キジ・ジョンスンのレビュー一覧

  • 霧に橋を架ける

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    本屋でカバー買い.ヒューゴー賞,ネビュラ賞,世界幻想文学大賞受賞,というカバーの文句は伊達ではなく,とても良い本に巡り会えたと思う.
    SFと思って読むと間違いで,むしろ,南米の作家の書く小説の,奇妙な風合いに似たところがあって,変な設定を舞台にしているところは確かにSFといえるのかもしれないのだが,その設定を「そういうものである」という前提で物語が紡がれており,何か解決や注釈が与えられることはない.
    その舞台に登場する人物達が,その設定に巻き込まれる(決して右往左往する訳ではないが.何しろ,元からそういう世界で,急にそこに放り込まれた訳ではないのでなので)様が描かれている.

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    2017年04月29日
  • 霧に橋を架ける

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    ネタバレ

    霧に橋を架ける

    「スパー」
    「水の名前」
    「シュレディンガーの娼館」
    「変化後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」
    「陳亭、死者の国」
    「ポニー」
    「26モンキーズ、そして時の裂け目」
    「蜜蜂の川の流れる先で」
    「噛みつき猫」
    「ストーリー・キット」
    「霧に橋を架ける」



    ショートショートから、表題作の中編まで、様々な長さ、味わいの短編集。
    いくつかの物語に共通しているキーワードは、犬や猫への愛とコミュニケーションの難しさ。
    表題作は危険な霧の川に橋をかける技術者の物語ですが、プロジェクトリーダーの孤独や工学を極めるものの迷いなどがうまく描かれていたと思います。

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    2025年09月03日
  • 猫の街から世界を夢見る

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    主人公の造形がとても良い。
    経験豊かで知恵があり意志の力を持っていて、けれども決して強くも万能でもない、ちっぽけな一人の人間。社会的には弱者として扱われることも少なくはない、老いた女性。それでも彼女は決して無力な存在ではない。
    これは誰でもない自分として世界を踏みしめるひとりと、そこに寄り添う何者かの物語。
    夢見る人にも目覚める人にも、どうかその先の道が開かれんことを。

    ひとりの教え子の出奔を機に、学園の存続のためという動機で始まった旅は、思わぬ理由で手段が変わり目的が変わり、壮大な冒険へと繋がっていく――という、子供の頃に読んだファンタジー小説のようなシナリオなのだけれど、主人公の属性の決

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    2022年03月30日
  • 猫の街から世界を夢見る

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    舞台になった夢の国。クトゥルー神話絡みでとにかく設定が幻想的。覚醒する世界に駆け落ちした女子学生を連れ戻すべく、旅に出たヴェリット・ボー老教授となぜか黒猫。この同行猫の存在感が猫好きにはたまらない。紀行文のように淡々とした描写で血生臭さは感じないが、場面を想像すると危険度高……。ボー教授(そして猫)の耐性力やら順応力やらに感服した。将来の可能性を仄めかせた終わり方で、その後の彼女らに期待が膨らむ。

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    2021年08月01日
  • 猫の街から世界を夢見る

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    クトゥルフ神話は読もうとして断念した記憶があるのですが、このお話は好きだなぁ。主人公のやるべきことがしっかりしていて、感情的にぶれない感じが好き。猫も可愛いし。大事にしてくれる場所で落ち着くかと思えば、状況が変わった途端姿を現す感じもらしくて良いなぁ。

    女性は夢を見ない世界ってのも面白いな。
    そして世界を渡った後には、男よりも世界を取る辺りが非常に現実的。そこも流石女性って感じで良かったです。

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    2021年07月28日
  • 霧に橋を架ける

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    帯に惹かれて購入。この頃はネビュラ・ヒューゴダブル受賞って結構珍しくなくなったのかなぁ。
    とりあえず色々取り揃えてますよ、という短編集。面白かったです。

    「26モンキーズ、そして時の裂け目」
    なんかやられた、って感じの最後。うん、いいねぇ。最後のお客さんが良い。カラッポになった後のバスタブが揺れる場面とか視覚的に訴えてくる感じがやけにリアル。それにしても猿が26匹。確かに獣臭そう。

    「スパー」
    エロくないエロ(笑)でも極限状態で人間何もする事が無いと何をしてるんだろう?とかちょっと考えてしまう。思考の海に潜るってのも生理的欲求なんだろうか、とか考えてしまった。

    「水の名前」
    ふんわり不思

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    2017年02月28日
  • 霧に橋を架ける

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    面白かったです。SFですが、ファンタジー感もある世界でした。「霧に橋を架ける」での、霧や「でかいの」の不穏さと、橋を架ける事業の…なんと表現したらいいのか、漂う無常感を感じました。橋が完成した後の世界がより良くなるとあまり思えなかったからかな。。でも1番好きなお話でした。「蜜蜂の川の流れる先で」「《変化》後のノースパークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」は犬好きにはちょっと辛いものがありました。でも不思議で良かったです。他の作品も読んでみたいです。

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    2017年02月19日
  • 霧に橋を架ける

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    「先駆者となるには、橋となれ」

    表題作「霧に橋を架ける」は、お仕事小説であるが、とても幻想的で暗示的であるにも関わらず、読後感は爽やか。

    その他に短編が10話。
    それぞれ個性的で好き嫌いがわかれるところだろう。

    お気に入りは、
    「水の名前」「噛みつき猫」「蜜蜂の川の流れる先で」……

    人はこの世界の何もかもを知っていると、自惚れている。
    そのくせ理解できないものは信じようとしない。
    でも、確かにそれはいる。ヒトの理解の外に……。

    読んでいて、ふと、感じることがある。

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    2023年12月02日
  • 猫の街から世界を夢見る

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    ラヴクラフトの描いたドリームランドのダークファンタジーな世界観が好きだ。本作はそれと同一舞台ということで手に取った。

    「未知なるカダスを夢に求めて」を先に読んでいるとあの場所だ! と思うシーンが多く出てくるため、それらの情景を老齢の女性主人公の視点で共に冒険してより一層楽しめる。
    ただこの作品は、作者が謝辞で指摘する通りラヴクラフトが描かなかった女性の物語である。そのためにウルタールに科学系の学問を教える女子カレッジが存在していたり、電池式の懐中電灯が存在していたりと、時代を考えればラヴクラフトのそれよりはるかに先進的な印象だ。ラヴクラフトの描いた古風で不便だが科学や法則に囚われない夢の国を

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    2022年06月27日
  • 猫の街から世界を夢見る

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    クトゥルフ神話テイストの異世界旅行記か?
    と思いきや……
    現代にトリップしたりして、
    タイトルの「猫の街から世界を夢見る」にぴったりな物語でした。

    ポツンと出てきたロビンソン・クルーソーが意味ありげで、個人的にはとても気になりました。
    ロビンソンは、最終的には元の世界に帰りました。

    では、主人公はどうなるのか?
    と勝手に想像しながら読んでました。

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    2022年05月07日