村井則夫のレビュー一覧

  • 偶像の黄昏

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     ドイツに頽廃をもたらした様々なものを、"生"を否定するキリスト教的価値観をキリスト教を貧者の宗教であり頽廃をもたらすものであると看破しながら、疾走感と痛快さをもって手当たり次第に切り捨て、破壊していく。"生"の否定がどこからもたらされていたかと考えていたかがはっきりと示されたニーチェの思想の到達点である。
     中でも印象に残ったのが、『反時代的人間の渉猟』で指摘している無政府主義者の行動である。社会の底辺階層を代弁して「『正義』、『公平』『平等の権利』を要求」し、「私が下層民であるなら、お前もそうあるべきだ」という理論を掲げ、そして「自分の困窮ぶりを他人

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    2019年05月26日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    2部構成。第1部でニーチェの文体について論じ、第2部で『ツァラトゥストラ』を読解する。
    岩波文庫版の『ツァラトゥストラ』には訳注が無かったが、本書はその役割を十二分に果たしてくれた。
    以下は本書無しには読み取れなかった数々の「謎」の一部。

    ・古代ギリシアの風刺文学のスタイル「メニッペア」を模した表現技法
    ・綱渡り師と道化師のエピソードが暗示する意味
    ・ツァラトゥストラが説く駱駝⇒獅子⇒幼子の「三様の変化」と、ヘーゲルの弁証法との違い
    ・全篇をとおして現れる聖書のパロディ
    ・自分が見た悪夢にそれらしい解釈を与える弟子を、ツァラトゥストラが一度は歓迎しながら最後は首をふって否定した理由
    ・「重力

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    2014年05月05日
  • 喜ばしき知恵

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    注釈など、研究に使うにはちくま学術文庫の方が良いが、普通に読むのであれば、こちらが読みやすいのでオススメ

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    2013年10月21日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    数あるニーチェの本の中でも村井則夫氏(明星大学准教授)の本を手に取ったのは新書にしては深い洞察と新しい発見が多い中公新書から出版されていたことと、帯にかかれた「血をもって書かれたものだけを私は信じる」というニーチェ自身の言葉の強烈さに圧倒されたからという理由が大きいように感じられます。

    過去に自分がやったテレビゲームに、「ゼノギアス」や「ゼノサーガ」といったRPGがありました。制作者である高橋哲也氏が盛り込んでいたニーチェの思想が、テレビゲームという媒体を通じて断片的に知るだけでしたが、発狂する前にニーチェがたどり着いていた「永劫回帰」の発現のプロセスを追うことができたのもこの本から得るこ

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    2009年10月07日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    ニーチェは最も好きな哲学者だ。この解説書はいままでのどの解説書よりもなるほどと思わされた。ただ、それでも永劫回帰の説明はよくわからなかった。

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    2009年10月04日
  • 偶像の黄昏

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    ニーチェの思想の基礎が大まかにわかる書。

    キリスト教道徳は聖職者の聖なる妄想であり、人間の生の部分を貶めると考え、触れた人間たちの生命力を弱めている。

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    2023年05月01日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    ネタバレ

    高校の頃と大学の最初に、何の基本も知らずに読んでいたものをより深く理解するために。いくつもの全く思いもしなかったことと、あぁ自分の読み方は正しかったんだということがあり、悪くない読書だった。あの頃にどう読んでいたのか、つまびらかには思い出せないけれど、強烈に覚えていることもある。『超人思想』と「これって聖書のパロディなのかな?」ってことだ。あとは、読みながらほのかに覚えていたことをぽろぽろと思い出した。
    半端な読みにも関わらず、俺が最初に読んだ頃から超人思想やいくつもの言葉に引き摺られて生きてきたのは、俺の影響されやすさだけの問題ではない。今の俺の志、考え方、行動に明らかに直結しているのだか

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    2013年04月16日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    ある日「永劫回帰」の思想がニーチェを襲う。
    この着想をもとに一気呵成に書き上げられた『ツァラトゥストラはこう語った』は、二〇世紀の文学者・哲学者の多くを惹きつけ、現代思想に大きな影響を与えた。
    文学の伝統的手法を駆使しつつも、ときにそれを逆手にとり、文体の実験までも行うニーチェ。
    一見、用意周到な筋立てや人物造形とは無縁と思われるこの物語は何を目論んでいるのか。
    稀代の奇書に迫る。

    [ 目次 ]
    第1部 ニーチェのスタイル(世界を読み解く技法 舞踏する精神)
    第2部 『ツァラトゥストラはこう語った』を読む(思想とパロディ-序説 賢者からソフィストへ-第一部 分身たち-第二部 ツ

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    2011年03月30日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    ツァラトゥストラを自力で読んでも、何て偏屈な人なんだろう…自分には難しすぎる(涙)で終わってしまっていて
    今回村井氏の解説を読むと、ゾロアスター教のシンボルの事や、
    パロディの精神のことなどまるで知らず、
    ニーチェは実に真っ当な事を行っている様な気がした。
    むろん難解と言われるニーチェの考えを自分がしっかり理解出来ているとは思えないが、
    ざっくり感じたのは、自分の生を、自分の意志でちゃんと生きる、
    という当たり前のことだった。
    右へ倣え精神が染み渡っている日本人である私には中々出来そうも無いけれど、
    ただ闇雲に周りに合わせないこと、
    妄信的な集団が出来て来たらそれを解散させることなどは、
    もし

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    2010年05月11日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    非常に参考になる本だったが、著作の芸術的価値という面から見れば、永井均のニーチェ論の後塵を拝している。

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    2022年03月16日
  • ニーチェ―ツァラトゥストラの謎

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    本書では『ツァラトゥストラはこう語った』に焦点を絞って解説していることもあって非常に具体的にニーチェの著作を批評しているという点で素晴らしい。少なくとも一般の新書の哲学入門書の中では奥行きの深い書籍という風に言える。

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    2012年07月01日