左方郁子のレビュー一覧
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[新訳]方丈記
乱世を生き抜くための「無常観」を知る
著:鴨 長明
編訳:左方 郁子
PHP新訳新書
紙版
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。……」
無常・無常観の文学「方丈記」
平安末期から鎌倉前期に生きた、風流人、鴨長明の作品である
リアリストである、鴨長明が描き出す、災害や災厄の数々
単なる歴史書が描く世界に比べて、臨場感あふれる世界は、死が常に人々の隣にあったことを示すようで切ない
母の命が尽きたのを知らずに、なお、乳を吸いながら眠っている幼い赤子のくだりは、無常ではなく、無情である
下鴨神社の後継者争いに敗れ、妻子を失ったと思われる鴨長明は、和歌と管絃に生 -
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ゆく川の流れは絶えずして、しかしもとの水にあらず・・・の名文で始まる方丈記は無常観がテーマの古典として有名だが、しかし同時に災害文学の側面ももっている。
昨年の東日本大震災も記憶に新しいが、過去の歴史をひも解いてみれば日本は災害の連続であったことが分かる。
方丈記にも大火や竜巻、飢饉に疫病、そして大地震と平安末期に起きたこれらの災害が記されている。
仏教に大きく影響を受けた鴨長明は、地位や名誉、金品や家などに執着する空しさを語るが、末法の世といわれた時代背景も影響を受けているのかもしれない。
彼の生きた時代は平家が栄華を誇り、そして壇ノ浦で滅亡した。彼ならずともこの世の無常を感じただろう -
Posted by ブクログ
この本は、『方丈記』を解説した本です。
前半は『方丈記』の訳文・原文・解説の3点セット。後半は各論として、鴨長明の生涯と、災害を経て無常に至った長明の思想について解説されています。
参考文献が示されていたら、より興味を深掘りすることができてよかったのになぁと思いました。
さて、数々の災害を経て人と住まいの無常さを痛感した長明は、出家後に理想の住まいとして一丈四方の草庵をつくり、その魅力を『方丈記』で説きました。
『方丈記』においてわたしが最も興味深いと思うのは、世の無常の中で出家し脱執着を目指す長明自身がむしろ住まいに対して強烈な執着心を抱いているという点です。
方丈の草庵がいかに理