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カラマーゾフ事件から十三年後。モスクワで内務省未解決事件課の特別捜査官として活躍するカラマーゾフ家の次男、イワンが、事件以来はじめて帰郷した。兄ドミートリーの無罪を証明し、事件の真相を確かめたい――再捜査を開始するイワンの前に新たな事件が起こる。十三年前の真犯人は誰なのか。新たな事件は誰が、何のために起こしているのか、そして、謎解きの向こうに見えてくるものとは。息詰まる展開、そして驚愕の結末!
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Posted by ブクログ
『カラマーゾフの兄弟』はドストエフスキーが死の直前まで執筆していて、本来は続編が予定されていたという。これを日本人の著者が独自に読み解き、解釈し、勝手に続編を書いたのが『カラマーゾフの妹』だ。と言っても、ドストエフスキー自身が構想していたとされる設定も引き継がれている(アレクセイが革命家を志している...続きを読むとか) 『兄弟』で描かれた「カラマーゾフ殺人事件」から13年後、捜査官となったイワンが再び事件の真相に迫る中で新たな事件が起こる展開。ミステリーとしても面白いし、多重人格者や異常なフェティシズムなどサイコな面も描かれつつ、更にはスチームパンク得意の”ディファレンス・エンジン”が登場し、その計算能力によって、ロケット・ランチャーや宇宙船を開発するなどという、トンデモ系SF的な展開も盛り込まれている。(ここは好みが分かれるところだろう) この小説は語り手が”著者自身"であることも面白い。著者がドストエフスキーを前任者と呼びながら、これを執筆した経緯や、前任者の意図を解説するようなメタ視点が書かれている。「『兄弟』では、なぜ無駄なシーンが長々と描かれたのか?」とかサラっとディスってたりするのも楽しい。(その無駄なシーンを伏線として活かしている。勝手に) ちなみに『兄弟』の要約も書かれていて優秀。(あんなにわかりにくい小説をわかりやすくおさらいしてくれる)
日本の小説家が『カラマーゾフの妹』という小説を出したとしたら、まずは日本を舞台にした小説で『カラマーゾフの兄弟』にアリョーシャ、いやいや、アリュージョンがあるようなもの、と推測されるではないか。それが『カラマーゾフの兄弟』の続編とは大胆不敵。なぜ100年以上も続編が書かれなかったのかといえば、ドス...続きを読むトエフスキイ翁が亡くなってしまったからである。……のだが、翁の死後、続編の執筆に挑戦する者がいなかったのはなぜかといえば、それはドストエフスキイを凌駕する重圧に挑戦者たちが退けられたのだろうと作者は述べる。しかしドストエフスキイに互するものを書こうなんて思わなければ簡単じゃないかというのが作者の意見。なんと謙虚にして不遜。 文庫版には解説の代わりに、作者と亀山郁夫、沼野充義の鼎談が乗っており、それによれば、作者はベストセラーとなった亀山訳『カラマーゾフの兄弟』と『続編を空想する』を読んで続編の執筆に駆り立てられたのだという。亀山版の翻訳については正統派ドストエフスキイ翻訳論者(かなんか)から不正確だの誤訳だの歪曲だのといった批判があるようだが、光文社古典文庫自体が、古典を現代に焼き直そうという不届きな意図から刊行されているのであり、『カラマーゾフ』の続編を書こうなどというのもその不届き路線にある。 かくて13年後である。ドストエフスキイ自身も13年後の話を第二部として書くと予告していた、13年後である。 13年前をちょっとおさらいしておこう。ドストエフスキイが主人公と述べる、天使のような三男アレクセイ、愛称アリョーシャが帰郷し修道院にはいる。引き続き、浪費家の長男ドミートリーが金をせびりに帰郷、またドミートリーに父との仲裁を乞われて虚無的な次男イワンも帰ってきて、カラマーゾフの兄弟たちが揃う。