かにSFといえるのかもしれないのだが,その設定を「そういうものである」という前提で物語が紡がれており,何か解決や注釈が与えられることはない.
その舞台に登場する人物達が,その設定に巻き込まれる(決して右往左往する訳ではないが.何しろ,元からそういう世界で,急にそこに放り込まれた訳ではないのでなので)様が描かれている. -
Posted by ブクログ
ネタバレ霧に橋を架ける
「スパー」
「水の名前」
「シュレディンガーの娼館」
「変化後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」
「陳亭、死者の国」
「ポニー」
「26モンキーズ、そして時の裂け目」
「蜜蜂の川の流れる先で」
「噛みつき猫」
「ストーリー・キット」
「霧に橋を架ける」
ショートショートから、表題作の中編まで、様々な長さ、味わいの短編集。
いくつかの物語に共通しているキーワードは、犬や猫への愛とコミュニケーションの難しさ。
表題作は危険な霧の川に橋をかける技術者の物語ですが、プロジェクトリーダーの孤独や工学を極めるものの迷いなどがうまく描かれていたと思います。
「蜜蜂の・・・」は、蜜蜂の川の源流を辿るロードストーリーですが最後が幻想的で良かったです。「変化後の・・・」は犬が話せて考えられるようになった変化後の物語ですが、犬好きにはなかなか厳しいお話しでした。
思索、ユーモア、皮肉、ストーリーテリングと一流の作家かと思います。
SF、幻想小説もいいな、もっと読みたい!と思える一冊でした。
竹蔵 -
Posted by ブクログ
主人公の造形がとても良い。
経験豊かで知恵があり意志の力を持っていて、けれども決して強くも万能でもない、ちっぽけな一人の人間。社会的には弱者として扱われることも少なくはない、老いた女性。それでも彼女は決して無力な存在ではない。
これは誰でもない自分として世界を踏みしめるひとりと、そこに寄り添う何者かの物語。
夢見る人にも目覚める人にも、どうかその先の道が開かれんことを。
ひとりの教え子の出奔を機に、学園の存続のためという動機で始まった旅は、思わぬ理由で手段が変わり目的が変わり、壮大な冒険へと繋がっていく――という、子供の頃に読んだファンタジー小説のようなシナリオなのだけれど、主人公の属性の決定的な違いにより大人が読んで楽しめる内容になっている。
異なる世界のお話なのにこういうところは自分たちの生きる社会と変わらないんだなあ……とか、考えながら読んでしまう。もしこのお話を子供の頃に読んでいたら、全く異なる感想を抱いたのだろうな。
クトゥルフ神話、特にドリームランドや神話生物の知識があるとより理解が深まるお話のようだけど、そのあたりの知識がほぼなくても問題なく楽しめた。 -
Posted by ブクログ
帯に惹かれて購入。この頃はネビュラ・ヒューゴダブル受賞って結構珍しくなくなったのかなぁ。
とりあえず色々取り揃えてますよ、という短編集。面白かったです。
「26モンキーズ、そして時の裂け目」
なんかやられた、って感じの最後。うん、いいねぇ。最後のお客さんが良い。カラッポになった後のバスタブが揺れる場面とか視覚的に訴えてくる感じがやけにリアル。それにしても猿が26匹。確かに獣臭そう。
「スパー」
エロくないエロ(笑)でも極限状態で人間何もする事が無いと何をしてるんだろう?とかちょっと考えてしまう。思考の海に潜るってのも生理的欲求なんだろうか、とか考えてしまった。
「水の名前」
ふんわり不思議。誰とでもどこでもつながれる携帯機器の発達のおかげで生まれたちょっとしたおとぎ話、みたいな。なんか都市伝説みたいな不思議なお話。
「噛みつき猫」
ウチの姉もものすごい噛みつき猫飼ってるけどそうか、アレは怪獣だったのか。この子のネコと違って姉の猫は腕に穴があくレベル。猫の牙の毒(というか口内雑菌)は侮れないらしい。
「シュレディンガーの娼館(キャットハウス)」
ハイセンスなギャグ、という感じ。色々なハザマで居るんだか居ないんだかという空間で出会う。きっと物凄い魅力的なモノが存在してるのかな。
「陳亭、死者の国」
中国昔話とか訓話にありそう。それにしても金もない死にかけの老人に何で若い女性が連れ添っていたんだろうか、という素朴な疑問が残る。
「蜜蜂の川の流れる先で」
死にかけの相棒と共にミツバチの川をたどる。ファンタジー色の強い作品。痛みや病気の無い国に老いた動物は連れて行ってあげたいな、と切実に思う。
「ストーリー・キット」
