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ムバーラクの三〇年にわたる独裁は、二〇一一年、民衆による「一月二五日革命」で幕を閉じた。しかし、その後の民主化プロセスの中で、軍とムスリム同胞団が熾烈な権力闘争を展開し、革命の立役者である若者たちは疎外されていく――。エジプトの民主主義は、どこで道を誤ったのか。アラブの盟主エジプトが迷走した、二年半におよぶ歴史上の劃期を、軍・宗教勢力・革命を起こした青年たちの三者の視点から追う。
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Posted by ブクログ
アラブの春の波がエジプトにも押し寄せ、ムバラク打倒のデモが始まった2011年1月から、ムルシーが大統領を追われムスリム同胞団が解散される2013年9月までの2年半を丹念に描いたルポです。 それにしても、エジプトって軍の影響力が強烈なんだねぇ。軍は政治経済を支配しているのに、一方で大統領と対抗しており...続きを読む、国民からは味方だと認識されているという、まさに得体のしれない組織だという事がよくわかります。そして、その軍には毎年13億ドルがアメリカから供与されていること。 また、同じイスラム諸国の中でも同胞団を支援する国、軍を支援する国があり、事態を複雑化させています。 イスラエル・パレスチナに隣接し、スエズ運河を握るエジプトの地政学的重要さがよくわかります。 何より驚きなのはムルシーがアメリカの大学を出て、アメリカの国籍も持っているという事。 それにしても、理解が難しいのは、選挙で選ばれたムルシーが「民主的勢力」で排除されるという矛盾。これについて著者は、多数決を是とする限りイスラム勢力が権力を握ってしまう政治の現状。これに対して「民主派勢力」は多数決をとらない民主主義を目指すと指摘しています。欧米流の「民主主義」が必ずしも幸福をもたらさないという現状を思い知らされました。
[高揚、悲憤、そして苦悩]全世界を驚嘆せしめた2011年の革命の後、政治的にも経済的にも混乱に陥ってしまったエジプト。希望に満ちた革命はどのような道筋をたどっていったのか、その過程で軍やムスリム同胞団、そしてリベラル勢力は何を重要視し行動したのかについてまとめた一冊です。著者は、東京外国語大学アラビ...続きを読むア語学科を卒業後、中東調査会客員研究員として活躍されている鈴木恵美。 情報が錯綜し、まさに現在進行形でエジプトの政治情勢が刻々と変化する中において、極めてスッキリと、エジプトが革命以後に歩んだ道筋を提示してくれているように思います。多くの利害関係者の思惑が交錯する中で革命の対立軸が目まぐるしく移り変わっていったことが本書から想像できるかと思います。それにしても本当に急速に物事が展開したんだと改めて驚きとともに実感。 エジプトをこよなく大事に思う著者故でしょうか、一方向からの評価を避け、適度に距離を取りながら俯瞰した目線でこの革命を眺めたことにも好感が持てました。私もエジプトの首都であるカイロで留学をしているのですが、鈴木氏が本書の最後をこのような「柔らかな」言葉で締めくくったことに深い共感を覚えます。 〜エジプトはこれからも数多くの試練に直面するだろう。しかし、どのような難局にあっても、蛇行しながらも悠久の流れをたたえるナイルのように、寛容さをもって進んでほしい。〜 大統領選挙も間もなく実施されます☆5つ
エジプト軍、ムスリム同胞団の司法を巻き込んだ権力闘争と駆け引きが凄まじかった。その中で民主化の舞台から消えてゆく青年達、理想だけでは生き残れない考えさせられる本でした。事前に治安部隊の介入が予想されたナダフ広場やラバーア・アダウィーヤの惨劇は軍の暴走か人間の盾だったのか気になります
20140201〜0224.エジプトのムバラク政権崩壊からムルシー政権崩壊までを、生々しく書いている。
2011年1月以降、 今に渡るまで混乱するエジプト革命の様子を解説する一冊。 外から得られる情報をもとに、 複雑な情勢をよくまとめており、わかりやすい。 2013年夏の出来事までをまとめているため、 早く読めば早く読むほど価値は高まる。 軍部、同胞団、青年らという団体ではなく、 そこにいる個々人の思...続きを読む惑や欲、駆け引きを紡ぐ 評伝の登場が待たれる。
