郭洋春のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「グローバリゼーションの本質は、市場が世界規模に広がってボーダレス化するといった表面的な現象問題にあるのではない。冷戦終了後も冷戦型イデオロギーの残影に寄り掛かりながら、なおアメリカが強引に覇権国であり続けようとする「無理」が、今日のグローバリゼーションをもたらしているのである。すでに過ぎ去った時代軸であるにもかかわらず、新しい近未来社会の構想力が現れてこないために、古い座標軸の呪縛から逃れられず、しだいに矛盾が拡大して出口の見えない袋小路の中で、将来社会への里程標のごとき喧伝・誇張されているのが、グローバリゼーションなのである。」
どの章も面白い。結局政治の問題だからうまくいかない部分があるにせよ、そんな中で何をしなければならないのかを考え始めるにはいい本だった。
この次に『失敗の本質』を読み始めたが、そこから何か興味深い繋がりが見えてくるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
失われた30年と呼ばれる期間に成長した100均ショップなど、対デフレ業種の発展の背景にある日本の市場の特殊性を「新しい資本主義」と位置付け、それを「100均資本主義」と呼んで分析している。
タイトルと共に良く登場するのが「3つのD(dream、desire、demand)がない」という言葉だ。賃金が上がらない中で諦めにも似た心境の日本人が増え「高望みせず、ほどほど」を志向した結果、100円ショップなどが支持され、またそうした業種が発展していく関係ができあがった。
人類史上初、でもないのかも知れないが、発展がバブルで頂点を極め、「欲しいものはもう満ち足りた」のを初めて経験した人類が欲望の到達点に来てしまったのではないかと思える。
国内市場相手の仕事をしている以上、こうした状況は常に頭に入れて行動しないといけない。 -
Posted by ブクログ
堤未果「政府はもう嘘をつけない」の中で紹介され、その存在を知った本。〈安倍政権が成長戦略の一つとして進める「国家戦略特区」、日本のGDPの半分以上を外資に売り渡さんとする亡国の経済政策の危険性を暴く〉ために書かれた本です。
規制があるのをさも悪いかのように描く「岩盤規制」という言葉を使い、国民生活に必要な分野(医療・農業・教育・雇用等)を解体させていく政策は、貧困と格差を生み出すという結果しか生みません。
憲法95条には、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」と規定されていることを知りました。そうすると、「国家戦略特区」を地方自治体で進める際には住民投票が必要ですが、そのようなことは一度もないとのこと。安倍政権が立憲主義に基づいていないことが、安保法制のみならずこの分野でもそうであることが確認できました。
政治の方向、その背景にあることを丁寧に解き明かし、多くの人に伝えていかないと大変なことになります。堤さんの著書同様、読み終えて怖ろしさと憤りが強く湧いてきました。このまま黙ってはいられません。
お勧めの一冊です。 -
Posted by ブクログ
●=引用
●一方、労働者は低賃金状態におかれながらも、大きな不満を感じているわけでもない。マルクスが考えたように、困窮状態に陥った労働者が団結し、資本家に対抗することもない。不満が爆発しないのは、100円ショップに代表される激安ショップが増えたおかげだ。→???
●キーワードは「納得解」と「自己肯定感」だ。目の前に課題が生まれたとき、他者に頼って解を求めるのではなく、たとえ他者とちがっても、自分自身でたどり着く解が納得解だ。(略)大切なのは他者と比較しないこと。また、他者の答えを尊重すsること。「いまの自分」を認め、相手を尊重することで自己肯定感は高まる。自己肯定感とは、つまり他者を尊重する寛容さのことだ。この納得解と自己肯定感を高めることこそ、100均資本主義を生きるうえで、考えの軸となる。他者の目を気にして生きるのではなく、いまの自分を肯定できれば、生き方に自信がわいてくる。物欲社会と決別し、自分が納得のいく豊かな生活を送ることができる。物欲に振り回されることなく、それぞれの納得解を持ち、自己肯定感に満たされた社会は、特別なものではない。封建時代から日本社会に根づく価値観であり、私たちが持ちつづけた生活様式といってもよい。(略)日本では、仏教経済学者の安原和雄氏が、90年代から2000年代にかけて「足るを知る経済」を唱えた。(略)その根幹は「知足、簡素、非暴力」にあるという考え方だ。従来の「市場的・貨幣的価値」と「非市場的・非貨幣的価値」をうまくバランスさせようという考えは、100均資本主義に相通じるものがある。
●日本の人口減少は「一人ひとりが豊かな生活を送る適正規模に向かっている」と考えれば、決して不安材料にはならない。「Dのない社会」という現実を認め、新たな生き方を模索すれば、未来は明るく、希望に満ちたものになる。
●日本の給与水準が、30年間も400万円台のまま上昇していないのは、利潤率の傾向的低下の法則に陥ったようだ。バブル崩壊後の「失われた30年」は、それに拍車をかけたといってよい。それでも日本企業が、この間、利益を得て世界第3位の経済力を維持できたのは円安のおかげだ。それがいあm、原油高、ロシアのウクライナ侵攻などによって円安が過度に進み、これまでの利益獲得の構造が揺らぎはじめている。また、労働者が低賃金状態に置かれたままでもあるにもかかわらず、不満を爆発させる(政権交代や社会秩序の乱れなど)ことなく、何とかやってこられたのは、まさに100円ショップに代表される激安ショップのおかげだ。
●激安ショップをうまく活用し、自分の生活空間をよくしている人たちは、まさにクリエーターであり、変革者だ。身のまわりにとどまわらず、地域や社会の活性化につながる可能性がある。
●互いの不信感が渦巻く社会で、一人ひとりのちょっとした工夫が自己肯定感を生み、地域や社会がよくなっていく。100円ショップをはじめとする激安ショップの商品やサービスから、社会の好循環を生み出すのが100均資本主義なのだ。 -
Posted by ブクログ
経済学者として主にアジアにおける「経済開発」をテーマに研究活動を行う著者の立場から、安倍政権の進める国家戦略特区構想に対し論評を行っている。国家戦略特区制度に批判的なスタイルで一貫している。
国家戦略特区もその範疇に入る「特別経済区(SEZ)」は、本来、工業化を目指す途上国において効果を発揮する経済政策であり、経済的に成熟の域に達している現在の日本で、国家戦略特区が国家あるいは国民に対し、経済的利益をもたらす形で機能することは期待できないと指摘。また、国家戦略特区構想は、その効果が期待できないだけでなく、格差の拡大、人権の侵害、違憲性などの問題を持つものであることも指摘。さらに、韓国・中国を中心としたアジア各国における特区の現状にも触れ、いずれもあまりうまくいっていないとしている。そして、政権の民間頼みの無責任体質、経済政策の誤りを述べ、国家戦略特区は国民にも国家にもメリットがないと主張している。
著者の国家戦略特区制度への批判は一理ある部分もあると思うが、新自由主義に対する反感が強すぎて、評価にバイアスがかかっていると思われる部分も少なくなかった。例えば、混合診療、公設民営学校、農業の大規模化、カジノなどについては、批判が一面的であると感じた。格差が生じることが常に悪ではないだろう。健康で文化的な最低限度の生活を保障した上で、個々人の経済状況に応じて、選択肢を拡大することは社会の活力を生む点でも有意義なことではないだろうか。