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全豪50万部突破
オーストラリアABIA 年間大賞受賞作
壊れた家族。ろくでもない毎日。
それでも少年は、
濁った日常のなかに色彩を探しつづける――
危うさと眩さが織りまざる少年期を色彩豊かに描いた、
34カ国展開のベストセラー小説。
1980年代ブリスベン郊外。少年イーライは犯罪と暴力はびこる小さな町に暮らしている。母親は薬に溺れ、母に薬を教えた麻薬の売人が父親代わり。本当の父の顔はもう覚えていない。兄はある時から言葉を発しなくなり、時おり予言めいた言葉をその人差し指で宙に綴る。唯一の“まともな大人”は元脱獄犯として悪名高いスリムで、親友であるこの老人に人生の真髄を教わりながら、イーライはいつしか“世界を変えることのできる”ジャーナリストになりたいと夢見るように。だがある日、町を牛耳る悪の手が、彼から大事な人を奪っていき――。
世界34カ国展開。「2019年オーストラリアで一番売れた小説」がついに日本上陸。
*ABIA賞 大賞ほか4部門制覇
*インディ・ブック・アワーズ2019ブック・オブ・ザ・イヤー受賞
*MUD Literary Prize 2019金賞受賞
*New South Wales Premier's Literary Awards読者投票部門・新人部門受賞
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
ディテールと色彩が、破滅的な世界を照らす珠玉の小説。愚かで勇敢な少年の冒険譚。どこかファンタジックな雰囲気も醸し出しつつ、ドキュメンタリー的に細部にこだわった作品で、とてもワクワクさせられた。
子ども思いだけど麻薬の密売人をやっている母、その母の恋人で同じく密売人をやっている男性的な魅力ある男、話すのを拒み文字を空中に書いて意思表示する兄と、普通ではない環境に置かれたイーライ。
親友は、脱獄犯のベビーシッターであるスリムで、年齢的にはイーライと60の差がある。
こんな環境でも、擦れることのない少年イーライの視点から物語は語られる。
スリムの哲学を忠実に再現しようとする純粋さや、見たままだけを信じない疑う能力、自分に向かってくる不条理や暴力に、ときには怯えながらも、真っ直ぐに立ち向かう姿勢を持とうとするイーライに心惹かれる。
こうしたカラフルな登場人物たちが魅力的なのだが、彼らのセリフもとても印象深い。
なかでも、老年のスリムがイーライ少年に幾度となく伝える「時間を殺れ」という言葉が印象的だ。
目に見えない時間をどう殺すのか?
スリムは、獄中で時間を操っていたと語り、物事の細部を見逃さない、つまりディテールを見逃さないという方法で、時間を永遠に近いものにしてきた。
その教えが一人語りの文にも生かされており、時には滑稽で時には真に迫った会話劇や、時々の状況を克明に、かつ詩的に描いたまさしくディテールを見逃さない文体が読み手を飽きさせない。
詩的な表現が、破滅的で絶望的な環境下に置かれても、イーライの目には色彩が失われない理由のひとつになっている。
この小説を読んでいると、なんとなく過ごしてきた日々の細部にもディテールがあり、それを見逃してきた自分に気づかされる。
イーライのように色彩を手に入れるためには、日々の細部に注目し、時間を手繰る必要があるのだろう。
この小説は、読み手にも色彩が如何なるものか、どうやって色彩を手に入れるかのヒントをくれる。
常識的に考えて、親がろくでもないことをしていれば、嘆き悲しみ打つ手なしで泣き寝入りするところだが、イーライやオーガストは、状況を受け止めて進んでいく。
少年らしい向こ見ずな言動も含めて、勇気を与えられた。
細部に拘っているからと言って、ストーリーに手を抜いているわけではない。
じつは序盤から伏線がいくつも存在し、ストーリーが進むごとに紡がれていく。
兄のオーガストの予言めいたメッセージ、意味深な言動がこの物語を想像力豊かなものにしている。
主人公イーライは、想像力と現実を見つめる目と、どちらも持って世界に飛び込んでいく。
どんな状況下であっても、イーライが自分の意思を持って飛び込んでいく姿が頼もしい。
展開が読めないのでドキドキしながら読むことができた。
また、訳者の後書きによると、この物語の状況は、作者自身の環境をモデルにしているらしい。作者は元クーリエメールのジャーナリストなので、ほとんどイーライと同じような人生を送ったようなものではないかと、驚かされた。
長い長い小説だが、売れただけあり、ラストに至るまでの盛り上がりも素晴らしく、哲学に満ち満ちている。
Posted by ブクログ
スケールの大きなタイトルだ。何せオーストラリア発のベストセラー作品、満を持して、華やかに登場! ページを開くと、すぐさま感じられるのは、高密度な文章による作風。物語力の高度さ。少し取っつきにくいくらいの言葉の奔流。それに何と言ってもイメージの横溢。これこそ少年の感性そのものかもしれない。それを大人になって完成された文章力が過去への旅程を辿り掬い上げたものなのかも。
物語の牽引力は半端じゃない。少年イーライの育つオーストラリアはブリスベン郊外の田舎町。少年と親しい老人は、殺人の罪で獄中で生涯を過ごした脱獄王スリム。60歳も歳の差がある老人が少年に教えるのは人生の知恵と夢。
