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権謀術数が渦巻く出世争い。欲望、嫉妬、裏切りが引き起こす情報操作――メガバンクが生み出した「合併」の弊害に悩まされる広報部員・裕也のもとに、写真週刊誌が頭取のスキャンダルを入手したという情報が入る。事実確認に追われる彼が掴んだ驚愕の真相とは?密告者の狙いとは?銀行を知り尽くした著者だからこそ物し得た超リアル企業小説。
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Posted by ブクログ
貸し渋り・貸しはがし。密告者探し。情報操作…。欲望、嫉妬、裏切りが渦巻く世界が企業のリアルだとするのならばこういう人間たちが『エリート』として社会を牽引している事に違和感を覚えるのは僕だけでしょうか? 僕は前々から江上剛さんの本は気になっていたので、これがいい機会だなと思ったので読んでみるこ...続きを読むとにしました。一読して思ったことはエリート社会っていうのはやることが陰険だなぁ、ということでした。 これがいわゆるガテン系の会社だと当事者同士の殴り合いの喧嘩で収まるような派閥争いが、あらゆる権謀術数を尽くして展開される姿に唖然とせざるを得ませんでした。 帯では『超リアル企業小説』というコピーが銘打たれておりますけれど、残念ながら僕はこういう大企業には勤めたことがないので、実際のところはどうなのかは知る由がないんですけれど、もし仮にそうだとするのならば、おそろしいなぁと、読んでいて非常に空恐ろしくなりました。 そして、男が抱く『嫉妬』という感情の醜さにも執拗に書かえており、名誉欲や男女のことに関するそれが自分の中にもあり、いかに強い負の感情であるかがわかりすぎるくらいにわかっているので、それを陰険この上ない態度で表に出す登場人物が余計に憎らしかったです。 肝心の内容ですが、『ハメたつもりがハメられた』という話を地でいくもので、企業同士の話の中にある男女のことや復讐…。そういった要素が強い小説でした。 日ごろ見ることができないものを見させてもらったという点では面白かったのです、しかしここではあんまり言及しませんが、ラストがすんなりいってしまったことが唯一不満といえば不満なところです。 ※追記 本書は2014年6月10日、『告発者 ((幻冬舎文庫))』として改題文庫化されました。
権力に負ける 「信義ね。関口さんは、銀行員にしては珍しい考えの持ち主ですね」と経営者トップの発言。不景気になると融資側に対し銀行は姿勢態度を一変する。「貸し渋り・貸しはがし」と言われた強硬姿勢で自己保守に走り、融資側の立場など考慮しない。この小説はそんな銀行の慣行と頭取のスキャンダルでの広報の役割、...続きを読む銀行を守る為の行動、さらに人としての「信義」を問う、実際に起きた「プライムローン事件」「路チュー事件」を模索したビジネス小説だ。 現実、政治家、大手企業、官庁などに対する「信義」(政治家、上司、会社を守る「嘘」)が問われる事件事故が多い。それによって「嘘・疑惑」ストレスを持ったまま自殺した事件も多く、勇気を持って「告発」すべきだと誰もが思う。「悪いのは自分では無くその悪意を権力で責任を負わせた上司であり、政治家である」ことを自責はないと自覚すべきだ。
過去最高益を出した会社なのに、銀行の貸し渋りにあい倒産してしまった。その会社の社長の美人の妹が銀行に逆襲を誓うが、頭取のスキャンダルでしか追い詰めることは出来ないと悟り、自ら身体を投げ出す。その妹は主人公の元恋人で今でも忘れられない人であった。また、バブル期のつけの合併の弊害は今でも残っていそうなの...続きを読むがわかる物語である。
