あらすじ
ニーチェの最後の著作が流麗で明晰な新訳でよみがえる。近代の偶像を破壊しながら、その思考を決算したニーチェ哲学の究極的な到達であると同時に自身によるニーチェ入門でもある名著。
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Posted by ブクログ
ドイツに頽廃をもたらした様々なものを、"生"を否定するキリスト教的価値観をキリスト教を貧者の宗教であり頽廃をもたらすものであると看破しながら、疾走感と痛快さをもって手当たり次第に切り捨て、破壊していく。"生"の否定がどこからもたらされていたかと考えていたかがはっきりと示されたニーチェの思想の到達点である。
中でも印象に残ったのが、『反時代的人間の渉猟』で指摘している無政府主義者の行動である。社会の底辺階層を代弁して「『正義』、『公平』『平等の権利』を要求」し、「私が下層民であるなら、お前もそうあるべきだ」という理論を掲げ、そして「自分の困窮ぶりを他人のせい」にして復讐そして革命を煽る。これは今まさに世界で起きていることであり、これをすでに指摘していたニーチェの視点の鋭さに驚くばかりである。
ニーチェの当時のドイツに対する忠告であるが、それは現代に対しても有効であるように思う。"生"を否定する存在、すなわち、自らの意思で行動することを否定し、変わろうとする(=豊かになろうとする)意欲を奪っていく存在から、どのようにして身を守るべきかを改めて考えていかなければならないだろう。