ソ連解体の過程で国有企業の払い下げを受け、巨万の富を築いたオリガルヒたち。彼らは安全圏と信じたロンドンで、毒殺や不審な事故、突然の心臓発作などによって次々と命を落としていく。しかし英国政府は、ロシアからのエネルギー供給断絶の回避や、自国に流入するロシアの巨大利権といった外交・経済的利益を優先。他殺の証拠を隠蔽し、頑なに「自殺」や「病死」として処理し続けた。
本書で描かれるのは、偏執症的なプーチンが強いる「オメルタ(沈黙の掟)」と、それに背いた者への徹底的な制裁の凄惨さである。そして同時に、それをひた隠しにする英国政府の弱腰ぶりには呆れ果てるほかない。「プーチンに背けば、この地球上に安息の地など存在しない(“If you cross Vladimir Vladimirovich Putin, there is no safe place for you on earth.”)」――その言葉が、冷酷な現実として胸に突き刺さる。