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Posted by ブクログ 2020年08月16日
『カラマーゾフの兄弟』はドストエフスキーが死の直前まで執筆していて、本来は続編が予定されていたという。これを日本人の著者が独自に読み解き、解釈し、勝手に続編を書いたのが『カラマーゾフの妹』だ。と言っても、ドストエフスキー自身が構想していたとされる設定も引き継がれている(アレクセイが革命家を志している...続きを読むとか)
『兄弟』で描かれた「カラマーゾフ殺人事件」から13年後、捜査官となったイワンが再び事件の真相に迫る中で新たな事件が起こる展開。ミステリーとしても面白いし、多重人格者や異常なフェティシズムなどサイコな面も描かれつつ、更にはスチームパンク得意の”ディファレンス・エンジン”が登場し、その計算能力によって、ロケット・ランチャーや宇宙船を開発するなどという、トンデモ系SF的な展開も盛り込まれている。(ここは好みが分かれるところだろう)
この小説は語り手が”著者自身"であることも面白い。著者がドストエフスキーを前任者と呼びながら、これを執筆した経緯や、前任者の意図を解説するようなメタ視点が書かれている。「『兄弟』では、なぜ無駄なシーンが長々と描かれたのか?」とかサラっとディスってたりするのも楽しい。(その無駄なシーンを伏線として活かしている。勝手に)
ちなみに『兄弟』の要約も書かれていて優秀。(あんなにわかりにくい小説をわかりやすくおさらいしてくれる)
Posted by ブクログ 2016年02月15日
日本の小説家が『カラマーゾフの妹』という小説を出したとしたら、まずは日本を舞台にした小説で『カラマーゾフの兄弟』にアリョーシャ、いやいや、アリュージョンがあるようなもの、と推測されるではないか。それが『カラマーゾフの兄弟』の続編とは大胆不敵。なぜ100年以上も続編が書かれなかったのかといえば、ドス...続きを読むトエフスキイ翁が亡くなってしまったからである。……のだが、翁の死後、続編の執筆に挑戦する者がいなかったのはなぜかといえば、それはドストエフスキイを凌駕する重圧に挑戦者たちが退けられたのだろうと作者は述べる。しかしドストエフスキイに互するものを書こうなんて思わなければ簡単じゃないかというのが作者の意見。なんと謙虚にして不遜。
文庫版には解説の代わりに、作者と亀山郁夫、沼野充義の鼎談が乗っており、それによれば、作者はベストセラーとなった亀山訳『カラマーゾフの兄弟』と『続編を空想する』を読んで続編の執筆に駆り立てられたのだという。亀山版の翻訳については正統派ドストエフスキイ翻訳論者(かなんか)から不正確だの誤訳だの歪曲だのといった批判があるようだが、光文社古典文庫自体が、古典を現代に焼き直そうという不届きな意図から刊行されているのであり、『カラマーゾフ』の続編を書こうなどというのもその不届き路線にある。
かくて13年後である。ドストエフスキイ自身も13年後の話を第二部として書くと予告していた、13年後である。
13年前をちょっとおさらいしておこう。ドストエフスキイが主人公と述べる、天使のような三男アレクセイ、愛称アリョーシャが帰郷し修道院にはいる。引き続き、浪費家の長男ドミートリーが金をせびりに帰郷、またドミートリーに父との仲裁を乞われて虚無的な次男イワンも帰ってきて、カラマーゾフの兄弟たちが揃う。カラマーゾフの父フョードルが撲殺されたのが、当該殺人事件である。ドミートリーが裁判にかけられ流刑となるが、実はフョードルが狂女に生ませ、下男として住まわせていた異母弟スメルジャコフが下手人と思われ、スメルジャコフは「父殺し」をイワンに唆されたと示唆したあと自殺してしまう。
本書でもかなり丁寧に『カラマーゾフの兄弟』のあらすじがまとめられているので、読んでいない読者も楽しめるようになっている。評者も『カラマーゾフ』を読んでもう数年たつので、要約はありがたかったが、もちろん読んでいたほうが、倍音として響いてくるものが豊かになることは確かである。