カラマーゾフの父フョードルが撲殺されたのが、当該殺人事件である。ドミートリーが裁判にかけられ流刑となるが、実はフョードルが狂女に生ませ、下男として住まわせていた異母弟スメルジャコフが下手人と思われ、スメルジャコフは「父殺し」をイワンに唆されたと示唆したあと自殺してしまう。 本書でもかなり丁寧に『カラマーゾフの兄弟』のあらすじがまとめられているので、読んでいない読者も楽しめるようになっている。評者も『カラマーゾフ』を読んでもう数年たつので、要約はありがたかったが、もちろん読んでいたほうが、倍音として響いてくるものが豊かになることは確かである。 13年後、流刑のドミートリーはすでに監獄で事故死している。アレクセイは地元で教師。イワンはといえば内務省にはいって凶悪犯罪などを専門とする特別捜査官となっている。そのイワンが「カラマーゾフ事件」を再捜査するために郷里に戻ってくることで話が回り出す。 探偵はイワン・カラマーゾフだが、それは事の半分。 『妹』が出版された同じ年、図らずも伊藤計劃/円城塔『屍者の帝国』が上梓されている。こちらはジョン・H・ワトスンが主人公、アレクセイ・カラマーゾフが重要な脇役として登場するというものである。『妹』ではイギリスの高名な探偵に捜査協力を依頼したときに通訳を務めたという、若い心理学者にして貴族のトロヤノフスキーが登場し、彼もイワンも「ホームズ氏の捜査法」は一通り心得ているのだが、この心理学者が心理学的探偵としてイワンと同道する。トロヤノフスキーはフランスでピエール・ジャネの教えを受けてきたのだ。この「13年後」は1887年、まだフロイトはほとんど世に知られていない。もっともジャネもまだ駆け出しだが。 しかし実に探偵は高野史緒なのである。ドストエフスキイが残した手がかりをあつめ、そこで語られなかったことを推理し、ついにフョードル殺しの真犯人を突き止めるのが本書の肝である。 心理学的探偵が必要なのは、探偵イワンの様子がおかしいからだ。彼が発狂寸前か、あるいは発狂してしまったのではないかという描写は『兄弟』でも描かれているが、13年たっても、彼はときに記憶が飛んでしまうことがある。それに悩んで催眠治療師にかかったことがあったが、そのとき不意に蘇ってきた記憶が彼らカラマーゾフの兄弟に妹がいるという幼時の記憶なのである。 『カラマーゾフの兄弟』は「父殺し」が重要主題であり、『続編を空想する』の中で亀山は、終盤に登場する少年クラソートキンとともにアリョーシャが革命家になって皇帝暗殺を企てるというストーリーを予測している。この予測をどう扱うのかは興味を覚えるところだが、本書ではクラソートキンが企業家になって、驚くべき発明をしているというスチーム・パンク的展開が興味深い。『屍者の帝国』がまさにスチーム・パンク的なので、何だろうか、このシンクロニシティは。 『妹』では犯人当ての推理小説としての展開だけではなく『兄弟』のテーマを引き受けようとしていることが、薄っぺらい謎解きに終わることなく、ある重みを作品に与えている。『兄弟』では「大審問官」でイワンが彼の「神学」を開陳するが、『妹』ではアリョーシャが彼の『神学』を示す。そして「父殺し」はいささか倒錯的に「父への愛」として敷衍されるのだ。
果敢にもドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に挑戦し、独自の答えを描いてみせた第58回江戸川乱歩賞受賞の力作。 原作を損なうことなく、ミステリーとして続編を描くという面白いアイデアと力量には驚かされた。どのような着想からこの作品を描くに至ったのか非常に興味深かったが、巻末の高野史緒と亀山郁夫、...続きを読む沼野充義の鼎談を読み、納得した。
