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Posted by ブクログ
※上巻だけを読み終わった気持ちで。
面白い。という論調で感想を書いてもよいものか、むねがざわつく。
2011年の「現代」に蘇った総統は技術の進歩に感嘆しつつ社会の腐敗に憤る、ナチズム的に筋が通ったやり方で。一方、周りの人間はこれをメソッドとしてキャラとして消費する。このズレが可笑しみの基本線には違いない。
ただ、単純なズレだけで処理できない部分が何箇所か出てくる。プーチンや国防大臣の件などはもちろんだが、民主主義のちょっと怪しいところに対する極論など、多少なりとも共感できる部分が出てくる。しかしそれと同時に、ナチズムに共感してしまった自分自身への怖れが現れるから、胸がざわつくざわつく。
人類史上最悪(という事になっている)ヒールをこういう描き方をする事で、ただの娯楽SFに終わらず多層な深読みをもたらすものになっている。
復活から約10年、ポピュリズムが跋扈する2020年にこの本を読むのもまた味わい深い。
下巻の展開はどのようになるのか。たぶん問うていくんだろうな。
Posted by ブクログ
ヒトラーがヒトラーの姿のまま現代に甦るので、彼を見た人は彼をコメディアンだと勘違いした。
ヒトラーになりきった物まね芸人だと。似ているのは当たり前、だって本人だもん。でも誰も本人だとは思っていない。これも当たり前。だから滑稽なのだ。
そこで、この物語の続編を勝手に想像してみる。
コメディアンとして人気が出てきヒトラーはメディアの寵児となる。彼の威勢の良い演説に感化された人々は、彼の語る未来像に期待を抱き始める。彼の言うことは尤もだ。彼は我々の不満を代弁してくれている。彼を支持する人は瞬く間に増えていった。
視聴率を稼ぎたいメディアは彼をどんどん登場させる。そしてメディアを味方につけたヒトラーは知名度を武器に、いよいよ政界に進出することになった。彼の武器はその演説力だ。彼を危険視する評論家もテレビ討論の場でこてんぱんにやっつけてしまう。街頭演説ではものすごい数の聴衆が集まる。勇ましい彼の姿に国民は熱狂する。そしてとうとう彼は、弱小政党ながらも党首として連邦議会でも発言できるまでになった。
彼は更なる権力基盤をかため国家元首に上り詰めることはできるのか…
たぶん、できない。
理由は簡単。だってヒトラーの格好しているんだもの。ヒトラーは史上最悪の独裁者だと誰もが知っているし。どこかでそのスタイルを変えないと無理でしょ? だからこの先の展開って想像できないんだよね。
これ、ヒトラーを笑いの種にしているからコメディとして安心して見れるけど、ヒトラーが絶世のイケメンに転生していたら笑いにならない。なぜなら彼の演説の中に潜む巧妙なレトリックを見抜くのは難しいからだ。ヒトラーが言ってることだから、と最初から疑心暗鬼で臨めるから、レトリックには騙されたとしても、信用できないと頭でっかちにその考えを跳ね除けることができる。
でもこれがイケメンだったらどうなのさ。めちゃくちゃ美人だったらどうなのさ。
信じちゃうね、たぶん。少なくともはじめに拒絶することなどはしない。まずは耳は傾けてみようとするはず。
悪魔が悪魔の格好で出てきたら、ああ、悪魔だとわかるけど、そんなにわかりやすい悪魔なんていない。シリアルキラーになるようなサイコパスには魅力的な人が多いんだから。
本文中でテレビのディレクターがヒトラーに対して注文をつける。
「ユダヤ人を冗談の種にしてはいけない」
ヒトラーは答える。
「もちろんだ、ユダヤ人は冗談の種にはならない」
この違い、わかる?
この些細に見える違いにも悪魔の牙が隠れている。
そこに気づける賢さを身につけたい。
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