中沢けいのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
もう何度目かはわからないが、ひさしぶりに読んだ。私の大好きな小説のうちのひとつ。ブラバンのこと、親との関係、クラスの雰囲気、どれをとっても自分の中学時代を蘇らせてくれた。特に私が好きなのは、演奏中の描写である。音楽は、イメージである。ここでは、音楽を聴くと思い浮かぶ情景そのまま言葉にしてくれている。一度も聞いたことのない音楽の情景が浮かび、そして、実際に音楽をきいてみたときの感動たるや。大会での緊張感や、部活仲間との関係など、すべての場面が私の中の甘酸っぱい思い出と呼応するのだ。そして何より私が関心したのはいじめについての描写である。私自身が救われたような気持ちがするのだ。
-
Posted by ブクログ
「楽隊のうさぎ」の続編…、とまでは言えませんが、登場人物がそこそこ重なっています。
主人公は小学校五年生の女の子。
その子の五年生の一年間が書かれています。
はっきり言って、この本。何一つ結論がでないまま終わっています。
それでも、良い感じで終わっています。
これから先、色々と大変だろうけど、人生ってそんなもんよね? って感じ(笑)、とまでは言いませんが、何か劇的なことが起こったわけでもなく、色々な日常の積み重ねなんですが、そこに一石投じられると、波紋が広がる。
それは、良いことなのか、悪いことなのか、成長するために必要なことなのか。
まあ、そんなことはともかく、この人の文章 -
Posted by ブクログ
初めて読んだ作家さん。
表紙の装丁に魅かれて手に取った。
麹町のお屋敷に住む亥年生まれの5人の女たち。
猪が三代揃うと、その家は栄える、という言い伝えがあるようだが…5人集まると…⁉︎
母娘の関係と、そうでない関係、年代も中学生から最年長は昭和10年生まれ。それぞれの間柄を整理するのに、初め少し手こずったが、読み進めるとのめり込んだ。
ストーリーは静かに進行し、5人はそれぞれに抱えるものがあり、それぞれの人生を生きている。
ちょうど東日本大震災が起きる頃までが描かれていて。
麹町、普段自分が暮らしていて、通過するばかりで、立ち寄ることがほとんどない街。
一度、この街を自分の足で歩きたいと強 -
Posted by ブクログ
小学校の頃に友達と折り合いの悪かった克久は、中学に入った途端、先輩の勢いから吹奏楽部に入部してしまう。吹奏楽部ではパーカス(打楽器)を担当し、同級生の女子たちと奮闘しているうちに、折り合いの悪かった友達との関係も変わっていく…。
今年のテーマである、楽器が出てくる本蒐集の一環。続編らしきものも見つけたので購入済みである。
克久というすぐに自分の殻に閉じこもってしまうキャラクターの少年を主人公に据えているのは、なかなか珍しいのではないか。周りには誰にでも快活に挨拶をする同級生のトランペット女子、天性のリズム感のある小柄の少女に加え、美貌で中学生など相手にできないという先輩など、魅力的なキャラ -
Posted by ブクログ
ネタバレ青春小説と呼ぶにはあまりに生々しい一冊。
中学校の吹奏楽部が全国大会を目指す日々を、中学で初めて楽器に触れた克久を中心に描く物語。音楽回りの描写は圧巻の一言に尽きるが、この物語の主眼はどこにあったのだろうと思ってしまう。部活が主眼であれば、全国大会の結果を見せずに終わる結末はどこか煮え切らない。
中学に上がって世界が広がり、いじめられていた小学生時代から一転、全国大会で重要なパートを任されるまでになった克久の成長物語であるのは間違いないだろう。ただ、物語のラスト一行で示唆されるのは、この物語における克久と両親の関係の重要性である。
はっきり言うが、克久の母親の百合子、ちょっと気持ち悪い。いや、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ高校時代の演劇部3人の50代の女たちの日常。
ユキさん、サッチン、チョウ子。
演劇部時代の先輩が亡くなり、当時の記憶を懐かしみ
落ち着いた育児のあとにまっていた静かな日々、
孫について考えるようになる年齢
動物園で出会った、1人の男の子を大勢の大人で面倒見ていた海外の家族。
小さな子供を心から愛しいと感じるようになったこと。
大きな子供である夫とのやりとり
脳梗塞で倒れた友人。
これといった大きな出来事はないんだけれど
このお話のような小さな出来事の積み重ねこそが日常だなあと思う。
生きることにくじけそうになっている若者の話に疲れ気味だったので、こういう話が心に染みる。