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Posted by ブクログ
この作品は『リング』シリーズの現状最後となる作品だ。約三十年という長い時間をかけて構築されたユニヴァースの変容と集約を感じさせる一作。総決算とも呼ぶべきシリーズの再定義がなされている。それを是と受け取るかは読者次第だが、巨大なものが終わる時の重厚な響きを感じる。
この物語の主題は「家族」。呪いの連鎖が、血縁や自分自身の記憶というミクロな関係性へと収束していく構造が鮮烈だ。
中心にいるのは高山竜司。彼はこのシリーズに欠かせないどの小説にもいない特殊な立ち位置の存在であり、今作でも彼の記憶や存在が複数のレイヤーをまたいで展開される。現実、虚構、内省……その多重性と多様性が、物語の駆動力となっている。
印象的だったのは、恐怖の質が変化している点だ。シリーズ初期作のような、比較的順当な呪いによる「怖さ」からはどんどん離れていく。その代わり、抽象的な恐怖や哲学的な問いかけが前面に出てくる。
呪いが外部から襲いかかるものではなく、遺伝子やアイデンティティといった「内側」から生まれる内省的な苦しみとして描かれており、「ホラー」のオーソドックスな側面を求める読者にはネガティブに映るかもしれない。
しかしそもそもこのシリーズはホラーとして始まったわけではなく、作者が描こうとしてきたのは、畏怖すべき上位のエネルギーや意思のようなものだ。それが時に「恐怖」という形をとって現れる。だからこそ、ジャンルが変わっても通底する「怖さ」は変わらないのだと思う。
興味深いのは、神話や民俗の引用が物語の核に組み込まれている点だ。高山竜司はなぜこのような運命を背負っているのか?「貞子」という存在はどこからやってきたのか?
シリーズの根幹をなす「空白」が、「古事記」や「まれびと」などを手がかりに、ホラーを超えて神話的に再定義される展開には驚かされた。
構成も攻めている。シリーズ既読を前提とした描写が多く、時系列や人間関係が複雑に絡み合い、断片的なエピソードが積み重なっていく。読者は、過去作の記憶を呼び起こしながら、複数の現実レイヤーを行き来することになる。こうした構造は、単体で読むにはややハードルが高いが、シリーズを追ってきた読者には大きなご褒美となる。
情報開示のタイミングも巧みで、僕は個人的には翻弄された。謎解きの快感とエモーショナルな余韻が両立しており、ラストまで緊張感が持続する。シリーズを通じて積み重ねられてきたキャラクターの多重性や、現実と虚構の境界が曖昧になる語り口も健在で、読後に残る感触が独特だ。
シリーズファンなら、これまでの謎と複雑なレイヤーが一つに統合されていく快感をじっくり味わえるはず。
個人的にも、シリーズの集大成として高い満足感を得られた。
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小説・文芸
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