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古代人との魂のひびきあいを生涯にわたり、悲劇的なまでに求め続けた人・折口信夫。日本各地への旅のなかで発見された「まれびと」、短歌創作を通した教育、新しい国学の提唱、そして敗戦後の日本において育もうとした人類教的な神……。現実との葛藤を常に抱えながら展開された折口の学問とはいったい何であったのか。最後の弟子が足跡のひとつひとつを確かめながら、折口の内面の真実をつぶさに描き出す。師への追慕と鎮魂の念に溢れた傑作伝記。第14回和辻哲郎文化賞受賞。
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Posted by ブクログ
折口の息吹まで生々しく伝わる評伝。 即座に2度読みし、しばらくして、三度読みしたが、何度読んでも心に染み入る文章を堪能した。 それは、作者が愛情を以て折口の哀しい心に優しく寄り添っているからだ。 折口の途轍もない天才を感じるエピソードだけ一点。 折口信夫が、万葉集の全口語訳を初めて行った時のことだ...続きを読む。 その著作は何と題されているか? 「口訳万葉集」だ。 つまり、折口がを口述したものを筆記者が書き留めたものだ。 折口は、万葉集全20巻4500首を一気に語りおろしたという。 一日50首を100日口述し続けて完成させている。 その時、折口の手元には簡単な万葉集テキストのみ。 折口は、さも簡単そうに、貧乏で参考書を買う金もなかったが、万葉集の必要なことは全て頭に入っていると語った、という。 辞書言海もほとんど暗記していたという男のことだ。 万葉集4500首を暗記して、解説することなど、朝飯前だったのだ。 この記憶力は特異だ。 おそらく、映像記憶の持ち主だったのではないか。 そういう、ほとんど異界から来たとしか思えない天才を目撃した同時代人の驚きが伝わってくる。 同時代人ではないが、この異能の人を「未来から来た古代人」と名付けた中沢新一は、折口の本質を突いている。
何度も読もうとしては挫折してきた折口。折口の年譜的歴史と個々の論文・短歌等の作品を行きつ戻りつして読者を導いてくれる本作を読み通して、折口独特のあの文章、思考過程の幾許かが理解できたような思いである。
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折口信夫伝 ──その思想と学問
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