作家さんって作品をこういう風に作るのかなぁ。
「ポニー」
少女は可愛くて綺麗で甘ったるい感じがするけれども結構エグイ(笑)本当にきれいでカワイイものを可愛いまま愛しているのは実は男性の方かもしれないなんて思わせる作品。
「霧に橋を架ける」
表題作。いいなぁ、これ。
職人が自分の仕事に誇りを持って打ち込めるって素晴らしい。その為に事故があり、環境が変わり、人は変わる。良いことばかりではないけれども(勿論)でも作ることに誇りを持てる何かを創造するって素敵だなぁ。橋がかかりあれほど強大だと思った恐れる何かが小さく見える所に悲しみを覚えるところが特に好き。イメージ的に何故か黄昏色のお話。
「《変化》後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」
う~ん。動物の安易な擬人化には私もソレは違うんじゃない、と思う方だけどこんな感じになるかなぁ?と首を傾げてしまう。人間は人間の子どもが自分よりも賢くなったからといって家から追い出したりはしないじゃない?(煙たがるかもしれないけど)後、猫ってもう少しズボラでいい加減だから多分もう少し民家の周囲をグルグルしてエサとかもらってるような気がする。
言語を操れる知性と今現状でのサバイバルは違うと思うので今現在でも大分頭の良いペット達がさらに賢く立ち回る事になる気がするんだけどどうかなぁ。
少し前に野生動物が人間の居住区域で繁栄しているという番組を見たばかりなので環境に適応できる種はもう少したくましく、したたかに生き延びていくような気がするし、そうあってほしい。
というわけで全短編物凄い良いなぁって感じでは無いけど面白かったです。他の作品も読んでみたい。後書きにもあったけれども喪失とかなんとなく物がなしいイメージがある作品が多い気がしました。斜陽、というか。 -
Posted by ブクログ
原題は"Dream-Quest of Vellitt Boe"。夢の国から覚醒する世界に行ってしまった女学生を追って旅をする元冒険者が主人公。出発した街は猫が多いと書いてあるが、作中で猫の街とは呼ばれていない。そして、猫の街という抒情的な言葉にまんまと引っかかったのが私。読んでいる途中で、いくつか気になる言葉があって、まさかと思っていたらやっぱり、私が可能な限り避けている物語世界の話だった。ホラーでないのは良いのだけれど、女性の扱いがあんまりなので、これからも、この世界と関わらないようにしようと思ったのだった。(この点については、作者自身の謝辞の中でも触れられている。)冒険譚として悪いわけじゃないのだけど、猫の街に引っかかったのが悔しいので、星を減らした。
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Posted by ブクログ
ラヴクラフトの描いたドリームランドのダークファンタジーな世界観が好きだ。本作はそれと同一舞台ということで手に取った。
「未知なるカダスを夢に求めて」を先に読んでいるとあの場所だ! と思うシーンが多く出てくるため、それらの情景を老齢の女性主人公の視点で共に冒険してより一層楽しめる。
ただこの作品は、作者が謝辞で指摘する通りラヴクラフトが描かなかった女性の物語である。そのためにウルタールに科学系の学問を教える女子カレッジが存在していたり、電池式の懐中電灯が存在していたりと、時代を考えればラヴクラフトのそれよりはるかに先進的な印象だ。ラヴクラフトの描いた古風で不便だが科学や法則に囚われない夢の国を期待して読むと肩透かしかもしれない。幻想の世界での厳しい現実を突きつけられる。
個人的な解釈としては夢の中にリアリティを求めた結果生まれたのが「夢の国」というわけではないため、ここまで克明に描くとラヴクラフトの描いた世界と視点が違うというレベルではなく、別物だと感じてしまった。アウトラインが都合よく暈けているほうが夢らしいのではないだろうか。これが全く違う世界として描かれていたのであれば素直に飲み込めたのだろうと思う。
このように書きはしたが、作品から一貫して訴えたいテーマを感じられるので、そこは一読と考察の余地があると思う。
神々の存在による抑圧、女性を自身の物語の添え物とする男性、女性の社会的立場・展望。
良くも悪くも現代的な作品であり、ラヴクラフトの時代に生まれることはなかった作品だと思う。彼の作品へのアンチテーゼとして創作された部分には強いメッセージ性とそれを補足するストーリーが丁寧に盛り込まれている。