田中宏巳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
戦後の混乱の中、戦地で終戦を迎えた将兵がどのようにして日本へ帰ってきたのかを解説した本です。
内容は、なぜ将兵が南方を始めとする島嶼に分散し、取り残されたることになったのか。終戦直後から始まった生存のための自活と連合軍との戦犯裁判を含めた捕虜生活の苦悩。いかにして復員が行われ、その後の人生を生きていくことにしたか。の3つの内容で構成されています。
ガダルカナルやペリリュー島での激戦、無差別爆撃である本土空襲の裏で、敵と一度も交戦することなく耕作をしていた部隊や、中国戦線で中国軍と互角に渡り合っていた部隊の話から、将兵による終戦の捉え方が異なっていること。捕虜収容所や戦犯裁判での各国連合軍の態度で、その国の人間の本性や、そのような本性を持つに至る経緯など、戦争のミクロの部分から日本軍と連合軍それぞれの将兵が持った戦争観を知ることができます。
また、全体を通して戦争の要である補給の軽視や、そもそもの日本における教育や制度、理想の置き方を解説し、連合軍の中心であったアメリカとの違いを明確にすることで、復員の苦労の根本を探ろうとしています。
特に自活しながらラバウルで終戦を迎えた陸軍第8方面軍司令官今村均大将に対する記述については感心するものばかりで、評価の高い将軍であった所以を知ることができます。 -
Posted by ブクログ
東郷平八郎の人物像と彼がたどった生涯を解説している評伝です。
東郷といえば、いうまでもなく日本海海戦で劇的な勝利を収め、日露戦争を勝利にみちびいた英雄として知られています。本書は、その東郷の実像にせまるとともに、日露戦争後の東郷と彼をとりまく日本軍の人脈が、その後の歴史の推移にどのような影響をもたらしたのかということについてもくわしく説明がなされています。
昭和天皇の東宮御学問所が開設され、東郷がその総裁となった経緯や、御学問所をめぐるさまざまな意見の対立などが紹介されています。さらに日本・アメリカ・イギリスの軍縮会議をめぐって「条約派」と「艦隊派」の対立が生じ、そのなかで日露戦争の英雄にかつぎあげられた東郷がどのように振る舞ったのかということについても、客観的に歴史的事実を見極めようとする立場にもとづいて検討なされています。
著者は、日露戦争後の東郷が「元老」的存在となっていったと述べています。そして、統帥権干犯問題が起こると、西園寺公望と東郷が協調することで辛うじて国家の舵取りが可能となったものの、その後は明治憲法体制がコントロールをうしなって悲劇に向かっていくことになったという歴史の見かたを提示しています。