【感想・ネタバレ】100均資本主義――脱成長社会「幸せな暮らし」のつかみ方のレビュー

あらすじ

【内容紹介】
○100円ショップから見えてくる21世紀の資本主義

○100均資本主義が行きつく先は、これまでの成長一辺倒、物欲にまみれて人間性を失った社会ではなく、一人ひとりの価値観が想像・共感され、誰もが夢の実現に向けて歩んでいける心豊かな社会である

本書では、100円ショップに代表される激安ショップに焦点を当て、なぜ低価格でも経 営が成り立つのか、どんなシステムが機能しているのか、利用者を引きつける魅力は何か……といった問題を考察していく。この考察を通して、私たちを取り巻く経済環境を理解することがゴールだ。

こんなに長く低賃金がつづいても国民が暮らしてこれたのは、100円ショップや飲食、衣 料、家具などの激安ショップが存在するおかげだ。バブル崩壊から30年の間、日本人の暮らしは激安ショップが支えてきた。賃金は上がらなくても、激安ショップがあれば日々の暮らしに困らない。海外に給料が増えた国があっても気にしない。
これは特異な経済のかたちだ。単なる“長期のデフレーション”では片づけられない。
私は、この特異な経済のかたちを「100均資本主義」と呼んでいる。100円ショップと利用者に象徴される新たな経済のかたちといえるからだ。
100均資本主義は、日本経済の構造――変容する日本資本主義を明らかにするうえで重 要なキーワードである。バブル崩壊から30年にわたるデフレ経済を経験し、日本人がたどり着いた21世紀の資本主義だと考えていい。
【著者紹介】
[著]郭洋春
立教大学経済学部教授。立教大学前総長。専門は開発経済学。
1959年東京都生まれ。83年法政大学経済学部卒業。88年立教大学経済学研究科博士課程単位取得満期退学。88年立教大学経済学部助手。91年同専任講師。94年同助教授。2001年同教授。09~11年、13~15年経済学部長。18~21年立教大学総長。
著書に『開発経済学』(法律文化社)、『国家戦略特区の正体 外資に売られる日本』(集英社新書)など多数。
【目次抜粋】
第1章 なぜ、100円ショップは儲かるのか
第2章 “生活革命”をもたらした新型コロナウイルス
第3章 21世紀は100均資本主義の時代
第4章 100均資本主義の未来
第5章 改めて100均資本主義を考える

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Posted by ブクログ

失われた30年と呼ばれる期間に成長した100均ショップなど、対デフレ業種の発展の背景にある日本の市場の特殊性を「新しい資本主義」と位置付け、それを「100均資本主義」と呼んで分析している。

タイトルと共に良く登場するのが「3つのD(dream、desire、demand)がない」という言葉だ。賃金が上がらない中で諦めにも似た心境の日本人が増え「高望みせず、ほどほど」を志向した結果、100円ショップなどが支持され、またそうした業種が発展していく関係ができあがった。

人類史上初、でもないのかも知れないが、発展がバブルで頂点を極め、「欲しいものはもう満ち足りた」のを初めて経験した人類が欲望の到達点に来てしまったのではないかと思える。

国内市場相手の仕事をしている以上、こうした状況は常に頭に入れて行動しないといけない。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

●=引用

●一方、労働者は低賃金状態におかれながらも、大きな不満を感じているわけでもない。マルクスが考えたように、困窮状態に陥った労働者が団結し、資本家に対抗することもない。不満が爆発しないのは、100円ショップに代表される激安ショップが増えたおかげだ。→???
●キーワードは「納得解」と「自己肯定感」だ。目の前に課題が生まれたとき、他者に頼って解を求めるのではなく、たとえ他者とちがっても、自分自身でたどり着く解が納得解だ。(略)大切なのは他者と比較しないこと。また、他者の答えを尊重すsること。「いまの自分」を認め、相手を尊重することで自己肯定感は高まる。自己肯定感とは、つまり他者を尊重する寛容さのことだ。この納得解と自己肯定感を高めることこそ、100均資本主義を生きるうえで、考えの軸となる。他者の目を気にして生きるのではなく、いまの自分を肯定できれば、生き方に自信がわいてくる。物欲社会と決別し、自分が納得のいく豊かな生活を送ることができる。物欲に振り回されることなく、それぞれの納得解を持ち、自己肯定感に満たされた社会は、特別なものではない。封建時代から日本社会に根づく価値観であり、私たちが持ちつづけた生活様式といってもよい。(略)日本では、仏教経済学者の安原和雄氏が、90年代から2000年代にかけて「足るを知る経済」を唱えた。(略)その根幹は「知足、簡素、非暴力」にあるという考え方だ。従来の「市場的・貨幣的価値」と「非市場的・非貨幣的価値」をうまくバランスさせようという考えは、100均資本主義に相通じるものがある。
●日本の人口減少は「一人ひとりが豊かな生活を送る適正規模に向かっている」と考えれば、決して不安材料にはならない。「Dのない社会」という現実を認め、新たな生き方を模索すれば、未来は明るく、希望に満ちたものになる。
●日本の給与水準が、30年間も400万円台のまま上昇していないのは、利潤率の傾向的低下の法則に陥ったようだ。バブル崩壊後の「失われた30年」は、それに拍車をかけたといってよい。それでも日本企業が、この間、利益を得て世界第3位の経済力を維持できたのは円安のおかげだ。それがいあm、原油高、ロシアのウクライナ侵攻などによって円安が過度に進み、これまでの利益獲得の構造が揺らぎはじめている。また、労働者が低賃金状態に置かれたままでもあるにもかかわらず、不満を爆発させる(政権交代や社会秩序の乱れなど)ことなく、何とかやってこられたのは、まさに100円ショップに代表される激安ショップのおかげだ。
●激安ショップをうまく活用し、自分の生活空間をよくしている人たちは、まさにクリエーターであり、変革者だ。身のまわりにとどまわらず、地域や社会の活性化につながる可能性がある。
●互いの不信感が渦巻く社会で、一人ひとりのちょっとした工夫が自己肯定感を生み、地域や社会がよくなっていく。100円ショップをはじめとする激安ショップの商品やサービスから、社会の好循環を生み出すのが100均資本主義なのだ。

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2024年02月17日

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