少年の兄オーガストは5歳の頃から口をきかなくなり、空中に指で文字を描く。描かれた唐突な文字の予言に満ちた不可思議さは、小説後半への伏線となるので要チェック! 伏線は他にいくつも。隠された赤い電話。獄中の囚人にイーライが書き送る手紙。記者になる夢。麻薬密売に手を染める義父と母。彼らを取り巻く麻薬組織の悪のあまりの暗黒さ。
最初のイメージは夢多き少年の冒険小説。ファンタジー・ランドみたいに見える作品世界は、大人たちの経済の論理で崩れてゆく。暴力と血と奸計とが、少年の周囲にある平和をこれ以上ないほどに搔き乱す。イーライにも試練が訪れる。いろいろなものを一気に失ってしまう衝撃的な時間。
その後の第二幕は、失われた平和の跡みたいな、アル中で壊れた父との暮らし。そんな中でもさらに成長を続ける兄弟の物語。新たな未来に向けた少年のあくなき想像力と、たくましさを見よ。
世界の美しさ。そして残酷さ。消えていった謎。さらに深まる伏線の数々。独特な語りと描写に引きずり込まれる。物語力ということの凄みさえ感じられるのが本書の中盤だろう。
そして終盤。十代最後に近づき、夢であったジャーナリストの道を踏み出したイーライが、世界と本格的に格闘する物語。ばら撒かれてきた伏線と仕掛けが一気に花火のように爆発する時。こういう物語か? と俄かに信じがたいほどに、懸崖を墜落するが如く様相を急変させるこの不思議な小説。プリズムのように絶え間なく色を変える正体のわからない物語と少年の未来。
ずっと家族の物語。ずっと夢の物語。ずっと冒険の物語。作者は自分自身、実際にジャーナリストを夢見た少年のモデルであったそうである。脱獄王スリムも、麻薬密売で連れ去られた義理の父親の運命も、本当の父親の本の虫ぶりも、物語の半分は少なくとも作者自身の体験からの物語ということである。
現在の作者を作り出したすべてのエネルギーは、本書の少年イーライに込められているだろう。この作品に注がれた作家の情念は半端ではない。
ちなみに本書のタイトル、各章の小タイトル、共にすべて、三語だけで成り立っている。それにはわけがある。他のあらゆる精緻な伏線もあちこちに仕掛けられている。鳥肌が立つほどの準備の多さに恐れ入ってしまう。まるでおもちゃ箱。仕掛け屋敷。
ちなみにいくつかのシーンでイーライは窮地に陥る。そういう時、過去から差し伸べられる救いの手には、感動のあまり胸が詰まることがある。あれはこの時のため? 仕掛けの多さに驚きを禁じ得ないし、そこには人間の深い魂同士が繋がっている様が感じられる。心から情感を揺さぶられる物語。
本書の今後の評価が実に楽しみな傑作である。どなたにも心よりお薦めしたい掛け値なしの傑作である。
Posted by ブクログ
おもしろい。最初から面白い。そして話が進むほど面白くなる。最後までだ。
少年はディティールを見ることが、記憶することが得意。そして話し、書く。手紙を見知らぬ囚人にも。
この物語が惹きつけるのは少年が正直だから、誠実だからだと思う。
ベビーシッターの年上の友達に言われる、
”みんなの物語を語るのはやめて、たまには自分の物語を語れ”
これは事実上の別れのシーンだが、このあとも、刑務所の母親に会いに行くシーン、裏切者と対決するシーン、宿敵と対決するシーンとどれも切実だが少年の誠実な思いが根底にあり、応援せずにはいられない。
貧困、酒、ドラッグ、暴力、すさんだ環境でも、微妙に少年はその道からそれる、それはベビーシッターで年上の友達と冷静な兄がいたから。
ミステリアスな兄のミステリアスな理由は最後までわからなかったがそれでいいと思う。何もかもわかる物語より。
この物語に完璧な人間など登場しない。
ローリングストーンズの、ルビー・チュースデーという曲が名曲であるということも知る。
章のタイトルが、すべて英単語で3語で、途中でなぜ3語なのかもわかる、腑に落ちる。
オーストラリアが舞台というのも新鮮だった。
あー素敵な本だった。
Posted by ブクログ
「少年は世界をのみこむ Boy Swallows Universe」
日本語訳で600ページ近くあるにもかかわらず、三語で表された各章はスムーズでリズムがある。しかも描写は細かく比喩も豊かで、流して読むには少々もったいないほど。
物語は12歳の男の子イーライの目線で描かれる。
犯罪の匂いのする親を持つ主人公が次々と襲い掛かる境遇に対し、必死に抗いながら成長していく。
日本の小説にある普通の少年期の成長物語に比べ、とてつもないスケールの展開であるところにオーストラリアを感じる。
登場人物の中では、主人公イーライはもちろん、ある事故から言葉を話さなくなったのち、空に指で文字を書く不思議な兄オーガストの存在が物語を神秘的に彩る。
そして、伝説の脱獄王スリム(二人のベビーシッター)、この人がとてもいい。
「ディテールだ、ディテールを頭の中に叩き込め」
「時間は操ることができる」
「時間を殺れ、殺られる前に」
ミステリー形式ではあるが、すべてを明らかにしようとするのではなく、少年期から青年期への成長とともに“いつのまにか失くしていくもの”など、柔らかく包み込むようにして描写している。
スティーヴン・キングの少年物とはまた一味違った面白さがここにある。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸
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