Posted by ブクログ
2020年05月04日
「平成デモクラシー史」清水真人
政治ドキュメント。オーク。
政治とは制度の上で繰り広げられる駆け引きである、という視点から、平成の政治史を大きな転換期ごとに描いたドキュメント。
80年代後半生まれの僕にとって、平成の政治とは、派閥争いであり、権力と汚職であり、演出された劇場だった。
中学校の公民...続きを読むの授業で習う、議院内閣制や三権分立の理念と、日々ニュースで流れてくる『政治屋』の人々の言動に、つながるところを感じないまま大学生になり、社会人になり…、会社の組織の構造に馴染んでもなお、社会と政治の構造には疎いままだった。
ようやく30代(!)にして、この国の(少なくとも骨組みは)どうやって決まっていっているのかを見、その骨組みの全体像を知るために手を取った一冊。
政治家の自著は数多あれど(『私は闘う』『老兵は死なず』(野中広務)と『美しい国』(安倍晋三)だけ読んだ)、社会の動きに紐づいて、政治の舞台とその流れを緻密に書き起こしており、教科書で習った政治制度と現実世界の政治動静をつなげる良書。
なお、デモクラシーであり、政治ドキュメントでありながら、密接不可分に語られているのが、「官」の世界だ。
まさに制度の代名詞としての官僚構造と、それを現実に動かしている個々の官僚と政治家の蠢きには、報道には出てこない生々しさを感じる。
出版は2017年12月。このあとに、森友問題とそれを巡る財務省と文書管理を揺るがす国会論争、立憲民主と国民民主の完全分離路線、そして安倍晋三の3選と、政官とも大きな動きが起きた。改版での追補にも期待。(5)