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第175回芥川賞候補作
「私がこれまで何も選ばずにいようとしていたのは、選んだその瞬間に過去を罰せられる気がして怖かったからだ」
奔放に生きてきた私の身体に突然つきつけられた衝撃。採取された血を取り戻しに、ビジュー付きのサンダルで病院へと向かう私の中に、過去のさまざまな行いがよみがえる。
圧倒的な「罪と罰」の物語。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
別の作品目当てに買って、つまみ読みしていた文學界2026年6月号。芥川賞候補作の中にあった本作が、その号に掲載されていると知ってダンボールの中から引っ張り出して読んだ。
妊娠をきっかけに、夜の街を歩きながら自身の過去を振り返る主人公・茜。
夜というのはなんだか色々考えすぎてしまう。それこそ見通しのよくない夜道をふらふらと歩いていくみたいに過去を遡って考えたりして、なぜ自分はあんなことをしたのか、とか思う。うじうじと悩んでいるうちに朝が来て、太陽が空の色を黒から白、白から青へと変えていく。それにつれて頭の中に黒く立ち籠めてた悩みも薄まっていく。みたいなことはよくある。
そんなふうにして考えるのはたいていはちっぽけな悩みだけど、本作で扱われるのは、妊娠(命)と、それに伴い思い返される自身の過去の過ち。けどそんな重いテーマでさえ、他人から言わせれば、そんなに考えすぎないで良いんだよ、ということもあるんだと思うと救われる。
でもそんな救いも一瞬のもので、夜が来ればきっとまた人間は悩みの中を彷徨い歩く、というのを繰り返す。
僕自身も、悩んだり落ち込んだりしたとき、家でじっとしていられなくて散歩に出かけることがある。自身の過去に罪の意識を持ち、夜の街でもがく彼女のことが愛おしく思えた。
Posted by ブクログ
学生時代、ゼミの教授がこんなことを言っていた。
「あなたたちの先輩でね、性に奔放な女学生がいたんだけど、結婚して妊娠したの。その時に会いにきて旦那じゃなくて過去に遊んできた男の誰かに似てたらどうしようって相談してきたのよ」
そんなこと、あるわけないだろ。
その時の私はそう思った。
そして今。
現在に至るまで。
性に奔放だったのは私も同じ。
将来を考える相手と将来の話をする。
子供ができたらなんて話をする。
その時に思うのだ。
今までの私の行いのせいで、将来の子供が
不完全だったら、どうしよう。
本作「悪い血」は、
性に奔放な主人公が妊娠したことで、過去の自分の行いを思い出す物語だ。
後悔とかではない。
ただ男と女という関係性の中にある「性」は
軽率に求め合うくせに、その先の結果は一生を左右するものだ。
愛だとか、性欲だとか。
そんなよく分からない概念の先に、
現実的な『命』が宿る。
急に圧迫される腹。
ずっと気怠い感覚。
そんなものを感じれば感じるほど、
過去の行いの全てが降りかかるように思える。
文章が長く、たまに目がさらさらっと
文字を読んでしまったけど、常に主人公の頭の中を読んでいるようだった。
主人公は常にどっちつかずなのに、
罰せられるべきどと怯えている感じが
文章から伝わる物語だった。
Posted by ブクログ
若くて稼ぎが少なくて優しい男。
百戦錬磨のお姉さんにこの男の子が太刀打ち出来るのか。
そしてお姉さんがこの男の子で満足できるのか。
和やかな2人のお食事シーンになぜか緊張を覚える。
数々の武勇伝を想起しつつ、産院で採血した、きっととんでもない結果を叩き出すに違いないヤバい血を奪還すべく、素足にサンダルで足を擦りむきながら歩く。
お姉さんのお父さんが言ったように罰せられるとは思わない。
だって、うちの子供は無事だ。
自分の罪が子供に引き継がれるなんてことがあったら大ごとだ。
最後に下腹部から出たものは不正出血か流産か。
妊娠継続なら血液はどうしよう…と、まだ奪還を考えているお姉さんが可笑しい。
なるようにしかならないのだから、ヤバい血を引っ提げて堂々と妊娠し出産したらいいのにさ。
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