森浩一のレビュー一覧
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森先生の邪馬台国論。
帯方郡が魏の出先機関であったことから説き起こし、倭と界を接した弁辰の国を巨済島、巨文島とし、そこから、対馬、壱岐(一支国)、松浦(末盧国)、糸島(伊都国、斯馬国)と順を追ってクニの規模や土地や風俗の倭人伝の記述を考古学からの裏づけがられる。これは臨場感があり、帯方郡からの道程が納得させられる。
伊都国が邪馬台国の都と想定しているが、奴国も大きなクニであった様子。不弥国(福岡平野の宇美川流域)までリレー式に臨場感を持っていた記述が、投馬国、邪馬台国で記述が変わる。台与の時代に晋への遣使の新しい情報(但し、不正確)が書き加えられた所為とする。この辺の説明も無理がないと思う。
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高名な日本史の著者が、一生の研究成果としてまとめあげた
倭人伝や邪馬台国に関する内容が
わかりやすく書かれていた。
ただ、直前にかなり強烈な三国志研究家からの指摘の本「魏志倭人伝の謎を解く」を読んでしまったので、
ミーハーな読み手としてはインパクトは薄かった。
とはいえ、邪馬台国東遷説には興味がひかれるところだ。
本筋とは関係ないが、
邪馬台国にとどまり政に関与した中国の武官が、
その後、韓や濊を鎮撫させられたのではないかという記述や、
弁辰の鉄の産地を韓・濊・倭とが協力していた維持していた節があるという記述が、
第二次世界大戦後のマッカーサーの動向や、
レアメタルをめぐる昨今の東アジア情 -
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ネタバレやはり碩学である。学会や専門家で一般に通じている倭人伝の解釈に疑問を呈して、なおかつ自分なりの意見を文献学的見地ではなく、考古学的見地から述べている。しかも古代音韻学・郷土史家・作家などの専門家でなくとも、直観力(「直感」に非ず)に優れた意見は予断なく受け入れて古代史の考察する角度を絶えず固定しない。この学問姿勢は古代史だけではなく、歴史全般を俯瞰するにあたってとても大切な態度だ。倭人伝に描かれている地理風俗を遺跡の科学的分析から読み直すことで、新たな解釈が産まれる。
魏志倭人伝はもう読みつくされて新たな解釈の余地のない古典ではない。常に考古学成果と合わせて読み直し続けていくことで、まだまだ古 -
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[ 内容 ]
古代史の一級資料「倭人伝」。
邪馬台国や卑弥呼への興味から言及されることの多い文章だが、それだけの関心で読むのは、あまりにもったいない。
正確な読みと想像力で見えてくるのは、対馬、奴国、狗奴国、投馬国…などの活気ある国々。
開けた都市、文字の使用、機敏な外交。
さらには、魏や帯方郡などの思惑と情勢。
在りし日の倭の姿を生き生きとよみがえらせて、読者を古代のロマンと学問の楽しみに誘う。
[ 目次 ]
第1章 倭人伝を読むにさいして
第2章 東アジアの中での倭人伝
第3章 対馬国と一支国
第4章 玄界灘に臨んだ国々
第5章 狗奴国・投馬国・邪馬台国
第6章 張政の役割と卑弥呼の死
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1. 神武東遷。饒速日命が先んじて九州から河内平野、北河内へ。ニギハヤヒを祀る古社が多い。石切劔箭神社など。矢作神社、弓削神社、跡部神社も。物部氏の根拠地。天の磐船、河内国河上イカルガミネ、大倭の鳥見白庭山に。先代旧事本紀の東遷の記述に具体性がある。鳥見山の近くに茶臼山古墳、宗像神社は筑前国の宗像大神と同じ。ニギハヤヒの東遷前の勢力圏は北部九州の東半分。東遷に従った32人。大集団の計画的移住。対馬や壱岐の豪族の名もある。
ニギハヤヒはナガスネ彦の入婿。
2. タケハニヤス王とミマキイリ彦の戦争。
南山背に拠点を持つタケハニヤス王(孝元天皇の子)。
吾田媛、南九州の隼人(薩摩隼人、阿多隼人)の移 -
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子供の頃から考古学が好きで、若い時分には森先生が編集された「日本の古代」シリーズを読み漁ったもの。
暦などの時間の記述や文字が日本に定着していった過程など一歩一歩進めていく記述。景初三年とあるだけで、卑弥呼の鏡などと騒ぐ輩と対局にある。
引用。
「倭人伝」に一度だけみえる「邪馬台国」は晋に遣使した女王台与(トヨ)の国であり、ヤマトでの大型前方古墳の出現からみても、その頃にはヤマトの国造りの基礎は終わっていたとみている。
近畿圏の国造りと邪馬台国は別の事象と考えれば良いだけなのである。倭国から魏や晋への航路を考えたら邪馬台国は九州であろうし、狗奴国と交戦状態にあったことを考えれば更に確かだ -
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倭人伝を読みなおす
森浩一 ちくま新書
何気なく手に取ったいわゆる邪馬台国ものである。
この邪馬台国ものは昔よく読んだ。邪馬台国ブームなんてのがあった、その頃である。
松本清張の「古代史疑」、古田武彦の「邪馬台国はなかった」邦光史郎の「邪馬台国を推理する」などが思い浮かぶな。変わった切り口だと思ったのがタイトルは忘れたが安本美典の古代史もの。推理小説を読む感覚で読んでいたが、その推理の展開については忘れてしまっている。邪馬台国ものの内容は、その国がどこにあったかが説かれ、大きくは九州説と畿内説に分かれているのである。
この本の著者、森浩一氏は考古学者である。1928年生まれというからもう82