トマス・モアのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
理想郷の代名詞のように言われるユートピアだが、実際に読んでみると、何だか無味乾燥というか、禁欲的な堅苦しい世界のようだ。おそらく、モアの生きた時代のイギリスにおける多くの人、特に、本書の最初の方に出てくるが、エンクロージャーによって生計の途を失った農民などの悲惨な境遇という現実の前では、ユートピアは理想郷であるのだろうし、現代の日本人が心から共感することは難しいのかもしれない。それでも、あの時代にあって、キリスト教を相対化して、その布教上の問題をやんわりと批判していたりして、時代に先駆けた思想の持ち主の著作として、現代でもなお読みつがれる意義も感じられた。
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Posted by ブクログ
ユートピア トマスモア 岩波新書
トマスモアの矛盾は神を一人として信じていながらも
自然と言う多様性にも心をゆだねている事に気付いていない所にあるようだ
このユートピアに書き込まれている彼の理想的なこの世の天国の秩序が
法と言う外力による規制と自律による自己管理による調和の
どちらにも徹底しきれずに淀んでしまっているのも
この自己矛盾によって起こっているのだと思う
彼は道徳をもって活きることに活路をみいだしながらも
だからこそあらゆる場における法に従えと説く
富や希少価値に依存することを徹底的に嫌いながら
納得を度外視して神とその法律に従おうとする
この二面性に対 -
Posted by ブクログ
今更説明の必要もいらないと思いますが、トマス・モアさんの「僕の考えたいい国」ってな内容です。
実際にユートピア国に行ってきたラファエルさんが、モアさんに語るという体で書かれています。
今のイメージで「ユートピア」というと、エデンの園か桃源郷かといった、餓えも苦しみもパンツもないような場所ってイメージですが、実際、本書を読んでみると、そんなこともないんですな。
奴隷もいれば、死刑制度もある社会。
ただ、(モアが考える)理想的に社会設計・運営がされているために、諍いや貪欲とは無縁な国なわけです。
時代背景や歴史的な文脈の中での位置づけなど、全然わかってないので、例によって「ふ~ん」と表層をなめただ -
Posted by ブクログ
ぜんぜんユートピアに思えない。確かに安定していて豊かな社会ではあるけれど、その安定や豊かさのためにいろんなものが犠牲にされている。私有財産が否定され、人の行動もかなりの面で統制されている。今の感覚からしたら、前時代的で不自由な管理社会でしかない。社会主義国家とか共産主義国家とかのイメージと重ね合わせたくなる。
ユートピアと言ったら、実現不可能だけど天国のような幸せな世界、というようなものかと想像していた。あるいは、いまはまだ実現は無理だけど、少なくとも人間や社会が最終的な目標にするような理想社会とか。
そんなものを予想していたのに、予想外というか意外というか。
ただ、500年前のヨーロッ -
Posted by ブクログ
ちょっと難しくなったガリバー旅行記という感じだろうか。どこにも無い架空の「ユートピア」国の風土を通して、理想の国家のあり方と現実への風刺を表現している。そこでは合理的な考え方とキリスト教的敬虔さを持った国民による、共産制国家の営みが描かれる。「ユートピア」が共産主義国家を表す言葉として使われてきのは、この書が元であったということか。しかしこの国家にはどこか息苦しさを感じてしまう。国家の規定からはみ出してしまった人間は死刑か奴隷となってしまう。卑しい職務は全てこの奴隷が請け負うことによってこの国家は成立しているのだ。こうした裏の面も、現実の共産主義国家の運命をも見通したものだったのだろうか。トマ