本家ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は高校生の頃に読んで 大人というか、大台超えた60代の2005年になってから読み直したのと 追ってすぐ亀山新訳の話題に引かれ2008年にまた読んだのと 都合3回読んでいる 高校生の頃はわかったのか?わからないままでも 登場人物たちの饒舌な会話が気にいった...続きを読むものだった 若いときの読書なんて感性で読むものかもしれない 2回目の読書術もこなれすぎたあたりの感想は ストーリーの物語性(エンターティンメント性)に感心してしまって ドストエフスキーの言わんとするところなどはスルーしている そして亀山新訳を読むに至って またわかったようなわからないような気分になった なぜなら 亀山氏が訳書の終わりにお書きになったり 新書版「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」などで 続編がある、あるとキャンペーンを張るので やっと小説のはじめにかかげてある「著者より」の文章に気が付いて 読めば、そういわれればそう、と... でも その空想を小説にしてしまうそら恐ろしい作家がいらっしゃるとは というわけで高野文緒『カラマーゾフの妹』を読んだ 本家に劣らぬミステリーだからネタバレになると困るので 現代風の読み応えのある、文章も抑えた力量があるという感想のみ言う だいたいこの本のタイトルがしゃれてい過ぎる 「父殺しの真犯人は本家大団円で解決済みではなかったのだ」という カラマーゾフ兄弟に妹が居るならば...って思うじゃない?
読みたいと思って待っていたらやっと回ってきた。昔読んだがぼんやりしか覚えていない「カラマーゾフの兄弟」。今あらためて読んでも大丈夫解るのだろうか。先にアノ長い長い本編を読んだほうがいいのだろうか。迷っているうちに手元に来てしまった。 こういうのを杞憂と言うのだろう。読んでみたら、もう面白くて最後まで...続きを読む読んでしまわないと眠れない、久々に読書の楽しみを実感した。 作者がこの本を書いたのはとても勇気がある。驚いたのは隅々まで読み込んで、原作(前作)のポイントは必ず抑えてある。その上で新しい展開をたっぷり読ませてくれる。なんといっても事件の13年後。あの事件は解決済みで犯人に審判もくだり、関係者もそれぞれの生活に戻っている。そこからどうなったか。 三男のイワンは事件のときにはモスクワに発っていた。だが大審判の折には父フョードルを殺害したのは長男のドーミートリー(ミーチャ)だという判決を受けいれていた。法廷で人格を疑われるほど錯乱し暴言を吐いたことも今では「忘れられていった。 頭脳明晰だったイワンは内務省に勤め、未解決事件の特別捜査官になっている。 その後も頭痛と幻覚、記憶が途切れるという症状に悩まされ、原因は心の深いところにある何かのストレスだろう、時々現れる謎の記憶の断片も繋がりがあるのかも知れないと、うすうす自覚はしている。 次の調査地はを13年前の「カラマーゾフ事件」にして、故郷(スコトプリゴニエスク、、わたしはここが一口にいえないので故郷とする;;)に帰ってきた。 そこには以前オデッサの事件の折の通訳、トロヤノフスキーが来ていた。彼はイワンが調べ始めた「カラマーゾフ事件」に深い関心を持っていたし、心理学者として、イワンの症状にも関心があった。 そして、過去の事件を現代の捜査法に照らして、謎を解いていく。 当時この事件のゴシップで仕事を増やし、名士になってしまっているラキーチンもいた。予審判事ネリュードフ。そして今も天使のような弟、アレクセイ(アリョーシャ)は結婚して故郷に残り、教会の仕事をしながら子供たちの育成につとめ、人々から尊敬されている。 事件の発端から、13年前の時間を掘り起こし、イワンの心の底に沈んでいる出来事から、長兄ドミートリー(ミーシャ)の冤罪が姿を現してくる。しかし彼はイワンの努力で20年の刑が減刑され13年になったのだが、シベリアの過酷な生活で亡くなっていた。 