津田敏秀のレビュー一覧
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めちゃめちゃ。とんがった医師がいた。津田敏秀は、岡山大学大学院環境生命科学研究科教授。専攻は疫学、環境医学、因果推論、臨床疫学である。著者が言っている断定的表現は嫌われるだろうなと思う。だけど、好きだなぁ。容赦しない姿勢が、だから平気で国を訴訟できる学者なのだ。
本書から、水俣病のところだけを拾って、私の理解を含めて説明すると以下のようになる。
水俣病は、有機水銀による食中毒事件である。それは、熊本県も国(厚生省)も認識していた。
1956年5月に最初の患者の届け出。これが公式の水俣病患者の届け出となる。1956年11月に奇病や伝染病でなく、熊本大学医学部は食中毒であるとした。
にもかかわらず -
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ネタバレ因果関係について、疫学が専門の著者が「以前から気がついていたが、日本では科学的な政策判断を行う中央の官僚だけでなく、医学研究者が科学の基本的概念について考えたこともなさそうなのである。」と強烈に皮肉る本です。
個人的には名著だと思います。
相関関係と因果関係の違いを勘違いしている人は多いですが、因果関係についてもヒュームの問題を、医学研究者をはじめ、科学に係わる人は教養として置くべきであり、高等教育における方法を見直すべき、との主張はその通りと思いました。
要素還元主義にとらわれ、日本で行った実際の失敗例として、森永ヒ素ミルク事件、水俣病事件、和歌山ヒ素カレー事件、タミフルの問題を挙げられてい -
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"医学と仮説"とセットの本とのこと。
まだ飲み込み切れてないし、疫学以外の医学の価値をあまりに低く見てる気もするけど、そこを割り引いてもとても大事なことを言ってるっぽい。自分がまさにメカニズム派あるいは病態生理派であるだけに、なおのこと響く。
例えば、
メカニズムがわからないと環境因子の効果自体を認めないってのは全くおかしい。
日本の医学部がラボ的な実験医学にあまりに傾倒しており、本来なら医学部で多数行われてよい臨床研究ができていない。臨床研究あるいは医療統計の教育環境が貧しい。
食中毒の原因が細菌でもウィルスでもなく、先行する知見のない毒物だった場合、病原体探 -
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「医学的根拠とは何か」
この本の題名であるが、何か起こるたびに、さまざまな“専門家”という何がどう専門なのかわからないような人が「医学的根拠」という言葉を用い、その度に考えることでもある。
そして私は身をもって知っている。日本は医療技術は高くても、医学教育水準は前近代的なうえに貧相極まるものであることを。今の医療レベルの高さは経済発展と国民教育水準の高さに伴ったものであり、医学教育水準が発達してない以上、これから数十年後に日本の医療は金に依ってガラパゴス化した身動きの取れない豚のようになるのではないかと危惧している。
筆者は今まで日本の医学における問題を一般の書籍において啓蒙してきた方であ -
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びっくりしました! 因果関係について知りたいとおもっただけなのに・・・
「科学ってなに?」と問われて、答えられないならこの本読めといわれます。原理主義者なの?
どうやら著者の津田敏秀先生は、日本の自然科学を学ぶひとたちは「科学哲学」が必須科目ではないために、「科学について誤った概念を持っている!」とお考えのようです。
例えば医学部にある誤解としては、「疫学」が直接的証拠とわからなかったり、医学研究に「実験」が必要と思い込んだり。「細胞や遺伝子をすぐに扱いたがるけど仮説のレベル合ってるの?間接的証拠なんだけど?」「せっかく医学部にいるんだから人を対象にしようよ。」とおっしゃるわけです。 -
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「医学的根拠とは何か」というタイトルに惹かれて読んだ。
内容は少し難しいかもしれないけれど、筆者の主張は一貫しているので、わかりやすいと思う。
根拠に基づいた医療、EBM(evidence-based medicine)とは何かを
わかりやすく解いていて読みやすい。
医療が科学的であることについて著者はつぎの3つを認めている。1医師の直感 2分子レベルのメカニズム研究の成果
3統計的な疫学調査。
その中で、最も重視するのは「統計的な疫学調査」。
この筆者の主張には一理あるものの、他の視点(立場)を重視する人がこの本を読むと、反論があるだろう。 -
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「科学」とは何か。「因果関係」とは何か。
驚くことにこの質問に明確に答えられる日本の医学者は少ない。
医学教育の問題はまさにそこにあり、因果関係について論じられる医学者がいないことはたびたび日本社会の弊害になってきた。世界から取り残された疫学後進国である日本は、今はまだGDPに支えられた科学医学技術で先行リードしているものの、これからさらに医学的問題が明らかになり、後進していくだろう。
自戒をこめて言おう、医者はバカばっかりである。そして無知の知すら認識できない日本の医者は弊害を垂れ流していくだろう。
本書は何が日本の医学において問題なのかを丁寧に指南してくれる。
「はじめに」と「おわり -
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実験的にメカニズムを明らかにして内部妥当性を高めることは、現象を結論づけること自体には必要ない。
現象は現象のみで十分結論できる。
それにハクをつけているのがメカニズムの理解。もちろん、新たな現象を見つけるステップとして使えるときはあるにせよ。
ヒュームの問題
1.aに曝露してbが起きた
2.aに曝露してbが起きなかった
3.aに曝露せずbが起きた
4.aに曝露せずbが起きなかった
日常、ボタンを押して電気がつけば因果を推定する我々が、1を見て、関係があるとも言えないけど、ないと考えるのはおかしい。
とかなんとかだったけど、流し読みなので理解しきれてない。読みなおす。