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“――恋はいつから始まるのか――僕はいつもそのことを考えてしまう。”南十字星の下、出逢った一人の未亡人(おんな)。六本木のディスコで知り合った自由奔放なもう一人のおんな。光と影、陽と陰――対照的なおんなたちの間で揺れ動くおとこ。花火のように終っていく夏。その中で、静かに密やかに燃えていくおとことおんな。切ない心の機微を描いた、おとなの恋の物語。
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Posted by ブクログ
洗練された文章。時に爽やかに時に妖艶に。その深みは大人だけに許された領域のようなもの。 阿刀田 高の真骨頂、大人の切ない恋物語。 11編の短編からなる【花惑い】は、やはり大人の小説だった。哀愁という言葉がぴったりである。 「昨日はどこにいたの?」 「そんな昔のことは忘れた」 「今夜は会える...続きを読む?」 「そんな先のことはわからない」 なんて映画カサブランカのセリフのようなクラシックさが素敵な小説なのである。 モノクロの世界がいい。行間に漂う「モノクロ感」が読むものを魅了してやまない。 恋物語と言ってもドロドロの愛憎劇でもなく、燃え上がるような恋物語でもなく、どこか淡々とした恋。 だけど、ビターな大人の恋。普通にありそうだから、ついつい吸い込まれてしまう。 阿刀田作品を読んでいつも思うことだけれど、凄いインパクトがあるわけじゃないのに、どうしてこんな に読後感が素晴らしいのだろう。文章からα波が出てるんじゃないだろうか。 本書での僕のお気に入りは、【知らない癖】という作品。 朝子という成績優秀、器量よしの大学のマドンナとそれを囲む男たちの物語。主人公の男が大学時代を振 り返りながら現在の朝子や友人たちの様子と自分の環境を語っていくのだが、最後の最後に主人公はある ことに気がつく。朝子と寝た男はみんな・・・。 よくある話ではあるが、なぜか引き込まれてしまう。阿刀田さんの文章ってのはつくづく不思議な魅力を 持っているなあと感心してしまうのであった。
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