若桑みどりのレビュー一覧
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〈まえがき〉において著者は、イメージによる世界の解釈、イメージによる世界の記録、イメージによってのみ表現することのできる思考や感情の表象である”絵画”、それを理解するためには絵画を読む作業が必要であり、その方法論の一つとして「イコノロジー(図像解釈学)」というものがあることを説明する。
そして具体的に、カラヴァジョ『果物籠』、ボッティチェリ『春』、フラ・アンジェリコ『受胎告知』、デューラー『メレンコリアI』など12作品を例に取り上げ、著者なりの読み取り方を説明してくれる。
ある程度解釈が確定している作品から、未だ共通の理解に達しておらず様々な解釈が出されているものまであるが、そうした -
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わざわざ美術館に行き、名画と呼ばれるものを見ても「とても上手だなぁ」という感想しか出ない自分の無教養ぶりに嫌気がさして手に取った。
題のとおり、絵画の「読み方」についての入門書である。時代の文化、宗教、政治経済的な背景等を鑑み、その絵が伝えんとすることは何だったのかを探る学問を「イコノロジー(図像解釈学)」という。
イコノロジーについての解説は「まえがき」で少し触れられる程度で、あとはボッティチェリ、ミケランジェロ、ティツィアーノなど絵を実際に「読む」ことでイコノロジーの手法を体験するような趣向である。入門者向けで読みやすいが、もう少し、イコノロジーとは何かという部分やイコノロジー自体の発展 -
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「シンデレラ」、「白雪姫」、「眠り姫」といった「プリンセス・ストーリー」を題材に、大衆文化に潜むジェンダーについて解説し、それらがいかに女性のみならず男性、そして社会全体に悪影響を与えているかを論じている。
「家父長制」文化によって根強く残る、「受動的」で「男性に従属する」ことが女性の美徳であるという価値観を払拭し、男女が同じ土俵で、それぞれが自立して互いに協力し合う社会を築いていかなければならない、という著者の意見。否定する理由はない。
しかし、それは裏を返せば、「受動的」で「男性に従属する」ことに価値を見出した女性の生き方を否定することにもなり、(極端な話ではあるが、)行き過ぎれば、こ -
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お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門 (ちくま新書)
白雪姫、シンデレラ、眠れる森の美女
を題材にジェンダーの講義を行った若桑みどり先生の授業アンケートをベースに書かれている。
学生による授業アンケートが原文ママ載っているのだが、ジェンダー的視点が鋭い…!!!!
古く慣れ親しんだ物語だが
ジェンダー的視点で斬られると
そんな考えがあったのか、と思い知らされた
(例えばガラスの靴は女性器の象徴である、とか)
ただこれ2002年に書かれたもの。
およそ20年前なので、
今の感覚で読むと若干古いかなと思ったりした。
それだけ今はジェンダーに対するアンテナが張られている -
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ある時代以前(18世紀以前)の絵画はその時代の重要なメディアであり、ある思想や意味を含んで書いていることが多いそうです。その込められた意味を理解することの面白さを説いていました。
レオナルド.ダ.ヴィンチの章が印象的でした。「岩窟の聖母」に書かれたスミレは謙遜の花、イエスの最大の美徳は謙遜であった、それを表現している、いうのは知りませんでした。イエスは神の子でありながら、誰よりも低く地面に座っている、これこそ究極の謙遜を表現しているそうです。ちなみに最大の悪徳は傲慢だそうです。
どんな局面でも傲慢にならず謙虚でいよう、これは太古から変わらぬ教えなのだ、と感じることができました。
作者は、「 -
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著者が女子大の講義のなかでディズニーのお姫さまアニメを学生たちに見せ、その感想を書いてもらったものを紹介している。決してジェンダー差別意識が投影されているわけでなく、各時代の普通のスタンスがディズニーアニメであったり、ペローやグリムの作話に反映されているんだけど、それを今の時代のジェンダー論の講義の一環で見ると……という試み。彼と見れば「うふっ」って感じだろうけど、ジェンダー論の講義で見れば印象も変わってくるだろう。
これ、女子大だからそれとなくまとまったけど、男子学生も混ぜて同じことやったら面白いだろうな。そういうことを男子学生相手にやったりするんだろうか。あまり見聞きしない感じがするんだよ -
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ディズニーのアニメを題材に、シンデレラ・ストーリーの中に込められた、「女性らしさ」「男性らしさ」の通念を批判する本です。取り上げられているのは『白雪姫』『シンデレラ』『眠り姫』の3つの作品で、この作品を鑑賞した学生たちのじっさいの感想が多く引用されています。ただ、いずれもよく似たシンデレラ・ストーリーなので、少し退屈に感じてしまいました。
最終章は、従来のシンデレラ・ストーリーにとって代わる、オルタナティヴな人間関係を描いた映画として、『エバー・アフター』のストーリーが紹介されていますが、ややとってつけたような印象を受けました。あるいは著者自身、そうした意図に適った映画を探し出すのに苦労した