銀行小説。池井戸潤氏と同様、銀行マン出身の作者だけあってリアルに銀行の内情を描いているのだろう。 どこの企業でも不祥事、コンプラ違反の事案ていうのは大なり小なりあるのだろう。その中で、それを正す良識人がいるかどうかによってその企業が泥沼にはまり込むか、それをきっかけにより浮上するかの分かれ道に立たさ...続きを読むれるのかもしれない。 企業は人なり。この小説でもその良識ある若手行員を中心に物語が展開していく。 実際のみずほファイナンシャルグループの3行統合後のドタバタを題材に現実に即した形で描かれている。 ミズナミファイナンシャルグループがみずほファイナンシャルグループ、ミズナミホールセールバンクがみずほコーポレート銀行、ミズナミリテールバンクがみずほ銀行。(そのまんまやん) 文庫本の表紙の建物もみずほの本店じゃないかな? しかも、みずほコーポレート銀行の初代頭取の路上キスの話も題材になっている。 銀行というか企業の内部の権力闘争としての派閥争いなど、嫌な部分が描かれていてちょっと気分が悪くなるが、特に金を扱う銀行ってこういう世界なんだろうなと妙に納得した小説。江上氏の作品はこれで2冊目。多作な作家なので他の作品も読んでみようかと思う。 私が社会人になったときは、都市銀行と呼ばれていたのは13行。 第一勧業銀行 富士銀行 三菱銀行 三和銀行 東海銀行 東京銀行 三井銀行 太陽神戸銀行 住友銀行 大和銀行 協和銀行 埼玉銀行 北海道拓殖銀行 破綻してなくなった銀行もあるが合併統合を繰り返して、今や4行。 これを見るだけでも月日が経つのが早いと感じてしまう。 それにしても銀行に対してはいいイメージを持っていないなあ。銀行ってろくなところじゃないと金のない私は思ってしまう。(^-^*)
本で書かれている貸し渋りや貸し剥がしって、最近ではあまりニュースになりませんが、リーマン後には随分取りざたされてました。僕の友人が勤めていた上場会社がまさにこんな展開で破産したりもしたし。さすが金融機関出身の著者だけに、その辺の経緯は詳しく、生々しく紹介されています。その頃のことを思い出しました。 ...続きを読むそして、ありましたね。頭取がフライデーされた事件が。あとがき(?)にあるように、該当金融機関ではなんのお咎めもなしに終わってしまったことが、当書籍を書くきっかけになったのだとか。著者の金融機関への思いはまだまだ強いようです。
銀行モノは池井戸潤しかよんだことがないが、これもエンタテインメント性の高い秀作。楽しみながら、銀行合併問題に対する理解を高められる。主人公の関口裕也が何となく半沢直樹にダブって見えるのは僕だけではないはず。
著者は銀行員時代に総会屋利益供与事件の際に広報部次長という立場だったそうだ。 上層部が隠蔽しようとした事に異議を唱え、けじめをつけるべきだと進言し、多数の逮捕者が出る大事件の中で改革を成し遂げたと思われたが、その後厄介払いとして左遷されてしまう。 それを基に本書を読むと、著者の目指した又は欲したヒー...続きを読むローが主人公の裕也なのだろう。 裕也は一行員として、様々な問題に巻き込まれながらも信義を尽くそうとする。 と、そう思って読み進めていたけれど、裕也も結局は欲の為に行動してしまうのが気になった。 着地点は同じではあるけれど、そこに人間臭さよりも不快感を抱いたのは、私が女だからなのだろうか。 物語が動き出してからすぐに「きっとこうなるのだろう」という予測が立ち、特に驚きもなく予測通り進むのはまだ良しとしても、なんだお前も下半身で物事を考えるただの馬鹿男かと落胆してしまった。 そして、散々合併銀行の弊害として派閥争いの為に誰がどこで聞き耳を立てているか分からないといった描写がこれでもかと書かれているのに、後半になるにしたがって、不用意な行動しかしなくなり、案の定ピンチに陥る。 波乱を起こすにしても安直すぎる。 最終的にはハッピーエンドではあるものの、ラストシーンも何とも言えない不快感ともやもやが残る結末だった。
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江上剛
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