若桑みどりのレビュー一覧
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絵画・彫刻をはじめとするあらゆるイメージの、とりわけ「女性」というモチーフに何が求められてきたのかが古代ギリシャから現代に至るまで丁寧に分析されており、なるほどと(なんとなくわかってはいたことが明快に言語化されているが故に、結構ショックも受けた……)。特に、イギリス・アメリカ・フランスに於ける「自由」の捉えられ方、彼らの国家としてのアイデンティティの形成のされ方の違いを辿った上で、日本の公共彫刻に見られる謎の女性裸婦像を論じているのが面白かった。
あらゆる歴史上の国家・権力者の打ち出すイメージには当然のことながら(毒々しい・自分勝手な)メッセージが包まれていることを忘れずに、与えられたイメージ -
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P63多くの女性は私的言語では雄弁だが、公的言語ではちんもくする
P130サービスが女性の天職だと多くの女性は洗脳されている〜多くの女性がリスクを負うことを嫌い、選ばれるのを待ち、未知に向かって行くことを恐れ、成功することを恐怖しているのと同じだとマドンナは分析する
P155責任のある教育者が化学的な性を教えることをやめているいっぽうで、暴力的な性文化が巷にあふれ、テレビやテレビゲームにあふれている。女性の人格を無視して、それをただの姓の対象としてみるような文化があふれていては、男子が成人に達したときには、すでに古いタイプの女性観が刷り込ませていることになってしまうのだ。
P199十八年または -
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ネタバレ
Frozen 2やSixにはまり始めてから、プリンセスの表象についてもっと知りたいなと思っていたので。この本は少し古いんだけど、逆に白雪姫とかシンデレラとかディズニー初期作品の批評って今時なかなか聞かない気がして。
私が生まれたくらいの時の女子大の授業で扱われていた内容で、白雪姫やシンデレラを授業で見せた時の学生の反応がそのまま載せてあるのがかなり面白かった。
よく考えたら私白雪姫もシンデレラも眠れる森の美女も映画をちゃんと見たことない。もちろん大体の話は知ってるし曲も知ってる。でも何度か見ようとしたものの、のんびりゆったり平和な雰囲気が退屈で全然見られなかったんだよね…。ストーリーだけ -
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初っ端のシスティーナ礼拝堂天井画から本当に暗号解読みたいだなー!と思って感動しました
というのも美術館で天井画含めてルネサンス時代の絵画はそのまま聖書のワンシーンとしてのみ認識していたからです(そういう意味ではちゃんと真の目的は果たせている訳ですが)
言葉じゃ表せないことを美しい創作物として昇華して伝えるなんてロマンチックじゃないですか?色々と数学に通ずる部分ありますよね
その愛と情熱をもって提示されたイメージは、やはりそういう態度で誠意をもって理解しようとするのが受け取り手の義務だなと思いました
ってこれ人とのコミュニケーション上の礼節と本質は変わらんやないかーい
この本の主題からはズレ -
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本書では、西欧を代表する芸術家たち(ミケランジェロ、ダヴィンチ、ボッティチェリやデューラーなど)の傑作について、描かれた時代の歴史や思想的背景、そして画家の人間に対する思いが綴られています。著者は既に鬼籍に入っていますが、美術史家としての博識はもちろんのこと、芸術家がどういう思いで作品を描いたか、についての洞察に引き付けられました。
ダヴィンチの「岩窟の聖母」と「聖アンナと聖母子」について、前者の画中でキリストのそばに描かれたスミレの表すもの、そして後者で子羊と戯れるキリストを引き寄せようとする聖母の思いについての著者の解釈には心が震える思いがしました。
絵画に対峙するときに、その世界観を -
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クアトロ・ラガッツイの若桑さんの著書。絵画の鑑賞術を美術史の観点から解説するもの。誰もが知っている名画を題材に、歴史、宗教、文化、当時の世相や常識などから、画家のメッセージを解釈する楽しさを教えてくれる。(ここからネタバレ注意)例えばモナ・リザの背景には上部から緑豊かな自然、橋のかかった枯れそうな川、荒野が描かれているが、これは文明が興る以前、文明(建設)、そして滅亡を示唆しているという。そしてモナリザの微笑みは「私だけがそれを知っている」と言うものであり、故に人は惹きつけられるのだと(諸説あり)。こういう見方ができるようになると美術鑑賞が楽しくなるだろう。もっと早く知ってたらと思う。
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ここしばらく「男性性と女性性の結合」、「対立物の結合による全体性の回復」とか、ユング系のトピックを探究していたのだが、ちょっと気晴らしに若桑みどりさんの美術史の本を読んでみる。
という、つもりだったんだけど、読んでみれば、「美術史」というよりも、「社会におけるイメージの活用史」とでもいう内容で、その視点には、「フェミニズム」とか、「ポストコロニアル」みたいなのが入っていて、どっぷり「男性性/女性性」のテーマのなかにありました。(まあ、なにを読んでも、最近はそういう頭で読んでしまうわけだが)
この本で、対象とされるのはいわゆる美術だけでなく、より民衆レベルの戯画とかも対象だけど、著者の専門と -
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美術作品を見るのは好きだけれど、どこをどう見ていいのかには、実際自信がない。
自立した読者ならぬ、自立した鑑賞者になりたくて手にした本。
でも、若桑さんの本は、多分これで三冊目。
で、読み終わった結論としては・・・
「自分でイメージを読み解くのなんて、無理」。
イメージの意味を読み解くには、その画家についてや、その時期の文化や思想にまで通じていないといけなさそうだ。
特に、この本は私にとってあまり馴染みのないルネサンス美術を対称にしているから、余計そう思ってしまうのかもしれない。
まあ、でも、最初のイメージを扱う三つの方法論(様式論、図像学=イコノグラフィー、図像解釈学=イコノロジー)につ -
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中世から続く家父長制による女性蔑視から脱却するためのジェンダー、という主張はまあいいとして、ノルウェイの例を引き合いに出して(しばしば見られる論ではあるが)、男女共同参画が進んでいる国は出生率が高いと論じてしまっているのはいただけない。
本当に男女共同参画が必要であるならば(私もそう思うが)、出生率回復と分けて主張すべきだ。出生率回復効果がでなければ、著者がフランス革命以上の革命だと息巻いている男女共同参画が不必要であるという論調が主になりかねない。
話を主題に戻して、シンデレラに見られるような、見た目が良くて自己主張をせず、王子様を待っていれば結婚という幸せが訪れるのよ、なんていうストーリ