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Posted by ブクログ
物心ついた時から、夕方という時間帯は怖かった。明るくもなければ暗くもなくて、あの薄暗さが不気味で大嫌いだった。緊迫感、焦燥感、迫りくる何かへの言いようのない不安な気持ち。夕方になると、部屋の明かりは必ずつけていないと落ち着かない。
まさかその夕方に、わたしの中で懐かしいという感情が芽生えるなんて、あのころは思いもしなかった。
街がオレンジ色に染まると、気分がどうしようもなく塞ぐ。ただただ悲しくて、気がついたら声も立てずにぼろぼろ涙が溢れてきていることも度々あったし、計り知れない絶望感のようなものが押し寄せてくることもあった。
どうしようもない孤独感、終わりゆく一日を悟っての虚無感、襲いかかる自己嫌悪。そして、毎日がそれの繰り返し。
小学校高学年のころ、この本に出会った。スタジオジブリによって映画化されるとの告知があり、内容がうろ覚えだったので、もう一度読んでおこうと、去年の春ごろに再び手にとった。
まるで目の前に浮かび上がってくるように描かれた情景描写。夕方の海の満ち干が、繊細に美しく書かれていて、その場面だけはあの当時から今でも、くっきりと鮮明に頭の中に焼きついているのだ。
この本を読んで以降、わたしの夕方への感情はガラリと変わった。切なくて寂しくて、それだけが襲いかかってくる夕方。黄金色の夕陽が、目にしみるほど迫ってくる。あまりにも美しすぎて、怖いくらいだった。逢魔時、なんて言葉があるけれど、この時間帯は本当に未知で何か、別の次元に引き込まれ連れ去られてしまうような……そんな不思議な何かがある。
西陽が傾きはじめ、オレンジの光が街に降りそそぐ。そんな時ふと、今やもうない失くしてしまった何かを思い出しては、この夕方のベールのどこかに、わたしの探している場所があるのではないかと思ってしまう。
夕方が怖いのは、もう戻れないことを心のどこかでは知っているから。わたしを待つ人などいないと分かっているから。もう帰れないと気づいているから。そうしてわたしは、そういう大事な感情を消えてゆく夕闇の狭間に置いてけぼりにして、忘れてゆくのだろう。
Posted by ブクログ
イギリス児童文学でもあり、以前から読んでみようと思っていた作品の一つであったことを、ジブリの最新作の特集(月刊MOE)で思い出し、ようやく手にした。題名も『思い出のマーニー』でしたが(笑)原作タイトルは“WHEN MARNIE WAS THERE”
岩波少年文庫では、上下巻に分かれているので、感想は、こちら下巻の方に。
物語は、養父母の元を離れて、ひとり転地先に向かうアンナの列車旅から始まる。ここで、心を閉ざした感のある孤独なアンナの思いといきさつが少し語られ、後書きで訳者の松野正子さんが、この出だしがとっつきにくいのでは案じていらしたが、心象的にも深みのある作品らしいと感じた。
アンナは、常々、他の人たちが興じたりする物事の“内側”の輪に入れない“外側”の、いわば疎外感を持っていたが、周りの大人からは、“やってみようともしないこと”(意欲のなさ?)など問題視されており、喘息を起こした後の転地であった。
行先は、養母の友人夫婦が住むノーフォーク州、海辺の村。アンナは、その入り江の湿地に佇む古い屋敷の裏で、誰も知らない金髪のマーニーという不思議な少女と出会い、友だちになるのだが…。
この物語のクライマックスとなる風車小屋での出来事からの後半、下巻に入って、物語は一気呵成に面白くなる。マーニーに置き去りにされたと思ったアンナが、その後、だんだん現実の生活感と人々にもなじみ、物語の伏線から謎ときの形で、マーニーの秘密を知り、やがて気がついてみれば、身丈だけでなく、心的にも大きく成長し、自身も、周りの世界の感じ方も変わっていたのだった。
私も、気がつけば、あっというまに読みおわり、イギリスの風土に根ざした素晴らしい物語を味わえた。
ちなみに、岩波少年文庫の挿絵のペン画は、パディントンでもおなじみのペギー・フォートナム。
ジブリのマーニーも素適な出来上がりだったそうですが(家族談)、やはり、活字=原作を読むのが好きな私です(笑)
Posted by ブクログ
とある出来事から心を閉ざしがちになった少女の成長の物語。
とても面白かった!
上巻を読んだ時に、表現面(情景、心理描写など)がいいと思っていた。
しかし、最後まで読んでみて、ストーリーの質も高いことが解った。
大人であっても十分楽しめるものになっている。
(逆に言えば、児童文学としては、若干難しいかもしれない。)
このような素晴らしい作品を読めたことは、原作者はもちろん、翻訳者の力量によるところも大きい。
ありがとうございました!
映画を見る予定がある人は、映画の後に読んでみるといいかも知れない。
映画とはひと味違った角度から、再び思い出のマーニーを楽しめると思う。
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