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草野真一
早稲田大学卒。受験塾理科講師を経て一年間のアジア大陸放浪後、書籍編集者となり一〇〇冊以上の本を企画・編集(うち半分を執筆)。日本に「本格的なIT教育」を普及させるため、国内ではじめての小中学生向けプログラミング学習機関「TENTO」を設立
デジタルはアナログにあらゆる点で勝っている。 そんなふうに早合点したくもなりますが、もちろんそんなことはありません。いい点があれば、悪い点だってあるのです。 たとえば、画像のデジタルデータは、写真や絵を点(ドット)の集まりで表現することが多くなっています。色が数値(1と0の列)で指定され、そうした点が集まって一つの「写真」や「絵」を表現するのですから当然のことでしょう。したがって、どんなに精緻に描かれた絵であっても、拡大に拡大を重ねていけば、絵そのものより点(ドット)のほうが目立ちはじめます(図6)。 紙に印刷された画像(アナログデータ)なら、こんなことはほとんどありません。拡大を重ねても、画像は画像であることをやめないのです。アナログデータの重要な特徴です。 なお、拡大すると点(ドット)が目立ちはじめるデジタル画像(ビットマップ画像)の弱点を補うベクタ画像も開発されています。
「画像を構成する点の数が多い」とは、それを構成する数値(1と0の列)が多いということを意味しています。 わたしたちが「データ量が大きい」という場合、それは「1と0の列が長い」ということを意味するのです。
本書では何度も述べていますが、メールもまたデジタルデータです。その正体は1と0がたくさん集まったものにすぎません。
メールはなぜ届くのか──。 このテーマは、ブルーバックス出版部から与えられた「お題」でした。「今どきメールかよ!」と思ったのを、正直に告白しておきます。 本書の5章にて簡単に述べましたが、電子メールはかつて、インターネットの応用技術の王様でした。メールがインターネットを浸透させ、現在に至る広がりを作った。そう言っても過言ではありません。 しかし、現在はメールとまったく同じ役割を果たす手軽なサービスがいくつもあります。ぼく自身、それらの「新しい方法」を利用することがとても多くなっているため、メールをテーマとして本を作ることには若干の抵抗を感じていました。すでに王座から降りたかつての王様について述べるより、これから王座につくであろうサービスに着目したほうが、多くの人にとって実りある説明ができるのではないか。そんな気がしてならなかったのです。テキスト主体の通信手段としての電子メールは、今後ますます数あるサービスのワン・オブ・ゼムになっていくでしょうし、ユーザも次第に減っていくでしょう。それが多くの識者の見解です。ぼく自身もそう思っています。
メール」という通信手段はそれだけ一般性を持っており、誰に対しても訴えられる強さを保持しているのです。少なくとも、「今どきメールかよ!」などと性格の悪いことを言う人は、ぼくのまわりには一人もいませんでした(単にいい人ばかりなのかもしれませんが!)。 もう一つ、重要な理由があります。 電子メールはいい意味で「枯れた」という表現を使ってもいい古い技術です。そんな技術について述べることは、いきおい「コンピュータそのもの」「インターネットそのもの」について語ることになります。それは、ぼく自身のテーマでもありました。
本書は「メール」というありふれたものを題材に、前述したIT機器のことが「怖い人・苦手な人」でも理解できるように構成しました。同時に、「得意な人」も、あえて勉強しなければ身に付かないような知識を網羅しています。もし、この本を読んでこのジャンルに興味を持ったなら、巻末の参考文献のリストなどを参考に勉強するとよいでしょう。