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著者のライフワークとも言える東北の大河小説「最新刊」がついに完成! 朝廷の容赦ない仕打ちに苦しめられ続ける民を救うべく、伝説の英雄・アテルイの血をひく若者が立ち上がる。やがて彼のもとには、その志に共感する、力ある者たちが集まってくる。圧倒的な数の差を知略で制し、不利と思われる状況にも臆せず力を尽くして立ち向かってゆく、蝦夷たちの気高い姿に心がゆさぶられる歴史長編。
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Posted by ブクログ
火怨の後に読んだからか、比較してしまった。 アテルイを継ぐ天日子に、期待しすぎていたと思う。今にまで名が残っているアテルイの存在が大きすぎる。 それでもやっぱり感動する、蝦夷の心。 いいなあ。私もそういう風にありたい。
尊敬する高橋先生の新作。陸奥四部作に次ぐ5つ目の物語。 物語は「火怨」と「炎立つ」の間の時代。阿弖流為の反乱後、朝廷の支配下に入るものの、他国と同程度の扱いを受けられず、ただ租税を払うだけの立場に苦しむ時代。立ち上がったのは阿弖流為の子孫である天日子。元から部下や家族を背負い、先頭に立っていた過去...続きを読む3作とは異なり、徐々にリーダーとしての資質を現していく姿は青春小説としての魅力もたっぷりとあった。また、右腕の阿部幻水の存在も良い。二人の関係は、阿弖流為と母礼、貞任と経清の関係を思い出させられる。 何より元慶の乱という事件を知らなかったため、敗北という事実が分かりきっている過去作と異なり、どういう結末になるのかというワクワク感が強いのも良かった。1巻完結のため、人物造形が若干薄く、また憎たらしいほど強い敵という存在もなかったのが残念ではあったが、最後には天日子たちに感情移入してしまうほど心を熱くしてくれるのはさすが高橋先生と言わざるを得ない。 炎立つの安倍氏はルーツが諸説あるそうだが、阿部幻水が東北に根づいて100年強であの強大な安倍帝国を築いたと考えると非常に面白い(幻水は架空の人物みたいだが)。
阿弖流為の死から75年後。陸奥を舞台とした元慶の乱を題材としている。阿弖流為の曾孫天日子を主人公に、軍師として阿部比羅夫の末裔である阿部幻水、物部の一族の纏め日明など、蝦夷らの誇り高い闘いを描く。
平安時代、東北の英雄・アテルイの血を引く若者、天日子を中心に蝦夷たちの誇り高い闘いを描いた歴史小説。 アテルイの戦いを描いた作品「火怨」の興奮が忘れられず、その後の蝦夷たちの歴史を描いた作品ということだけあって、期待して読みました。 その期待は裏切られることなく、蝦夷たちの熱い思いが強く伝...続きを読むわってきました。 主人公・天日子を中心に魅力ある人物たちが集まり、知恵と勇気をもって戦い抜くさまは、読んでいて心が揺さぶられました。 歴史の狭間に生きる人たちの思いを想像することこそ、本当の歴史を知ることだと改めて思いました。
◼️ 高橋克彦「水壁 アテルイを継ぐ男」 蝦夷(えみし)ものの作品は興味が湧く。東北の広さと深さ。 高橋克彦「火怨 北の耀星アテルイ」は790年ごろ、坂上田村麻呂らが率いる朝廷軍と戦った蝦夷の英雄・阿弖流為(アテルイ)の物語。地勢を活かした戦略と小気味良い戦いぶりで数的不利を覆し抵抗を続けた蝦夷...続きを読む軍と悲しい幕切れのストーリーだ。今回はそれからしばらく後、アテルイの曾孫日天子(そらひこ)が大将となった蝦夷の戦いの話。 蝦夷の支援者の一族、物部氏に育てられた日天子は飢饉にあえぐ俘囚、朝廷に従う蝦夷の民を救おうとしない朝廷に怒り、挙兵を決意する。一族で商才に秀でた真鹿、山賊の長・玉姫、都では元検非違使で盗賊の頭目・逆鉾丸、応天門の変の影響で学問と出世の道を断たれた天才軍師・安倍幻水らを仲間に迎え、策を練り入念な準備を施して「勝ち逃げ」の戦に挑むー。 この「元慶の乱」は唯一蝦夷が朝廷に勝利した戦だという。朝廷は懐柔政策を取り、蝦夷をねじ伏せるほどの力はなくなっていったようだ。 天日子のもとに次々集まるクセのある仲間たちが頼もしい。とりわけ幻水の策略のキレはストーリー進行の中心とも言える。アテルイの時のように朝廷を本気にさせないため、最初から勝ち逃げ、を念頭に置き、いかに和議の条件を呑ませるように効果的に敵を叩くか、に焦点が絞られる。戦い自体は後半で、あまり長くはなく、負けはない。 そういう意味では軍略を練る部分にスポットが当てられている。長引かせることなく、兵を失わないように、抵抗の意思がない者の命を奪わないように戦って負けはなし。ところどころ挟まれる蝦夷としての矜持が示されて熱い。 東北の地図が掲載してあり、一円に、例えばいまの岩手県の胆沢蝦夷、とか津軽の蝦夷などが散っている。戦いとその準備の中で、松尾芭蕉の歌枕にも出てくる朝廷の拠点の城、宮城県の多賀城から秋田県の北西の端能代、また青森県の北西、海に面した十三湊などが描かれる。東北は、広く深い。みちのくとはよく言ったものだ。西日本の人間には読んでて、地図を見ていて本当にワクワクする広さ深みだ。 戦いそのものがあまり拡大しなかったからか、魅力的な人物をたくさん描いたわりには短くやや物足りないな、という感が残った。 仙台市出身の熊谷達也による蝦夷作品、岩手・釜石市出身という高橋克彦の一連の蝦夷関連の物語は読み応えが十分だ。 奥州藤原氏の興亡を描いたという「炎立つ」も読もうかな。
アテルイ(802年)の死から71年。元慶の乱をモチーフにしたフィクション。「炎立つ」の時代はこれより170年ほど後なので、「火怨」と「炎立つ」の間を継ぐという感じではないかな。 登場人物は創作なので、ご都合主義な面も否めない。
火怨の75年後、阿弖流為の曾孫 天日子が主人公。火怨と同じように、強く将の器である天日子と、知略に富んだ安倍幻水を中心に、物部が重要な導き手となってストーリーが進む。 天日子と幻水は火怨の阿弖流為と母礼を思い起こさせるが、ひとつ決定的に違うのは、幻水が蝦夷ではなく都の人間だということ。都で冷遇されて...続きを読むきた幻水が、蝦夷と共に戦って初めて一人きりではなくなったと泣くシーンが熱い。風の陣や火怨で悲願を果たせずに散っていった多くが、全くの無駄ではなかったのだと感じられる。 風の陣や火怨に比べてだいぶあっさりしているので、欲を言えばもっと読みたかった。
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水壁 アテルイを継ぐ男
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