悪の分身のような私生児で異母兄弟のスメルジャコフは裁判の前日に自殺していた。 順調に調査が進んでいるとき、ラキーチンと、ネリュードフが撲殺される。凶器は父親フョードルのときのもに酷似していた。 イワンは、頭痛が酷くなり時々人格が分離する、そして自覚がないままに悪魔的人格に変異する。「悪魔だ」と名乗りそばにいるトロヤノフスキーに語りかける。 一度は幼い少女の人格が出た。 以前の大審判の暴言も、他人格が現れて暴れたのではなかっただろうか、イワンは思い乱れていく。 記憶にないが思い出すと嫌悪感が溢れてくる遠い領地、そんな中でイワンは譲られた土地を見に行く。そこには領主用の家もあったが何の記憶もなく、やはり過去には別人格が来ていたらしい。村人は彼を見知っていて、そのときの出来事を思い出し始める。当時そこには母も生まれたばかりの妹も兄弟もいて、すぐに亡くなってしまった妹の葬儀をして教会の墓に埋めていた。その妹も彼の記憶の底の底に眠っていた。 それは彼の多重人格の証明であり、今も頭痛になって現れる根源的なストレスの痕跡だった。 こうして過去に戻り、資料に当たり、事件当時見逃していた時間のずれを発見する。 そして。当時兄弟が全員で憎み、誰が殺してもおかしくない状態の中で、父親の撲殺時間に時間的にかなう人物が浮かび上がる。 原点を読み込んでミステリにした、そもそもの原点の読み込みがすばらしい。作者の文章力にも脱帽する。 その上、アレクセイが、愛国思想の実現のために組政治犯の仲間に入り、ロケットや砲弾を作る地下組織で働く、電算機を使った速度や燃料消化に従う重量の変化や軌道演算の部分、計算上可能だと思われるロケット打ち上げ構想を実現しようとする、SF的部分も今風で面白い。 イワンがトロヤノフスキーと知り合うオデッサの事件には、イギリスからホームズも参加していたらしいという、ウフッとなるサービス記述もある。 面白かった。
カラマーゾフ+ミステリー+スチームパンク。『カラマーゾフの兄弟』のその後を妄想した架空続編小説です。 カラマーゾフ事件の真犯人は誰なのか? 暴かれるのは封印された記憶、秘められた欲望。濁らない無垢も潔癖な正しさも、過ぎればそれは"狂気"なのだ。白黒つかない灰色の日々を凡庸に生きて行こう…。
実に細部まで『カラマーゾフの兄弟』を読み込んであるのに感心した。アリョーシャが犯人だとはいまいち腑に落ちない。また兄弟には妹がいたとの発想は面白い。もっと妹が育っていてほしかった。それも妹ではなく弟で。『カラマーゾフの兄弟』読んだことある人には賛美半分失望半分だろうが十分楽しめた。
カラマーゾフと聞けば、いつかは読まずにはいられないかと。 ロシア文学の巨匠の作品。書かれなかった続編を想像するのは、楽しいことだと思うけど、まさか自分で書いてしまうとは! イワンの人格形成については、考えさせられることがあるけど、アリョーシャの神性についてはイメージが合うかもしれない。 よく調べます...続きを読む。楽しみながら読ませていただきました。
「カラマーゾフの兄弟」の続編でもあり、ミステリーでもある。 多重人格等新しい要素も加えて、見事に謎解きをしているのである。 ちょっと分かりにくい小説の解説にもなっており、二重三重に得した気分だ。
あのドストエフスキーが、死によって書き上げられなかった『カラマーゾフの兄弟』の続編! 原作を損なう事なく、そして、とても納得の行くものでした。 全ての謎が、「妹」をキーにして、きれいに納まる感じです。 普通に文学としてだけでなく、ミステリとしても、SFとしても、心理学としても楽しめました。 そうか...続きを読む・・・ 本編の13年後は、ホームズと同時代になるのですね。 「カラマーゾフ事件」の真犯人は、諸説ありますが、この作品では、私の考えと同じ人が真犯人でした。
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