13年後、流刑のドミートリーはすでに監獄で事故死している。アレクセイは地元で教師。イワンはといえば内務省にはいって凶悪犯罪などを専門とする特別捜査官となっている。そのイワンが「カラマーゾフ事件」を再捜査するために郷里に戻ってくることで話が回り出す。
探偵はイワン・カラマーゾフだが、それは事の半分。
『妹』が出版された同じ年、図らずも伊藤計劃/円城塔『屍者の帝国』が上梓されている。こちらはジョン・H・ワトスンが主人公、アレクセイ・カラマーゾフが重要な脇役として登場するというものである。『妹』ではイギリスの高名な探偵に捜査協力を依頼したときに通訳を務めたという、若い心理学者にして貴族のトロヤノフスキーが登場し、彼もイワンも「ホームズ氏の捜査法」は一通り心得ているのだが、この心理学者が心理学的探偵としてイワンと同道する。トロヤノフスキーはフランスでピエール・ジャネの教えを受けてきたのだ。この「13年後」は1887年、まだフロイトはほとんど世に知られていない。もっともジャネもまだ駆け出しだが。
しかし実に探偵は高野史緒なのである。ドストエフスキイが残した手がかりをあつめ、そこで語られなかったことを推理し、ついにフョードル殺しの真犯人を突き止めるのが本書の肝である。
心理学的探偵が必要なのは、探偵イワンの様子がおかしいからだ。彼が発狂寸前か、あるいは発狂してしまったのではないかという描写は『兄弟』でも描かれているが、13年たっても、彼はときに記憶が飛んでしまうことがある。それに悩んで催眠治療師にかかったことがあったが、そのとき不意に蘇ってきた記憶が彼らカラマーゾフの兄弟に妹がいるという幼時の記憶なのである。
『カラマーゾフの兄弟』は「父殺し」が重要主題であり、『続編を空想する』の中で亀山は、終盤に登場する少年クラソートキンとともにアリョーシャが革命家になって皇帝暗殺を企てるというストーリーを予測している。この予測をどう扱うのかは興味を覚えるところだが、本書ではクラソートキンが企業家になって、驚くべき発明をしているというスチーム・パンク的展開が興味深い。『屍者の帝国』がまさにスチーム・パンク的なので、何だろうか、このシンクロニシティは。
『妹』では犯人当ての推理小説としての展開だけではなく『兄弟』のテーマを引き受けようとしていることが、薄っぺらい謎解きに終わることなく、ある重みを作品に与えている。『兄弟』では「大審問官」でイワンが彼の「神学」を開陳するが、『妹』ではアリョーシャが彼の『神学』を示す。そして「父殺し」はいささか倒錯的に「父への愛」として敷衍されるのだ。
Posted by ブクログ 2020年06月11日
本家ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は高校生の頃に読んで
大人というか、大台超えた60代の2005年になってから読み直したのと
追ってすぐ亀山新訳の話題に引かれ2008年にまた読んだのと
都合3回読んでいる
高校生の頃はわかったのか?わからないままでも
登場人物たちの饒舌な会話が気にいった...続きを読むものだった
若いときの読書なんて感性で読むものかもしれない
2回目の読書術もこなれすぎたあたりの感想は
ストーリーの物語性(エンターティンメント性)に感心してしまって
ドストエフスキーの言わんとするところなどはスルーしている
そして亀山新訳を読むに至って
またわかったようなわからないような気分になった
なぜなら
亀山氏が訳書の終わりにお書きになったり
新書版「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」などで
続編がある、あるとキャンペーンを張るので
やっと小説のはじめにかかげてある「著者より」の文章に気が付いて
読めば、そういわれればそう、と...
でも
その空想を小説にしてしまうそら恐ろしい作家がいらっしゃるとは
というわけで高野文緒『カラマーゾフの妹』を読んだ
本家に劣らぬミステリーだからネタバレになると困るので
現代風の読み応えのある、文章も抑えた力量があるという感想のみ言う
だいたいこの本のタイトルがしゃれてい過ぎる
「父殺しの真犯人は本家大団円で解決済みではなかったのだ」という
カラマーゾフ兄弟に妹が居るならば...って思うじゃない?
