無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
夢枕獏『黒い陰陽師』文春文庫。
『陰陽師』シリーズ史上、最もダークな陰陽師である蘆屋道満を主人公にした短編集。10編を収録。
『陰陽師』シリーズは『瀧夜叉姫』辺りまでしか読んでいない。夢枕獏の小説自体は好きなので、『陰陽師』シリーズの新刊が刊行される度に横目で見ていた。
自分は想像力が乏しいせいか、高校時代から日本史や世界史が苦手で、どうも安倍晴明の頃の時代小説というのが苦手なのだ。
安倍晴明よりも歳上で、陰陽師の腕は同等と言う蘆屋道満。安倍晴明が清流であるならば、蘆屋道満は濁流と全くの正反対なのである。陰と陽、表と裏、男と女、明と暗、世の中は全て二律背反で成り立っているのだ。陰陽師のドーマンセーマンのドーマンは蘆屋道満、セーマンは安倍晴明に由来するのだろう。
『道満、酒を馳走されて死人と添い寝する語』。蘆屋道満はダークな陰陽師というより無辜の命を救う優れた陰陽師として描かれている。幼い頃から身体が弱かった橘琦麻呂だったが、『観音経』をとなえるようになると普通に生活出来るようになる。妻を迎えて子供も授かった琦麻呂だったが47歳の時、転んだ拍子に顎が外れて3日後に命を落とす。そこに現れた汚らしい身なりをした老人こそ陰陽師の蘆屋道満だった。
『牛怪』。蘆屋道満も登場するが、奇々怪々をの怪異を解決したのは安倍晴明と源博雅のコンビ。検非違使の役人である橘貞則は破れ寺で身体を休める、やんごとなき身分の女性と老女、2人が連れた牛を目にし、2人に声を掛ける。幡音という女性は行く当てが無く、老女、牛と共に貞則の屋敷に住まうことになる。しかし、夜な夜な幡音が何処かに出掛ける様子で、貞則が不思議に思っていると蘆屋道満という陰陽師が声を掛けて来た。
『夜叉婆あ』。蘆屋道満のダークぶりが窺える短編だった。夜の山路を何者かから逃れるように必死に走る多人と真人の猟師の兄弟は明光寺という破れ寺に駆け込む。そこで声を掛けて来たのは陰陽師の蘆屋道満だった。
『仙桃奇譚』。蘆屋道満の酒好きは様々な怪異を呼び込むようだ。何と孫悟空の逸話が描かれるとは。もと仏師で現在は猟師を生業にする明念には病弱の真足という息子がおり、最近はすっかり食が細くなり、衰弱していた。ある日、明念は秋にも関わらず、山に桜が咲き誇る木を見付ける。その幹は仏のようにも見え、幹にある穴の中から桃の実を見付ける。
『山神の贄』。山の魔物でさえも操る蘆屋道満の恐ろしさが窺える。絃という女が独り山道を歩いていると鹿麻呂、蛭丸、熊男の3人の盗賊が現れる。絃を救ったのは陰陽師の蘆屋道満であった。
『筏往生』。昔も今も仏の御心は時に残酷である。山中で酒の匂いに釣られた蘆屋道満は炭麻呂という男と出会う。炭麻呂は山で上人様の有難い言葉を聞き、嬉し涙を流していた。
『産養の磐』。かつて日本にも狼が居たようだが、海外の狼などと比べるとかなり小さい。今でも秩父山中では狼の生き残りが居るといった噂はあるようだ。赤子を宿した女が独り旅の途中で山中で道に迷う。女は山の中で大きな岩の傍らに漆塗りの箱を見付け、その中に入っていた5つの餅にあり付く。女がしばらく歩くと里に辿り着き、民家に助けを求めると餅を全て食べ尽くしたと聞いた村人はその女を餅の代わりに灰坊様の生贄にする。
『狗』。動物に好かれる人間もあれば、嫌われる人間も居る。自分は驚くほど動物に好かれる。牧場に行けば、多くの馬が寄って来る。フラミンゴで有名なレストランのメヒコで食事をすると全てのフラミンゴが集まって来た。ヤギが放し飼いにされている山中の施設に行った時には3頭のヤギが走り寄って来た。他にも犬や猫には好かれるようだ。ある屋敷に仕える女の童は飼われている狗に吼えかかられ、襲い掛かろうとされる。以来、その女の童と狗とを引き合わせないようにしていたのだが……
『にぎにぎ少納言』。自分のベッドには夜な夜な黒ギャルならぬメスの黒猫がやって来る。昨夜は午前2時から1時間起きにやって来て、撫でろ撫でろとせがみ大変だった。少納言の坂上彦摩呂は夜になると白い衣の女が来て右手を噛むので困っていた。そんな少納言のもとに現れた蘆屋道満は酒を馳走になる代わりに少納言を助けると言う。
『道満月下に独酌す』。風流でありながらも、怪異を感じさせる掌編。巨大な楓の古木の前で萱鼠に舞を踊らせ、独り酒を飲む蘆屋道満。道満は何処からか女まで呼び寄せ、酌をさせる。
本体価格780円
★★★★★
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。