書店員のおすすめ
小学生の頃、近所のにいちゃんに遊んでもらっていた“ゆい”。優しくて親切なにいちゃんですが、次第にその本性を現し、ゆいにキスしたり体に触ったりしはじめます。怖くなったゆいは、にいちゃんの元を逃げ出しますが、それが原因でにいちゃんはゆいの前から姿を消してしまいます。
高校生になったゆいは、偶然再会したにいちゃんに「ずっと忘れられなかった」と告げます。それから、ゆいはにいちゃんの言いなりになるのですが……。
はらだ先生すごい……と読み終わったあと、しばし呆然としてしまいました。
最初こそ、ゆいはサイコパスなクズ男に性的搾取され、壊れていくように見えるのですが、にいちゃんの壮絶な過去が明るみに出るにつけ、加害者と被害者の関係が反転していきます。歪んで歪んで、歪みきった二人なのに、行き着く先はなぜか穏やかで、「普通」ってなんだろうと考えてしまいました。テーマは重いのに、なぜか小気味よく読めてしまうのも、はらだマジック。
リバがあるので苦手な人はご注意を。