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Posted by ブクログ
◇あらすじ◇
心躍るようなときめきはなくとも、穏やかな夫婦関係に満足していた妻。
しかしその妻の考えは、ある事故をきっかけに一変する。
事故で意識がもうろうとする中、信じていた夫に浮気を告白されるのだ。
変わりゆく夫婦関係、そして妻と夫の心の揺れ動きを繊細描いた作品。
◇感想◇
感情の捉え方が繊細で女性らしく、美しい作品だなと思いました。
もっと暗くドロドロした感じを想像していたのですが、案外さらっと読めます。
メインは妻と夫の関係、そして妻と娘の関係。
どちらもどことなく納得できてどことなく納得できない考え方が浮き彫りにされちて、非常に興味深く読み進めることが出来ました。
表題以外では気になったのは「海豚」。
少し前に非常に話題になったイルカ漁の問題について言及した作品で、kの問題の難しさが叙情的に描かれています。
もし時間があれば、一度手にとってもらいたい作品です。
Posted by ブクログ
印象的だった一節。
おそらくこの作品の主題を端的に表した部分である。
昨日本を返してしまったので、文言ははっきり覚えていないのだけど、夫婦のこのような会話を空を眺めながら妻が回想する場面。
―人類はどうしてこの空にロケットを打ち込むのだと思う?
―他の星に生物が住んでいるかを確認するため?
―他の星に生物がいないことを確認するためだよ。
―同じことじゃないの。
―前者と後者じゃ大きく違う。人類は自分たちより優れた存在が在ることを恐れているんだ。つまり嫉妬なんだよ。
しかし、元々知らなければ嘆くこともない。
「何かいる」んじゃないかと疑うから不安になるのだ。
この物語は夫の突然の告白で夫の愛人の存在を知る。知らなければ何事も上手くいっていたわけだが、「知」ったことによって夫婦間に亀裂が生じる。
相手はどんな女性なのか、自分の知っている女性なのか、自分より若いのか、仕事をしているのか・・・。
妻は夫を問い詰め、それを聞いてまた苦しむ。
夫は妻の苦しむ様を見て、告白したことを後悔するが、告白したことで居直り、彼女の存在を暗黙の了解に入れていく。
愛人は恋人との秘密を共有していたと思っていたが、突然の告白によって秘密は破られ、恋人は妻を共犯に選んだのだと感じる。
夫の助けた青年が言う。
―それじゃ、どんな人でも気に入らないよ。自分より年上でも気に入らないし、仕事をしていなくても気に入らない。
ここはかなり的を得ているように思う。結局どんなに尋ねたって知らないのだから、自分より優れているように感じてしまう。
ここの台詞の切れ味に少し感動した。
大人の小説である。
同書の巻末解説で島村洋子氏が興味深いことを書いていた。
源氏物語に寄せて、この夫は誠実な夫である、と。
誠実故に愛人の存在を明かし、秘密は愛人とではなく妻と共有したというのだ。
源氏はその都度、自分の通じた女性の話を紫の上にしていた。それは源氏の誠実さだった。
しかし、ただ一度、明石の君と結ばれ、明石の君が懐妊したことを黙っていた。
そのことで紫の上はひどく苦しむこととなる。
それは夫が浮気して子供まで作ったからではなく、秘密を共有できなかったからである。
現代に生きる私には到底理解が及ばないが、愛人の側からすれば、恋人と二人だけの秘密を共有したいと思うのだから、その美学もあながち間違いではないのか。
世の愛人、セカンドの中には、「自分の存在を恋人の妻(もしくは本命の彼女)に知らしめたい」と単純に思う者も多いだろうが、恋人と二人だけの秘密を共有したいと考えている者も多くいるのではないだろうか。と島村氏は言うが、むしろ後者の方が多いように思う。
私なら間違いなく後者である。
誰にとっても未知の存在は恐れを伴うものである。
存在しないと思ってもらいたいのなら、完全に隠し通す。恋人ではなく妻(本命)と共犯になりたいのなら、全てを明らかにしてしまう。
疑われながらも密会を重ねるのが一番苦しいのではないか、と思った。
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