Posted by ブクログ 2019年12月29日
読みたいと思って待っていたらやっと回ってきた。昔読んだがぼんやりしか覚えていない「カラマーゾフの兄弟」。今あらためて読んでも大丈夫解るのだろうか。先にアノ長い長い本編を読んだほうがいいのだろうか。迷っているうちに手元に来てしまった。
こういうのを杞憂と言うのだろう。読んでみたら、もう面白くて最後まで...続きを読む読んでしまわないと眠れない、久々に読書の楽しみを実感した。
作者がこの本を書いたのはとても勇気がある。驚いたのは隅々まで読み込んで、原作(前作)のポイントは必ず抑えてある。その上で新しい展開をたっぷり読ませてくれる。なんといっても事件の13年後。あの事件は解決済みで犯人に審判もくだり、関係者もそれぞれの生活に戻っている。そこからどうなったか。
三男のイワンは事件のときにはモスクワに発っていた。だが大審判の折には父フョードルを殺害したのは長男のドーミートリー(ミーチャ)だという判決を受けいれていた。法廷で人格を疑われるほど錯乱し暴言を吐いたことも今では「忘れられていった。
頭脳明晰だったイワンは内務省に勤め、未解決事件の特別捜査官になっている。
その後も頭痛と幻覚、記憶が途切れるという症状に悩まされ、原因は心の深いところにある何かのストレスだろう、時々現れる謎の記憶の断片も繋がりがあるのかも知れないと、うすうす自覚はしている。
次の調査地はを13年前の「カラマーゾフ事件」にして、故郷(スコトプリゴニエスク、、わたしはここが一口にいえないので故郷とする;;)に帰ってきた。
そこには以前オデッサの事件の折の通訳、トロヤノフスキーが来ていた。彼はイワンが調べ始めた「カラマーゾフ事件」に深い関心を持っていたし、心理学者として、イワンの症状にも関心があった。
そして、過去の事件を現代の捜査法に照らして、謎を解いていく。
当時この事件のゴシップで仕事を増やし、名士になってしまっているラキーチンもいた。予審判事ネリュードフ。そして今も天使のような弟、アレクセイ(アリョーシャ)は結婚して故郷に残り、教会の仕事をしながら子供たちの育成につとめ、人々から尊敬されている。
事件の発端から、13年前の時間を掘り起こし、イワンの心の底に沈んでいる出来事から、長兄ドミートリー(ミーシャ)の冤罪が姿を現してくる。しかし彼はイワンの努力で20年の刑が減刑され13年になったのだが、シベリアの過酷な生活で亡くなっていた。
悪の分身のような私生児で異母兄弟のスメルジャコフは裁判の前日に自殺していた。
順調に調査が進んでいるとき、ラキーチンと、ネリュードフが撲殺される。凶器は父親フョードルのときのもに酷似していた。
イワンは、頭痛が酷くなり時々人格が分離する、そして自覚がないままに悪魔的人格に変異する。「悪魔だ」と名乗りそばにいるトロヤノフスキーに語りかける。
一度は幼い少女の人格が出た。
以前の大審判の暴言も、他人格が現れて暴れたのではなかっただろうか、イワンは思い乱れていく。
記憶にないが思い出すと嫌悪感が溢れてくる遠い領地、そんな中でイワンは譲られた土地を見に行く。そこには領主用の家もあったが何の記憶もなく、やはり過去には別人格が来ていたらしい。村人は彼を見知っていて、そのときの出来事を思い出し始める。当時そこには母も生まれたばかりの妹も兄弟もいて、すぐに亡くなってしまった妹の葬儀をして教会の墓に埋めていた。その妹も彼の記憶の底の底に眠っていた。
それは彼の多重人格の証明であり、今も頭痛になって現れる根源的なストレスの痕跡だった。
こうして過去に戻り、資料に当たり、事件当時見逃していた時間のずれを発見する。
そして。当時兄弟が全員で憎み、誰が殺してもおかしくない状態の中で、父親の撲殺時間に時間的にかなう人物が浮かび上がる。
原点を読み込んでミステリにした、そもそもの原点の読み込みがすばらしい。作者の文章力にも脱帽する。
その上、アレクセイが、愛国思想の実現のために組政治犯の仲間に入り、ロケットや砲弾を作る地下組織で働く、電算機を使った速度や燃料消化に従う重量の変化や軌道演算の部分、計算上可能だと思われるロケット打ち上げ構想を実現しようとする、SF的部分も今風で面白い。
イワンがトロヤノフスキーと知り合うオデッサの事件には、イギリスからホームズも参加していたらしいという、ウフッとなるサービス記述もある。
面白かった。
Posted by ブクログ 2016年03月19日
カラマーゾフ+ミステリー+スチームパンク。『カラマーゾフの兄弟』のその後を妄想した架空続編小説です。
カラマーゾフ事件の真犯人は誰なのか? 暴かれるのは封印された記憶、秘められた欲望。濁らない無垢も潔癖な正しさも、過ぎればそれは"狂気"なのだ。白黒つかない灰色の日々を凡庸に生きて行こう…。
Posted by ブクログ 2015年01月03日
実に細部まで『カラマーゾフの兄弟』を読み込んであるのに感心した。アリョーシャが犯人だとはいまいち腑に落ちない。また兄弟には妹がいたとの発想は面白い。もっと妹が育っていてほしかった。それも妹ではなく弟で。『カラマーゾフの兄弟』読んだことある人には賛美半分失望半分だろうが十分楽しめた。
Posted by ブクログ 2014年12月10日
カラマーゾフと聞けば、いつかは読まずにはいられないかと。
ロシア文学の巨匠の作品。書かれなかった続編を想像するのは、楽しいことだと思うけど、まさか自分で書いてしまうとは!
