石川達三のレビュー一覧
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江藤賢一郎の行動はエゴイズムそのものだが登美子の行動もまたエゴイズムであった。康子の行動も然り。エゴイズムが概念的思想から実存的暴力に変換されたとき、江藤の敗北は喫したのかもしれない。最後の数ページまでは江藤の身勝手さや自惚れ、過信に憤慨と好奇をしつつも、結末(特に最後の段落)は『羅生門』的な人間の闇と業を感じさせる。
江藤をひとりの青年として捉えた場合、若気の立身出世を夢みる気持ちや優位的な逢瀬、知略の綻びに対する焦りは男性諸君には多少通ずるものがあるかもしれない。(女性には失礼を承知ながら)それを題材に行動と事件に変え、結局は男性の稚拙さや浅はかさを描いているのが何とも面白い。『青春の蹉 -
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【本の内容】
生きることは闘いだ、他人はみな敵だ――貧しさゆえに充たされぬ野望をもって社会に挑戦し、挫折していく青年の悲劇を描く長編。
[ 目次 ]
[ POP ]
生きることは闘争だ。
平和を叫ぶやつの大部分は敗北者だ。
頭脳明晰で野心家の法学生江藤は、司法試験に合格し、資産家の娘との結婚話を進める。
だが、愛人の登美子との関係をやめられず、ある悲劇を招いた。
大学紛争の激しかった1968年に出版された一冊は、萩原健一主演で映画化され、文庫は累計208万部を数える。
テレビ朝日系の「スーパーモーニング」で先月紹介され、増刷された。
番組の中で作家の吉永みち子さんは「登場人物