Posted by ブクログ
2010年11月21日
“帽子のつばを押さえ、キットは目元をくしゃっとさせて笑った。
「それよりおれは、早く変身して大人に戻ったウィリアムさまを見せてもらいたいんですけど。楽しみだなあ、おれより大きいウィリアムさまって想像がつかないですからね」
「私の変身か、よーし、見せてやろう。初めての者には楽しい見世物だぞ」
「一気に...続きを読む身体が大きくなるんですよね。いったいどんな感じなんですか?」
「魔法の煙がもくもく出てきて、ポンッ!と一瞬で大人になったり子どもになったりするのだ。種も仕掛けもない早変わりだからな、城の子どもたちには毎回大好評を博している」
「あっはっは、いい芸を身につけましたねえ、ウィリアムさま」
「芸ではない。呪いだ、呪い」”
こんな微妙なところで終わるとは……!
というのが本音。
子供の身体になったまま戻れなくなったウィリアムの代役をヴィヴィアンが務め、四海家の会談が行われることに。
三家の当主にまつわる胡乱な噂話とは。
そして、エヴァンジェリン王妃の目的は。
続編出るのはすぐかな?
ジュリエットとウィリアムのラブっぷりが面白い。
読んでて、楽しい。
“「あるいはこうも考えることもできるでしょう。
王と王妃の手元に四海家の紋章印が全て揃っていれば、彼らは王妃の弟、フランシス・ライヴァルの名を記した西部総督の任命書を自由に作成できる。四つの家の紋章印がどのような手段で彼らの手に渡り、そこへ押されたのか、そのような経緯は、法の上では関係ない……」
ヴィヴィアンの話の結論を、ウィリアムはすぐに察したようだ。
従者に抱えられているヒューの身体へちらりと視線をむけ、うなずいた。
「要するに、王妃の放った刺客が狙うのは四海家当主の持つ紋章印ということだな、ヴィー」
「はい、兄上」
「フン。そして、やつらは卑怯な魔術でそのうちの一つをまんまと手にしたというわけだ」
ウィリアムの瞳が怒りにきらめく。彼の視線の先へ目をむけ、ジュリエットは息を呑んだ。
(あれは……)
毛布の敷布の上に点々と赤い滴が落ちている。
ヒュー・ブラック・イン・ザ・レインの左手からは糸のような血が滴っている。
その指からは、金貨を吐きだす双子のイルカを描いた銀色の指輪がなくなっていた。”