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古来多くの哲学者が人間を「笑うことを心得ている動物」と定義した。フランスの哲学者ベルクソン(一八五九‐一九四一)は、この人間特有の「笑う」という現象とそれを喚起する「おかしみ」の構造とを、古典喜劇に素材を求めて分析し、その社会的意味を解明する。生を純粋持続ととらえる著者の立場が貫かれた一種の古典喜劇論でもある。
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Posted by ブクログ
これほど誤読された本もないのでは?「ベルクソンの語らなかった笑いもある」と柳田國男はじめとする碩学がよくいうが、本当はこれにつきると思う。
初読は学生時代。しかしこの独特の持つて回つた物言ひに、理解するのに難儀しました。否理解出来なかつた部分もありました。まあわたくしの無知蒙昧さが招くもので、仕方あるまいと感じてゐました。 齢を重ねて再読した際には、やはり分かりにくくて、結局この文章(訳文)は悪文なのだらうと勘考しました。多分原文は...続きを読むもう少し分かり易いのではないか。林達夫といふ人は有名な偉い先生なので、お前何様だと言はれさうですが。 例へば「生活と社会とが我々各人から要求するところのものは、現在の境地の輪郭を識別するところの絶えず気を張っている注意であり、それはまた、我々をそれに適応させることができるようにする肉体と精神との一種の弾力である」なんて文章、一読してすんなり頭に入つてこないのが悔しいのであります。 笑ひといふものは人間的な概念らしい。動物は笑はぬのでせうか。笑ひの元となる「おかしみ」(拙ブログの表記では「をかしみ」となる筈ですが、本書に合せます)を分類し、夫々をモリエールなどの喜劇作品をテクストとして解説してゐます。 第一章で「おかしみ一般」「形のおかしみ」「運動のおかしみ」「おかしみの膨張力」を論ずる。いはばタテの分類でせうか。基本的な三つの点を指摘します。即ち、「おかしみ」は固有の意味で人間的であること、無感動であること(笑ひの大敵は「情緒」らしい)、他者から孤立してゐないことのやうです。 第二章は「状況のおかしみと言葉のおかしみ」。子供の遊戯「びっくり箱」「操り人形」「雪達磨」の三つを例にとり、如何なる場合に「おかしみ」が誕生するのかを(たぶん)丁寧に繰り返し説明してゐます。 第三章「性格のおかしみ」では、「放心」なる概念が度々登場します。「笑いは何よりもまず矯正である。屈辱を与えるように出来ている笑いは、笑いの的になる人間につらい思いをさせなければならぬ」「笑いは絶対的に正しいものであるというわけにはいかない。また必ずしも親切なものでもないことを繰返しておこう」などといふ指摘は、現代の芸人さんにも通じるものがあるのではないでせうか。まあ良くわからんが。 後半になるに従ひ、越来越熱が入り面白くなつてきます。とはいへ、やはり別の新訳でも一度読まうと存じます。
笑いというものを学問にしたのは、フロイトやベルグソンのおかげだと思える。 笑うという行動というよりは、何かを「おかしい」感じるのは一体どういうことなのか、この心の動きは一体何なのだ。ベルグソンの興味はそこから始まる。 それを考えるために、ベルグソンは、一体何を我々はおかしいと感じるのか、そこから攻め...続きを読むる。モリエールの喜劇に詳しい訳ではないが、ベルグソンにとって、相当魅力的なものであったに違いない。 たしかに彼のおかしみは、モリエールをはじめとする当時の喜劇に限った話であるかもしれない。シェイクスピアなどのことは一切と言っていいほど触れられていない。しかし、彼がこのようにして、笑いの観察をじっと始めたことこそ、笑いを学問したことこそ、意義であると思う。誰しもが何かをおかしいと感じる。当たり前すぎることだ。だが、この当たり前が当たり前である不思議さ、そして、このおかしみというものがひとを強く動かし、精神が立ち上がる。これを考えずにギリシア以降捨て置かれたということが、ベルグソンにとっては我慢ならなかったのだと思う。 生きるということはおかしみをどこかで感じるということだ。学問はその不思議を追究することに他ならない。彼が今後この笑いというものをどこまで追求していったかは知らぬ。けれど、彼はきっと必ず、どこかでこの笑いについて探究し続けたはずだ。これは始まりに過ぎない。
笑いは社会的身ぶりであると同時に、その本質は機械的な「ぎこちなさ」を指摘して対象に屈辱を与えることである。
笑いというものを考察する。 読んでみるとわかりますが、笑いという事象についてこんなに納得できるのか、と驚きます。
確かに、笑いを論じた本なのに全く笑えない。 そもそも事例が古すぎて、イメージしにくい。 しかし、お笑いブームといわれる現代だからこそ読むべき価値のある本。 笑いとは根底で普遍的であり、文化による差などないのではないかと思わせてくれる見事な分析が展開されている。
古書店にて購入。初ベルクソンにこれというのもどうかと思うが、別にベルクソン哲学の勉強をしているわけではなく、巷にはびこる自称〈お笑い評論家〉たちの先達のようなこの著作に、どのような現代的意義が残されているのかを確認したいがために買ったようなものなのでまあ良しとする。解説にもある通り、著者の視線の先に...続きを読むあるのは何よりモリエールであり、古に名高いアリストパネスやシェイクスピア、ラブレーらは埒外にある。よってその論調も〈恐らく我々はこの点をあまりに深く追究しない方がいいであろう〉と些か微温的になってしまっている。
喜劇における笑いの分析によって、笑いの持つ生活や社会にとっての効用を暴きだし、生活や社会よって生が緊張や弾力を要求されていることが明らかにされている。 笑いは社会による不適用への罰でもあり、一時の緊張をほぐすものではあるが直後には生活や社会への適用へととんぼ返りさせられるものである。 悲劇と喜劇...続きを読むの本質的な違いや芸術の捉え方など非常に価値ある話しが語られている。 ベルクソンさんかっこいい! Mahalo
・無生物の生物性 ・人間の機械性 ・不意打ち ・落差 ・繰返し ・ひっくり返し ・交叉 ・自動現象 ・放心 ・非社交性 ・機智 ・滑稽
親父に借りた本。 何か難しい本を読みたいと言う単純な動機から借りた。大変読むのに時間がかかり、こつこつと読んでいたが結局まだ読み終わっていないまま数ヶ月放置している。 人はなぜ笑うのか、どういう場面で笑うのか、といった問題に対する分析を試みるという発想が私にはなかった。様々な笑いに共通するぎこちなさ...続きを読むのようなものを見出し、その追求をしよう、というところまで読んだ気がする。要追読。
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