最も新しいエジプトについての状況の変化を書いたものである。エジプト革命について論文を書くときには少しは役に立つであろう。
アラブの春以降、同胞団政権が転覆されるまで、2011年1月25日から2013年6月30日の間にエジプト国内で何が起きたのか、現地での生活を通じた生の実体験をベースに解説した新書。ムバラク失墜までエジプトに根付いてきた負の遺産も簡潔に説明されており、同国の現状を理解するには非常に良書となっている。 ...続きを読むアラブの春以降、エジプトで主に活動していたのは3つのアクターであり、それは軍部、同胞団、青年勢力であった。1月25日の革命を主導したのは青年勢力であったが、それを完成させたのは軍部であり、この大衆中産革命とクーデターという二つの側面を有していることが、その後のプロセスを複雑にしたと、筆者はいう。 実際に、3者はそれぞれデモクラシーの実現を掲げながらも、その意味するところはそれぞれに異なっていた。そして、一旦は身を引いたと思われた軍部が、したたかに同胞団の政権担当能力不足を目立たせ、そこに反発する青年勢力を味方につけて、最終的に6月30日のクーデターにつながったのである。 一年という短命に終わった同胞団の統治には、当然彼らの責めに帰するものとそうでないものがある。大幅の賃上げや負債の解消などのポピュリスト的政策は国内経済を著しく混乱させたが、ムバラク時代から受け継いだ慢性的問題は1年で解決できるものでは到底ない。そのような問題以上に、同胞団の急激な勢力拡大が社会の反発を産んだこと、そして軍に対する手綱を締め続けることができなかったことが、彼らの統治に終止符を打ったのである。 しかし、著者は最後にこのように警告している。 「多数決によって物事を決定する民主主義の欠点を克服するために、軍部によるクーデターという民主的手続きを踏まない手段を選んだことは、今後大きな「つけ」となって彼らの上に重くのしかかるに違いない。エジプトの未来を担う若者は、これからも様々な矛盾と葛藤しながらも、自分たちの民主主義を模索していくことだろう。」 後者は「エジプト型の民主主義はなにか」を探していくという、ある種ポジティブな締めくくりだが、前者の警告は傾聴に値する。慢性的な苦しみを避け、短期的な解決策を選んだことは、同国の将来において大きな変化が生まれる際に弊害となって人々の記憶に蘇ることだろう。
【帯】 エジプトの盟主エジプトが迷走した、二年半におよぶ歴史上の劃期を、軍・宗教勢力・革命を起こした青年たちの三者の視点から追う。 《第1章 革命のうねり》 <1. 政権崩壊までの18日間> <2. 革命の2つの顔> 【大衆中産革命】p21 海外の研究者の中には、エジプトの1月25日革命の本質を、...続きを読む革命のレボリューションとクーデターを合わせて、クーボルーションと評する者もいる。 【軍部によるクーデター】p26 すなわち、体制の維持を目論む軍部、政権の獲得を目指すムスリム同胞団、そして命を賭してムバーラク政権を崩壊させたと自負する青年勢力という三者の思惑が、民主化の名のもとで真正面から衝突したのである。 《第2章 将校たちの共和国》 <1. エジプトの真の支配者> <2. 軍事共和制の成立> 【ナセルが築き上げたもの】p26 ナセルは、帝国主義と戦いアラブ民族主義をアラブ地域に広めた英雄という評価がある一方、国内では反体制派を徹底弾圧し、抑圧的な体制を作った毀誉褒貶相半ばする人物であった。 <3. サダトによる脱ナセル化政策> <4. 体制転換を試みたムバーラク> <5. ムバーラクから離れた軍最高評議会> 《第3章 自由の謳歌》 <1. 取り戻した大国としての自信> 【二つのナショナリズム】P67 自信の復活とともにエジプト国民が併せ持つ二つのナショナリズムも昂揚した。 ①エジプトという領域に限定されたエジプト・ナショナリズム(ワタニーヤ) ②アラブ地域を領域としたアラブ民族主義(カウミーヤ) 〈2. 筋書きのない民主化プロセス〉 《第4章 ポスト・ムバーラク体制の土台作り》 〈1. 新体制への地ならし〉
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エジプト革命 軍とムスリム同胞団、そして若者たち
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