Posted by ブクログ
2010年12月16日
一応、「ライトノベル」というジャンルで執筆されていますが、
内容はヘヴィにも程があるのはいつも通り。
「未成年にはお勧めできません」と書かれたラノベは他に知りません。
寧ろ、いつも以上に人間の尊厳が徹底的に破壊されており、
容易に人に勧められる代物ではありません。
そうして漸く語りうる哲学的命題...続きを読むが、
哲学大好きな私には心地良く嵌れる部分でもあるのですが。
Wikipediaにおいて浅井ラボ先生の作風は
人が容赦なく殺されたり理想が砕かれたりするハードでグロテスクな世界観とこれでもかという程の生々しいキャラクター描写が特徴。また極めて高度な科学用語や、極めて直接的な残酷描写や性描写が多く、ストーリー自体も非常に重く暗いことからその作風には賛否が別れる。作家仲間やライトノベル好きの間では「暗黒ライトノベル」とも評される。
と紹介されていますが、実に適切です。
今回の新作ですが、世界観は以前同じくHJ文庫から刊行された
「TOY JOY POP」と地続きの模様。
「されど罪人は竜と踊る」ファンがニヤリとできる描写もあり。
それにしても先生はレメディウス好きですね。私も大好きですけど。
そして、短篇集ですが、四篇どれも単一世界内での出来事のようで、
そこ彼処にリンクを感じさせる描写が散りばめられていて面白いです。
一夜
あれ、割と普通のホラー?からの、あれ、やっぱり割と普通のホラー。
これは以前書かれた物の改稿のようなので或る意味この中では異質か。
二夜
最近よくツイッターでも先生が語っている命題。
途中までの展開は「悪の教科書」を思わせましたが、ここでそうなるのがラボ節ですよねー。
徹底的にテンプレートな設定での対比構造は、私も曾て作った作品で同様の手法を用いたので、共感しました。
でも、こういう物を書く時って書き手の精神も結構蝕まれる物だと思うのですが、大丈夫でしょうか。今更か。
三夜
このカップルは「TOY JOY POP」の犯人かと最初は思いました。
異常性を持ってしまったとても優しい普通の人間の苦悩。良いですね。
社会的に害悪であるなら、そこに通常の倫理は意味を為さない。
四夜
「BMネクタール」「ハカイジュウ」「バニラスパイダー」など、
チャンピオン系のモンスターパニックホラーを彷彿とさせる作風。
そういった極限状況での欲望剥き出しの人間、というのはよく描かれますが
別の側面を描いた作品といっても言いかもしれない。
「され竜」の異貌のものども登場をちょっと期待しましたが、大人の事情で無理か。
しかし、ゲヒンナム・ムといい、生理的嫌悪感を喚起させる生物描写に一層長けてきていますね。
ガユスとギギナのような面白掛け合いは少なく、哲学的命題も希薄ではありましたが
一定以上の異常さと、物語の転換による面白みは浅井ラボ先生らしいなぁと思う所。
これを人に勧めたら、精神性を疑われそう。
また、HJ文庫から新刊が出たら?私は秒で買いますけども。
70点。