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Posted by ブクログ
別の作品目当てに買って、つまみ読みしていた文學界2026年6月号。芥川賞候補作の中にあった本作が、その号に掲載されていると知ってダンボールの中から引っ張り出して読んだ。
妊娠をきっかけに、夜の街を歩きながら自身の過去を振り返る主人公・茜。
夜というのはなんだか色々考えすぎてしまう。それこそ見通しのよくない夜道をふらふらと歩いていくみたいに過去を遡って考えたりして、なぜ自分はあんなことをしたのか、とか思う。うじうじと悩んでいるうちに朝が来て、太陽が空の色を黒から白、白から青へと変えていく。それにつれて頭の中に黒く立ち籠めてた悩みも薄まっていく。みたいなことはよくある。
そんなふうにして考えるのはたいていはちっぽけな悩みだけど、本作で扱われるのは、妊娠(命)と、それに伴い思い返される自身の過去の過ち。けどそんな重いテーマでさえ、他人から言わせれば、そんなに考えすぎないで良いんだよ、ということもあるんだと思うと救われる。
でもそんな救いも一瞬のもので、夜が来ればきっとまた人間は悩みの中を彷徨い歩く、というのを繰り返す。
僕自身も、悩んだり落ち込んだりしたとき、家でじっとしていられなくて散歩に出かけることがある。自身の過去に罪の意識を持ち、夜の街でもがく彼女のことが愛おしく思えた。
Posted by ブクログ
若くて稼ぎが少なくて優しい男。
百戦錬磨のお姉さんにこの男の子が太刀打ち出来るのか。
そしてお姉さんがこの男の子で満足できるのか。
和やかな2人のお食事シーンになぜか緊張を覚える。
数々の武勇伝を想起しつつ、産院で採血した、きっととんでもない結果を叩き出すに違いないヤバい血を奪還すべく、素足にサンダルで足を擦りむきながら歩く。
お姉さんのお父さんが言ったように罰せられるとは思わない。
だって、うちの子供は無事だ。
自分の罪が子供に引き継がれるなんてことがあったら大ごとだ。
最後に下腹部から出たものは不正出血か流産か。
妊娠継続なら血液はどうしよう…と、まだ奪還を考えているお姉さんが可笑しい。
なるようにしかならないのだから、ヤバい血を引っ提げて堂々と妊娠し出産したらいいのにさ。
Posted by ブクログ
思いがけず妊娠したものの、過去の自分の悪行が脳裏をよぎり、産科でおこなわれた採血の結果に不穏なものを予感する女性の話。
妊娠中の変化や感情の機微が描かれるものだと思い込んでいたが、血液を奪還するため病院までの夜道を彷徨いながらの回顧がメインだったのが意外。
お父さんとの会話のシーンと、かつての悪友が連れ戻しに来てくれたシーンは好きだし、読後感は良かった。
ただ、この主人公が世界を否定するのだけは違うと思う。身籠ったタイミングで、ほんとはきっとそのようにしか生きさせてくれなかった社会が悪いって言いたくなったのかもしれなくて、それを言わないだけの知性は感じた。
別に罪も罰もないと思う。ただの愚かな過去があるだけで。
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