イワンの人格形成については、考えさせられることがあるけど、アリョーシャの神性についてはイメージが合うかもしれない。
よく調べます...続きを読む。楽しみながら読ませていただきました。
Posted by ブクログ 2014年09月07日
「カラマーゾフの兄弟」の続編でもあり、ミステリーでもある。
多重人格等新しい要素も加えて、見事に謎解きをしているのである。
ちょっと分かりにくい小説の解説にもなっており、二重三重に得した気分だ。
Posted by ブクログ 2014年08月20日
あのドストエフスキーが、死によって書き上げられなかった『カラマーゾフの兄弟』の続編!
原作を損なう事なく、そして、とても納得の行くものでした。
全ての謎が、「妹」をキーにして、きれいに納まる感じです。
普通に文学としてだけでなく、ミステリとしても、SFとしても、心理学としても楽しめました。
そうか...続きを読む・・・ 本編の13年後は、ホームズと同時代になるのですね。
「カラマーゾフ事件」の真犯人は、諸説ありますが、この作品では、私の考えと同じ人が真犯人でした。
Posted by ブクログ 2020年08月26日
第58回江戸川乱歩賞受賞作で、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」から、幻の13年後の続編を書き上げたミステリー。原作の不可解な父殺し事件の内容をたどりながら、真相がいかなるものだったのか、次男のイワンが解決に挑む。が正直少し無理を感じた。
Posted by ブクログ 2017年07月13日
カラマーゾフの兄弟を読んだことがあったので大丈夫かと思い読んでみたけど、
昔のことなのでほんっとーに大筋でしか憶えておらず、
もっと細かく憶えていたなら、数倍楽しめ、こんな解釈が!と思えたと思う。。。
Posted by ブクログ 2016年06月03日
1606 ロシア古典カラマーゾフの兄弟のその後を描いた作品。兄弟の方は読んだ事無いが、本書だけも独立して読めました。前半が少々退屈でした。。。第58回江戸川乱歩賞受賞
Posted by ブクログ 2015年10月23日
かの未完の大作の続編をミステリータッチで描いた野心作。誰が書いても批判を受ける作品を、あえて書いた作者に拍手。原著を知らずに読んでも理解できるような構成は、ありがたい。
しかしながら、、、ロシアが舞台の小説は、地名や人名がすんなり入ってこなくて辛い(^o^;A
Posted by ブクログ 2014年09月29日
「カラマーゾフの兄弟」のパロディ続編。書かれなかった二つ目の物語。
乱歩賞のSFミステリ作家だし気楽に読めればいいかな、程度だったせど意外と読み応えあった。
あくまでも楽しめるパロディとしてだけど。
巻末の鼎談にもあったけど、ドストエフスキーの作品はミステリではなく純文学だから、と誰もがスルーして...続きを読むいる矛盾点を細かく読み解いて物語を繋げていてなんだかすっきりした。
イワンとアリョーシャはちょっとキャラ変わりすぎてて違和感あったけど、他は割と細かい流れを汲んでて面白かった。
コーリャのコスミズムについてはぶっ飛びすぎな印象もあったけど、そうかけ離れた時代の話でもないのね。宇宙科学黎明期、より少し前かもしれないけれど、革命軍と平行する夜明けの期待感がリアルでよかった。
「私は科学しか信じない」、なるほどねえ。
あとリーザの描き方がよかった。すき。この娘はわりと原作に忠実なイメージ。
犯人が彼だったのはまあそうだよね、という感じだけど。
原作のアリョーシャの気味悪さをこう持ってくるのね。
我が前任者、という書き方が傲慢に聞こえて少し嫌だったけど楽しく読めました。
Posted by ブクログ 2014年09月26日
フョードル殺しの真相も、アリョーシャの皇帝暗殺計画の部分も、上手くまとめられている。
著者が『カラマーゾフの兄弟』をよく読み込んでいることが分かる。
