春風同心十手日記〈二〉 黒い染み

春風同心十手日記〈二〉 黒い染み

704円 (税込)

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この男のお縄には、深い優しさが染みている。

今日から月番で北町奉行所に出仕している定町廻り同心の夏木慎吾に早くも殺しの報せが届いた。

首を絞められた痕のある亡骸が大川に上がったと、下っ引きの伝吉が言うのだ。

急ぎ永代橋の袂まで奔り、亡骸を検めると、水草がへばりついた蝋色のその顔は、慎吾もよく見知っている油問屋西原屋四八郎の長男清太郎ではないか――。

突然の悲報に駆けつけた紙問屋三徳屋庄兵衛の娘お百合は、清太郎の亡骸にしがみつくと、顔に頬をすり寄せて、嗚咽した。そばで歯を食いしばっている四八郎によれば、ふたりは三日前に祝言を挙げるはずだったが、五日前に家を出たまま祝言前日になっても帰宅しない清太郎をみなで捜していたという。

周りが胸を痛めて遺族を見守るなか、ふいにお百合が訴えた。
「お役人様、あたし、下手人を知っています」

思わぬ言葉に、慎吾と岡っ引きの五六蔵は顔を見合わせた。なんでも、お百合は以前から不審な男に付きまとわれていたらしい。とすると、お百合を想うあまり、その男が邪魔な清太郎を殺したのだろうか。まずは女医の国元華山に検屍してもらった慎吾だったが……。

話題沸騰の捕物活劇シリーズ第二弾!

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    726円 (税込)
    弱い心に縄を打つ、あの男に捕まりたい。 定町廻り同心の夏木慎吾が殺しのあったという深川の長屋に出張ってみると、包丁で心臓を刺されたままの木場人足の竹三が土間で冷たくなっていた。 近くに女物の匂い袋が落ちていたところを見ると、一月前に家を出ていった女房のおくにの仕業らしい。 竹三は酒癖が悪く、毎晩飲んでは、暴力をふるっていたらしいのだ。さっそく、岡っ引きの五郎蔵や女医の華山らに助けを借りて、探索をはじめた慎吾だったが、すぐに手詰まってしまい……。 頭を抱えて帰宅した慎吾の前に、なんと北町奉行の榊原忠之が現れた!? しかも、娘の静香を連れて来ているのは、一体なにがあったのか? あいつが歩けば春風がそよぐ――気さくで、うっかり者だが、飛びっきりの優しさで、町人みなから慕われる定町廻り同心・夏木慎吾の八面六臂の活躍を描く、捕物活劇シリーズ第一弾!
  • 春風同心十手日記〈二〉 黒い染み
    704円 (税込)
    この男のお縄には、深い優しさが染みている。 今日から月番で北町奉行所に出仕している定町廻り同心の夏木慎吾に早くも殺しの報せが届いた。 首を絞められた痕のある亡骸が大川に上がったと、下っ引きの伝吉が言うのだ。 急ぎ永代橋の袂まで奔り、亡骸を検めると、水草がへばりついた蝋色のその顔は、慎吾もよく見知っている油問屋西原屋四八郎の長男清太郎ではないか――。 突然の悲報に駆けつけた紙問屋三徳屋庄兵衛の娘お百合は、清太郎の亡骸にしがみつくと、顔に頬をすり寄せて、嗚咽した。そばで歯を食いしばっている四八郎によれば、ふたりは三日前に祝言を挙げるはずだったが、五日前に家を出たまま祝言前日になっても帰宅しない清太郎をみなで捜していたという。 周りが胸を痛めて遺族を見守るなか、ふいにお百合が訴えた。 「お役人様、あたし、下手人を知っています」 思わぬ言葉に、慎吾と岡っ引きの五六蔵は顔を見合わせた。なんでも、お百合は以前から不審な男に付きまとわれていたらしい。とすると、お百合を想うあまり、その男が邪魔な清太郎を殺したのだろうか。まずは女医の国元華山に検屍してもらった慎吾だったが……。 話題沸騰の捕物活劇シリーズ第二弾!
  • 春風同心十手日記〈三〉 悪党の娘
    726円 (税込)
    弱った心を踏みにじる奴はこの刀が許さねえ! 最近、町人を騒がせている盗賊一味――笹山の閻僧。 定町廻り同心の夏木慎吾は、ここひと月ばかり奴らを追うのに必死で、奉行所で寝泊まりすることも多い。 つい先日押し込まれた漆問屋では、女子供までが皆殺しにされた挙句、金もすべて盗まれたという。 しかし、火付盗賊改方からの報せでは、「大店ばかりを狙い、店の者が気付かぬうちに、潰れぬ程度の金を蔵から盗み取る」のが、笹山の閻僧の流儀らしい。 なぜ、急に変わったのか? まさか偽物が跋扈しているのか? とはいうものの、「笹山の閻僧の盗みである証に、笹の葉の墨絵を一枚柱に打ち付け、印として残していっている」との報せもあり、混乱した慎吾たち奉行所の探索は難航を極めていた。 血も涙もない押し込みに江戸市中が震えるある日、慎吾が持ち場の高級料亭・松元で働くおもよの前に、行商の元締めをしている平次が姿を現した。 「松元の金蔵のありかを、絵図にしてほしいそうだぜ」 平次が言うには、おもよの父親・金五郎の手伝いらしい。 思いも寄らない真実を耳にしたおもよは――。 手に汗握る、人気絶頂の捕物活劇シリーズ第三弾!
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  • 春風同心十手日記〈五〉 深い執念
    726円 (税込)
    同心は岡っ引きの過去と向き合わねばならぬ。  岡っ引きになる前の五六蔵を手助けしていた伊蔵が浪人の姿をして現れた。かつて仲間であった三治が殺されたので、急ぎ報せに上方から戻ってきたと言う。下手人は五六蔵に底無しの恨みを抱く殺し屋〈雲の翔〉らしい。大昔に関わった事件が今となって蘇り、息を呑む五六蔵。そしてさらなる凶報が届いた。定町廻り同心夏木慎吾の大先輩で、祝言を挙げたばかりの中村広茂お菊夫妻が何者かに襲われたというのだ。  いったいなぜ?  己の過去に堅く口を閉ざす五六蔵に、これまで全幅の信頼を寄せていた慎吾はいら立ちを隠せない。下手人捕縛に焦りがつのる中、またもや悪い報せが……。慎吾と五六蔵の仲が試される、疾風勁草の第五弾! ●夏木慎吾……江戸北町奉行所定町廻り同心。天真一刀流免許皆伝。父親は北町奉行の榊原主計頭忠之だが、正室の子ではないため母の実家夏木家で育ち、祖父の跡を継いで同心になった。 ●五六蔵……深川永代寺門前仲町の岡っ引き。慎吾の祖父に恩がある。若い頃のことは今のところ謎で、やくざの親分だったとの噂もある。 ●国元華山……霊岸島川口町に診療所を構える二代目の町医者で、腑分けに長けた女性。

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    Posted by ブクログ 2021年01月23日

    202101/定町廻り同心・夏木慎吾の捕物シリーズ二作目。今回のも面白かったけど、清太郎の父・四八郎のキャラや振る舞いに説得力があまりなかった。お百合のつきまといエピソードもちょっと無理やりというか、真犯人のめくらまし要員というか。その正体や、大阪へという結末等もやや強引に思えたけど、せめて…という...続きを読む

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