グレーフェンベルクは、ヴァギナ前壁で最も感じやすいのは、内部に三~四センチ入った部分で、ちょうど尿道が膀胱の出口に達するあたりだということを発見した。これが三〇年後に名前を付けなおされてグレーフェンベルク・スポット、通称Gスポットと呼ばれるようになった部分で、『Gスポットほか、人間のセクシュアリティに関する発見( The G Spot and Other Discoveries About Human Sexuality)』というベストセラーのなかでほめたたえられている。
ここで言う「別のもの」とは最新の医学器具のことだった。バイブレーターである。レイチェル・メインズの『オーガズムの技術:「ヒステリー」、バイブレーター、女性の性的満足( The Technology of Orgasm : Hysteria, the Vibrator, and Women's Sexual Satisfaction)』という本で美しく紹介されたバイブレーション・セラピーは疲れた医師たちの祈りに応えるものだった。蒸気、水力、足踏み、そして、一八八三年からはイギリス人医師で発明家のジョゼフ・モーティマー・グランヴィルのおかげで電力式になったバイブレーターが、医師と患者が求めていた救済を与えたのである(図7-2参照)。今や女性のオーガズムはスイッチ一つで手に入ることになった。その商売は急激に発展したようだ。一八七三年、アメリカの「医療の四分の三以上が女性特有の病気に専念し」、「医師が女性に感謝しなくてはならない」収入の総計は一億五〇〇〇万ドルに達したと見られている。一九世紀の末にはオーガズムのためのマッサージが医療の主要な部分を占め、週に一度ずつ「治療に」通うように勧める医師もいたのだから、その金額も不思議ではない。儲かる商売だったのだ。