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IT技術一つとってみても、米国を震源とするグローバリズムは強大な力を持つ。66億以上に人間が暮らす広い地球といえども、やがてどこもかしこも同じようになってしまうのではないか懸念もされている。だが「米国もone of themにすぎない」と気付くならば、世界は今までとは違う、多様性の宝庫=深い森に見えてくる。いま何を大切なものとして生きるべきなのか。横断する知を生きる、脳科学者が見つめた現代と未来とは。
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Posted by ブクログ
世の中の多様性の大切さを脳科学に基づいて説明している。自然科学と社会科学の接点が脳の研究のなかにある。一度読んでも理解できるところは一部なので、そのうちまた読み直してみようと思う。
中央公論での2007年連載「新・森の生活」の単行本化。 いくつか他の著書で披露された内容と重なる箇所もありますが、「多様性」に焦点を絞って論じているので別の角度から読めました。
『疾走する精神――「今、ここ」から始まる精神』(茂木健一郎、2009年、中公新書) 20のトピックに関する茂木さんの詩であり、語り。 たんたんとつづられているが、美しい。 それでいて本質をつくようなするどい洞察。 茂木さんの教養の深さと膨大な読書量が伝わってくる。 けっしてひけらかしではないのは...続きを読むなぜだろう?不思議と嫌味ではない。 読み物としてもおもしろいし、 考え方を学ぶ書としての良いと思う。 (2009年9月16日) (2010年4月6日 大学院生)
本書は脳科学者の茂木健一郎氏が雑誌「中央公論」に連載したエッセイを纏めた書籍である。そのタイトル「新・森の生活-多様性を科学する」の下に、様々なテーマについて筆者の考えを述べていくものである。私の様な中途半端な学しか持ち合わせない人間にとっては、一つ一つのテーマに対し、如何に人間が深く考える事が可能...続きを読むであるかをまざまざと見せつけられるようなものであるが、実に納得のいく考え方に、読み手の私の頭の中のモヤモヤがまるで霧が晴れるかの様にクリアになっていく。その根底にあるのはやはり人間の脳の構造であり、それが生きている間、偶然の重なり合いにより常に変化をしていくという事実である。読んでいる私の中で、いつの間にか筆者と同じ様に、次の展開や結果を共に考えている様な錯覚を覚える。 私が幼少期の頃によくぼんやり考え、長年謎だと想っていた事がある。今私に見えている風景を織りなす色は、他人には何色に見えているのだろうか。私が緑色だと想っている色は、実は「私以外」の人間にとっては、全く別の色に見えているのではないか。何故なら私の目は日本人にしては茶色過ぎたから、よく友人から揶揄われていた。人とは違う目の色ならきっと見えている色も違うのだろうと思ったのだ。青々とした木々に美しさを感じたり、夏の夕方に鳴くヒグラシの声の美しさ、もう少し現代的にテレビから聞こえてくる歌手の歌声すらも、私と私以外の人では違ったものに聞こえているのではないか。こんな思いが頭の中をぐるぐると巡っていたものだ。結局見ているものは私の目から入った情報だし、目を閉じれば、普段は気にしないような音が耳から入ってくる。そして鼻からは雨が降った後の土の匂い。全て外部から入ってくるもの、色や音や匂いを「私が思うそれ」と決めているのは、間違いなく私の意識であり、脳の中の解釈だ。頭の形も脳も完全に同じ人間などいないのだから、他者は全く違う解釈と認識をしているだろうと、ずっと考えていた。そして美しい、心地よい、楽しいと感じる沸点の様なものが、人それぞれ違うのは、きっとそうした頭の中の解釈し理解する構造がそれぞれ違うからだと思っている。現在進行形で記載するのは、未だそうやって自分の目に映る美しい花や空の色を見ながら、どこかいつも、隣で見ている人との感覚の違いを意識してしまう事があるからだ。 医学の発展と技術の進化により、脳の構造が明らかになった今も、そうした人間の意識、特に行動や感情に結びつくプロセスが全て明らかになっているわけではない。それが機械的になされる事ならば、人間はいつも同じ行動しかとれない。実際は私が美しいと感じる花を見た後の、同じものを見た人々の反応や、その行動に何一つ完全に一致するものなどない。人々の次の行動を完全予測することは不可能であり、その行動パターンは無限大だからだ。それは翻って自分の行動と未来に無限の可能性を与えていると思う。私が今この書籍を読んで次にどの様な行動をとるか(今はこうして感想、というよりも今頭に思い浮かんだ事をただ書き連ねるだけだが)、誰1人予測出来ないし(何を書くかまでは)、私ですら理解できていない行動かもしれない。私が明日会社を辞めて独立するかもしれないし、相変わらず同じ机に向かっているかもしれない。未来を作っているのは間違いなく自分自身であり、人々が言う成功か失敗かなどは私以外に判定しようがない事も知っている。 そんな私の頭の中をぐるぐる引っ掻き回す一冊だ。
すこしむずかしいところがあったのですが電車の名なかでも集中して読んでいたら、ずーっと読んでいなきゃいけないといって前に座った学生さんは下りてゆきました。 とてもいいほんです。
「絶対」という言葉の意味を、この本で初めて知った。 「絶対」といってしまうと、人によって違うから「絶対」なんてない、という反論が必ずだされる。しかし、たとえば、音楽を追求するのならば、自分にとっての「絶対的音楽基準」はあるわけで、<「絶対」とは、一個人にこそふさわしい概念>に深くうなづいた。 よ...続きを読むうは、真実というのは無数にあるが、自分の真実の方向は、やっぱりひとつなのである。
偶有性の海に飛び込めというメッセージが心に響いた。 持続可能性の中にある多様性を保つことが、これからの世界を形作っていくために大事だとあった。 真·善·美に通じる本物の知性を持って、グローバル化するインターネット社会にうまくのっていきたいと思った。
「グローバリズム」「無限」「アカデミズム」「多世界解釈」「音楽」など、20のテーマについてのエッセイです。 われわれを取り巻く世界は、たえまなく変化しつづけており、無限の多様性に満ちています。われわれの脳は、こうした世界からやってくる情報の海のなかを泳ぎわたっており、こうした世界のかぎりない豊饒性...続きを読むをあじわうことが大きな喜びであることはたしかでしょう。本書で著者が説いているのは、固定したものの見かたにとらわれることなく、豊饒な世界を駆け抜ける「疾走する精神」のありようです。 ただし、たえず変化しつづける世界のなかで、どこまでも自己を拡散させて自己を見うしなってしまってもいけないと著者は考えます。贅沢な「源泉かけ流しの温泉」のような情報の海のなかで出会われるさまざまな知の萌芽を凝縮し、あたらしいものを生み出すことに努めなければなりません。そうした経験のありようを教えてくれるのが、優れた芸術だと著者はいいます。優れた芸術に触れることは「絶対」的なものを経験することであり、そうした経験はたえず新しいものへと移っていく宇宙のなかで結晶化された「奇跡」のようなものだと述べられています。 こうした著者の議論に対して、脳や宇宙についての恣意的なイメージを振り撒いているだけだと批判する向きもあるかもしれません。ただ個人的には、人間の精神のポジティヴなイメージをえがき出すエッセイとしておもしろく読みました。
茂木氏の著述は、常に力強い。時に煽動的な部分があるが、引用や経験則からくるロジカルな論述は好きだ。 森の生活とパノプティコンによる現世の描写、「絵画の前に立つとき」でうたわれる美術と対話、本物の知性について言及した末巻での「運命の女神の着衣の袖に」、どれも下手な作家よりも端的で印象的。
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