Posted by ブクログ
2021年08月01日
「わかりやすい」を心がけ、「わかりやすいといえば池上さん」と世間的に認識された著者だからこそ説得力があった。
まず、池上さんがなぜこのようにわかりやすく私たちに伝えることができるのか。
物事の本質がわかっていないと、噛み砕いて説明することはできない。
大量のニュース、大量の本、そして現場での体験が...続きを読むあってこそ、池上さんのわかりやすさが実現できたのだと理解できた。
私たちは、わかりやすいことをいいことだと思っている。
もちろん、わかりやすくあることは大切なことだ。
しかし、発信者から情報を受け取るばかりで、自分たちで調べたり、疑問をもったりせず、受け身になっていたように思う。
そうしたスーパー受け身な人々ばかりになってしまったことに、警鐘を鳴らすのが本書である。
もうわかったんでいいっす。
ネット見ればわかるんで。
などと、思考停止に陥ってはいないだろうか。
よく調べもせず、ネットの情報は優れたものと一途に思い続けていた過去の黒歴史を思い出しつつ、自分自身も短絡的思考に陥っていたことをまずは恥じた。
本書では、情報の正確性についても語られている。
新聞、テレビがなぜネットであがる情報を流さないのか。
その理由の一つとして、不確実性の高い情報は、校閲が必要だからだそう。
ネットでは、ある情報が流れてきたら、それが噂レベルであってもどんどん拡散されてしまうが、プロは正確性を高めるためにさまざまな人の目を通してから情報を流すらしい。
誰でも情報提供者となれる時代だからこそ、わかりやすい情報や、面白いだけの情報に飛びつく危険性がよくわかる。
このような状況を打破するために、ネット以外の情報源が重要となる。
本の価値、新聞の価値は、池上さんが繰り返しその価値を述べているところだけど、池上さんが自らの足でベトナムとラオスを訪れたとき読書傾向の違いがその国の発展とリンクするのではないかと肌で感じた話は面白かった。
ジャーナリストの池上さんだからこその知の広げ方が垣間見えて面白い。
自らの足を使い現場に立つことで、その人だけのものが獲得できる。
わかりやすさを支えるインプットの話と、わかったつもりを無くすためのアウトプットの話も述べられている。