白妙のあが恋のすえ露知らず思はぬ影のにくきかなしき――燃えるような赤い薄様に記された一首。贈られたのは晴明の師・賀茂保憲の大君(長女)。齢十一の少女に届けられたこの恋歌は、晴明の妻である陵王をその身形から男性と勘違いし、自分の恋敵として捉えたもの。保憲の呪符によって護られた邸に暮らす大君を恋慕する者は常人ではない。ある日、晴明の乗る牛車に一本の矢が刺さった。【目次】Sweet Empty Shine/Interlude-one/Little By Little Shine/Interlude-two/Immortal Shine/Period./あとがき
記紀につづられし女神の寝床、慈悲あふるる神の寛き懐――隠国熊野。長年の夢である熊野詣を果たしたカイは、小さな草庵にテンとともに留まっていた。ある日、カイは山中で蔓に足をとられた小狐を助けた。信太の辰狐を妻とし、大陰陽師の父親であった前世はいまだ他人事。夜、臥したカイを簾越しに訪ねる者がある。その姿、一寸の疑いの余地もない、妖かしの類であった。『杜の遊宴地』【目次】杜の遊宴地/様々果恋草子/夢彩あかく/テン&カイのカンサツ日記 by 鳴海ゆき/杜の遊宴地・割増編(エクストラ)/あとがき