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Posted by ブクログ
人生のある時期にはめちゃくちゃ刺さるけど、いつしかそれが刺さった時間のことすら忘れてしまうような、通り過ぎる作品があると思っていて、それはたとえば、滝本竜彦や西尾維新だったりする。
10数年ぶりに読んだ、NHKにようこそ。
痛みも、どうしようもなさも、いたたまれなさも、なんとも言えないあの読後感も、やっぱり昔ほど迫っては来なかった。
でも、作家自身が、これを読むと書いていたときの自分を思い出すと記していたように、読んでいたときの自分を思い出す。そんな本はきっと、世の中にそう何冊もない。
通り過ぎて忘れるけれど、またそのうち何年かしたら、読んで思い出す。ちょっと歪な青春時代のアルバムのような本。
あとがきまでは本編だと思います。
Posted by ブクログ
☆4.5 実在する生なましさ
『鬱の本』を読んだら、『NHKにようこそ!』に共感した、救はれたといふ人がをり、また作者の滝本氏もすごい文章を書いてゐたので、読んでみた。
饒舌なモノローグ文体がつづくが、テンポとリズムがよくて読みやすい。展開もご都合主義だけど、気にならない。主人公はお先真っ暗と思うてるんやけど、文体が陽気。
隣の部屋のアニソンがおジャ魔女どれみだったり、主人公がナディア世代だったり、滝本の実体験だらう。だからこそ、ひきこもりを自虐的におもしろ可笑しく書けるのだらう。
主人公も山崎もみんな表現に生なましさがある。私も大学時代の人間関係を思ひ出した。
なにより凄みがある。トリップ描写も、岬ちゃんの真実も、おおと思った。最後の契約書もおれは好きである。
おなじモノローグ系の『イリヤの空、UFOの夏』は饒舌が長すぎて挫折した。森見登美彦の『四畳半神話大系』も原作は淡泊で、アニメの方がおもしろい。
しかし『NHKにようこそ!』は短くて読みやすく(原作はアニメより短い)、見てみたらアニメも演出がうまくかなりおもしろかった。
立ち上がるリアリズム
主人公は割と普通にいる感じの青年。統失的なネガティブ思考が少々目立つものの、こういう人間はいる。多くの人が自分の中にも大なり小なり見いだせる存在だと思う。
ヒロイン(?)の岬ちゃんは、どこか捉えどころのない少女。とはいえその実、最後まで読んでしまえば、分かりやすい設定の「(境遇は特殊で哀れではあるが)普通の少女」でしかない。しかし、主人公の岬ちゃん(と他者)に対する興味の無さが、岬ちゃんを不思議少女に仕立て上げている。
主人公のありようはどこまでも臆病かつ現実的で、岬ちゃんというヒロイン候補がラノベ的なイベントアプローチをしかけてきても全くなびかず、ただただひきこもるばかり。自分から興味を抱かないから岬ちゃんは捉えどころのない不思議女子のままで、そのよく分からなさがボーイミーツガールなラノベヒロイン的でありながらも「リアルな異性」性を絶妙に立ち上がらせているように思える。
主人公は他者を恐れ、岬ちゃんは他者に依存したがっているのであるから、二人は全く噛み合わない。クライマックスではなんやかやとあって、最終的にはお互いに譲歩して、間をとって、ゆるい共存関係に収まる。大きくて夢想的な目的は達成できず、当座を生きていくために折り合いをつけるのである。
このすっきりとしない、ぼんやりとしたノーマルエンドの感じこそ、まさしく日常であり現実である。
現実世界には明確な悪も倒すべき敵もいないし、分かりやすいハッピーエンドもないし、形の見える未来もないのである。
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