無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
1948年6月13日、太宰治が情死する。逸早く知らせを受けた安吾は、その死に何を見たか。太宰論から文明論に到る圧巻の「不良少年とキリスト」。もうひとりの文学的盟友、織田作之助の喪われた才能を惜しむ「大阪の反逆」。戦後の日本に衝撃を与えた「堕落論」で時代の寵児となった著者絶頂期の、色褪せることのない評論9編。二つの「無頼派座談会」と文庫初となる掌篇小説「復員」を特別収録。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
2025/11/27
p.214
「今に、治るだろうと思います」
この若い医者は、完璧な言葉を用いる。今に、治るだろうと思います、か。医学は主観的認識の問題であるか、薬物の客観的効果の問題であるか。ともかく、こっちは、歯が痛いのだよ。
原子バクダンで百万人一瞬にたたきつぶしたって、たった一人の歯の痛みがとまらなきゃ、なにが文明だい。バカヤロー。
女房がズルフォン剤のガラスビンを縦に立てようとして、ガチャリと倒す。音響が、とびあがるほど、ひびくのである。
「コラ、バカ者!」
「このガラスビンは立てることができるのよ」
先方は、曲芸をたのしんでいるのである。
「オマエサンは、バカだから、キライだよ」
女房の血相が変る。怒り、骨髄に徹したのである。こっちは痛み骨髄に徹している。
グサリと短刀を頬へつきさす。エイとえぐる。頭のシンも、電気のようにヒリヒリする。
クビをくくれ。悪魔を亡ぼせ。退治せよ。すすめ。まけるな。戦え。
かの三文文士は、歯痛によって、ついに、クビをくくって死せり。決死の血相、ものすごし。闘志十分なりき。偉大。
ほめて、くれねえだろうな。誰も。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
少年・青年マンガ
小説・文芸
試し読み
小説・文芸
試し読み
小説・文芸
試し読み
小説・文芸
試し読み
小説・文芸
試し読み
小説・文芸
試し読み