ただ、それは「読めるレベルにした」くらいの話。
『カラマーゾフの兄弟』の続編として本気で読むとひどいことになる。
アリョーシャやイワンの性格が変わ...続きを読むり過ぎていて、元々の良さが死んでいる。
Posted by ブクログ 2014年09月13日
亀山郁夫さんの新訳が爆発的に流行ったときに読みたいと思い、舞台化やテレビ化されたものを見て更に原作に興味が出たものの、未だに読んでいない「カラマーゾフの兄弟」。お話の筋は知っているので、順番があべこべになることに抵抗感はあったけれど、この「続編」を読んでみることにした。
私の中で、人間の内面に迫る、...続きを読む重厚な、敷居が高い純文学のイメージが強かった原作だが、本編と、作者と亀山郁夫さん・ロシア文学の教授の鼎談までを読み終え、原作に対するイメージが変わった。完結編というべき続編が予定されていたことも踏まえて読むと、ミステリーとして読んだときに違和感があるシーンが続編に繋がる伏線だったのかもしれないとの指摘など、ゾクゾクするほど面白かった。
大作なので、読み始めるのには少し勢いが必要になるが、やはり是非原作を読んでみたいと思った。読んだ後で自分はどんな解釈をするのか、この「カラマーゾフの妹」の内容に改めて何を思うのか、そんなことも楽しみに読めるのも面白いだろう。
Posted by ブクログ 2014年09月09日
自分は「カラマーゾフの兄弟」も ドストエフスキーの作品も読んだ事がない。
どんなものかと思ったが、旧ソビエトの人名は覚え辛かったが割りと面白く読めた。
ちょっとコスミズム辺りは違和感を感じるが、まあ良しとしよう。知っているという事が増えた一冊となったかな、、、
あ、あとやはり江戸川乱歩賞を受賞した作...続きを読む品らしい内容だった。(個人的にはこの賞を受賞した作品はあまり好みではないが、つい宣伝に引っかかって読んでしまう。)
Posted by ブクログ 2014年09月12日
世界文学史上もっとも有名な殺人事件の盲点を衝き、真犯人を明らかにしようという意欲作。原作では錯乱したまま舞台から姿を消してしまったイワンが犯罪捜査官として帰還するという設定からして、わくわくさせるには十分。ミステリーとしての面白さだけでなく、原作の世界観もきちんと踏まえたうえ、ファンタジー・SFの高...続きを読む野史緒らしい遊び心も満載な、楽しめるパロディになっています。
正直、多重人格という設定にはあまり感心しないのだけど、アリョーシャやリーザ、コーリャ、ラキーチンらの13年後の姿もそれぞれになるほどと思わせるし、「神がいなければすべてが許される」という、原作においてイワンが口にする重要なテーゼが、異なるかたちで変奏され、物語の柱をかたちづくっているのも見事。驚くほど大胆な解釈を展開しながらも、それがしっかりした原作理解の枠内におさまっているので、納得しつつ楽しめる作品になっていると思います。
Posted by ブクログ 2014年08月30日
あのドストエフスキーの書き上げた大傑作、カラマーゾフの兄弟
その続編に挑戦するという勇気は賞賛に値したい。
絶対にどんなものを書き上げても文句を言う輩はいるのだから。
着眼点や原作への解釈はずば抜けていた。
だからこそ、この続編を書き上げることができたのだろうが。
恐れていては何も進まない。作家と...続きを読むいうものは突き進むもの。
そういうことをまざまざと見せつけられた。
ただ、どうだろうか。
いわゆるカラマーゾフ事件の真犯人は確かに存在した。
そして、確かにああ結びづけるのがもっとも何かもしれない。
とは言え、読み終わった後に何も残らなかったのも確か。
陳腐な多重人格や、陳腐な現代描写がそうさせたのか。
歴史を紐解くというのは、こういう現代的な解釈も取り入れ
大胆に冒険するということなのだろうか。
何ともやりきれない感情だけが残ったのは確かだ。