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武士の世の幕開けを告げた保元・平治の乱から、秀吉による文禄・慶長の役まで、中世は武士による戦乱の時代だった。承久の乱や南北朝の内乱、応仁の乱、戦国のさまざまな合戦など、中世の画期となった重要な戦乱について、先端研究者が最新の研究に基づいて叙述。単なる戦乱史・事件史にとどまることなく、戦乱を切り口とした中世の通史・政治史として描き出す。そして、なぜ中世には全国規模の内乱が頻発したのか、その構造的要因を考察する。戦乱の世を一望に収める入門書。
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Posted by ブクログ
後鳥羽上皇は承久三年(一二二一年)五月一五日に鎌倉幕府執権の北条義時の追討を命じた。承久の乱の勃発である。後鳥羽上皇の目的には二つの見解がある。 第一に鎌倉幕府を倒すことを目的としたとする。 第二に討伐対象は義時だけで、幕府を否定するものではなかったとする。近時の有力説である。NHK大河ドラマ『鎌倉...続きを読む殿の13人』も第二説である。 第一説から第二説に対して、鎌倉幕府は義時の独裁ではなく、政子・義時の体制であり、義時だけを除いても上皇の目的は達成しないと批判される。 「政子・義時の姉弟は政治的立場を同じくしており両者は幕府権力の中心に位置していたが、政子が幕府の意思決定を行っており、義時が専断していたわけではなかったのである。こうした幕府政治のあり方を踏まえれば、後鳥羽院の義時追討命令は、政子が主導する幕府の政治体制そのものを否定することを目指したものであり、院の挙兵目的は倒幕であったと考えるべきであろう」(田辺旬「承久の乱」高橋典幸編『中世史講義【戦乱編】』ちくま新書、2020年、64頁以下) 義時一人を排除しても幕府が倒れる訳ではないという見解は正しいだろう。しかし、義時一人を排除すれば万事解決と考える見通しの甘さも後鳥羽上皇らしさがある。
保元・平治の乱から文禄・慶長の役まで、日本中世における重要な戦乱が14章に分けて叙述されている。新しい研究成果を踏まえた理解の助けとなる入門書。同シリーズと同じく各章末にある参考文献が非常に助かる。
中世は戦乱の時代と言われますが、中世が原則的に自力救済の社会であり、あらゆる階層の人々が自らの生活を守るために戦っていたことが、非常に印象に残りました。教科書では脚注で触れられる程度の享徳の乱と明応の政変についても、その背景と歴史的意義がよくわかりました。
ちくま新書の「○○史講義」シリーズは、最新の歴史学研究の論点がコンパクトにまとめられており、大変勉強になる。本書も中世における戦乱(周知のものからあまり有名でないものまで)について、研究動向を踏まえた整理がされており、関心を深めるための配慮も行き届いている。
<目次> 第1章 保元・平治の乱 第2章 治承・寿永の乱 第3章 承久の乱 第4章 文永・弘安の役 第5章 南北朝の内乱 第6章 永享の乱 第7章 享徳の乱 第8章 応仁の乱 第9章 明応の政変 第10章 西国の戦国争乱~16世紀前半の中国地方を中心に 第11章 東国の戦国争乱...続きを読む 第12章 石山合戦 第13章 豊臣秀吉の統一戦争 第14章 文禄・慶長の役 <内容> 近年見直しの進んでいる中世史の中で、政治と深い関係の戦乱を取り上げている。第7,8章をのぞけば教科書でも有名な戦乱だが、ほぼすべてが研究の結果、今までの話とは違うことになっている。研究史のまとめでもあるので、興味ある方はどうぞ!
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