少子化に打ち勝った保育園―熊本「やまなみこども園」で起きた奇跡―

少子化に打ち勝った保育園―熊本「やまなみこども園」で起きた奇跡―

小説・文芸
1,760円 (税込)

8pt

4.4

「この園と共に生きていきたいからもう一人産みました」。保育のプロが注目する園は、保育士、保護者、地域住民が子育ての喜びを分かち合う「大きなおばあちゃんち」。常識を超えた遊びと、桁違いの刺激に満ちた日常。“関係性の束”を大切にしたら発達障害が消えた――人生の土台を一緒に育む現場から届ける感動のルポ。

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少子化に打ち勝った保育園―熊本「やまなみこども園」で起きた奇跡― のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    プロローグ
「奇跡」と呼ばれる保育園/保護者が園に集う理由
    第一部 もう1人産みたくなる理由
やまなみこども園の保護者たちが見ている世界
「ずっと子育てをしたい」という親たち/育児にかかわる時間は減っているのか/国の投資VSやまなみパワー

    やまなみカルチャー1 桁けた違ちがいの刺激に満ちた日常がある
全国が注目する子どもたちの圧倒的なパフォーマンス/保育に心を揺さぶるドラマを織り込む/卒園生が何十年経っても忘れられない記憶

    やまなみカルチャー2 地域を巻き込んで冒険する
地域が丸ごと園の庭/常識を超えた遊びが人生で大切なものを教えてくれる/リスクは地域みんなでカバーする

    やまなみカルチャー3 演劇スキルでドラマの質を高める
保育にちりばめられた物語の力
     保護者向けの集まりでも同じだ。ある年の保護者会総会では、職員たち全員がピアノの伴奏に合わせたミュージカルを演じながら、自己紹介をしたことがあった。
     この物語性が及ぼす効果は子どもに対するものと保護者に対するものとで違う。
     子どもに対するものでは、ドラマチックな体験によって成長を加速させる効果がある。
     日々の出来事の中に物語性があれば、子どもはそれに深く没入し、胸を打たれる。それが共感性、感受性、想像力といった非認知能力を育てる。
     前出の風の里でのジョーとの体験でいえば、単にお泊り保育でカレーライスを食べて、広場で遊んで帰るより、ジョーというヒーローに導かれて心から泣き笑いし、最後は先生を救うために全力で戦う経験をした方が、そこから得るものは大きいだろう。
     保護者に対するものでは、園との距離感が縮まる効果がある。
     保護者会総会で職員がずらっと横一列に並んで生真面目に型通りの自己紹介をするより、ミュージカルを演じながら笑顔で一人ひとりが挨拶した方がずっと親近感が湧く。そうしたことが、保護者と職員との距離を一気に縮める。
     職員同士の関係においても同じだ。年の違う職員がみんなで芝居をしたり、合唱をしたり、大道芸を披露したりすれば、職場の堅苦しい空気はなくなり、和気藹々とした関係になれる。いうまでもなく、それは子どもだけでなく、保護者にも相乗効果をもたらす。

    /プロから伝授された演劇スキル

    やまなみカルチャー4 発達障害が消える集団をつくる
個ではなく、全員で挑む/“関係性の束”を大切にする保育/発達障害が消える二つの理由/
    園が精神科医の心の拠り所に
     やまなみこども園にあるのは、多様性を幸福と感じさせる文化です。みんな違うから楽しいわけであって、仮に困ったことが起きても、力を合わせれば乗り越えられるということが生きる上での共通認識としてある。だから子どもたちは多様性を素直な気持ちで受け入れますし、障害のある子も自然に溶け込めるのです」
     有馬は勤務する病院で発達障害の子どもの診断をしながら仕事に自信を持てなくなる瞬間が度々あったそうだ。
     医師としては発達障害という診断を下すことで、その子の特性が周囲から理解され、受け入れられるようになってほしいと望む気持ちがある。しかし、今の社会で起きているのは真逆のことだ。

    やまなみカルチャー5 保護者が保育にどんどん参加する
日中に園で親子が笑い合っている風景/
    親は初めから親なのではなく、親として成長するから親になる
     こうしたイベントに出る保護者たちがこぞって発するのが次のような言葉だ。
    「初めは何も期待せずに出席しただけなんですが、そこでたくさんのものを学ばせてもらい、親として成長させてもらったんです。だから、もっとそういう体験をしたいと思って出らる時は出るようになりました」

    /保護者が参加しやすい状況を用意する/やれるだけのことをやった家族に見える景色/親子が認め合うことで強まる家族の絆/父と子どもが生み出すファンタジー/父と子で乗り越える人生最大のピンチ/子育ての中には親にしかできない役割がある

    やまなみカルチャー6 保護者会を“第二の青春”の場にする
園への貢献は、わが子への貢献/園に来て初めて見えるわが子の姿/子どもを通して青春を再体験する/この園に入れたいから子どもを産む

    やまなみカルチャー7 全員で子どもたちを育て、喜びを分かち合う
保護者が主体の週末イベント/7人きょうだいが全員やまなみ/家庭だけでは得られないことをよその家庭から教わる/保護者同士の結び付きが困難を乗り越える力となる

    やまなみカルチャー8 困っている家庭をみんなで支える
先生と保護者の垣根を越えた関係/DV家庭に泊まりに来てくれた先生/先生と保護者の「共同生活」/卒園後も差し伸べられるたくさんの手/「新しい人生が開ける」と言われて/先生が心のモヤモヤを受け止めてくれた/最後に頼る先はやまなみ

    やまなみこども園の大家族主義「おばあちゃんの家」という文化
     この文化が、親子にもたらすものを今一度、簡略化して整理すれば、次のようになる。
    ・みんなが自分を守ってくれるという絶対的な安心感を得られる

    子ども側のメリット
    ・地域を巻き込んだ保育による桁違いの刺激によって感性が磨かれる
    ・何事にも高みを目指して全力で挑戦するようになる
    ・多様性を受け入れ、お互いを補完し合うようになる
    ・たくさんの大人から家庭内だけでは得られないことを学ぶ
    ・園を中心とした大家族という堅固な絆を手にする
    保護者側のメリット
    ・園から様々なことを学び、保護者が一人前の親へと成長できる
    ・保護者が園の活動に参加し、子どもの驚異的で感動的な成長ぶりを間近で体感できる
    ・全員で子育てをすることで負担を減らし、子育てを楽しめる
    ・園が、職場とも家庭とも異なる「第二の青春」を過ごす空間になる
    ・みんなが自分を守ってくれるという絶対的な安心感を得られる


     現在の子育て家庭が直面しているのは孤立”だという指摘がある。もともと人間は群れで生きる生き物であり、村社会に代表されるように集団で連携して行うのが子育てだった。だからこそ、昔の方が今より育児や家事にかかる労力が大きかったにもかかわらず、たくさんの子どもを産み育てることができた。
     しかし現代社会は昔ながらのコミュニティが崩壊し、保護者だけで働きながら一から十まで子どもの世話をしなければならなくなった。それが困難だから、保護者は子育てを他人に任せようとするし、国もそれを手助けしようと多額の血税を投入しつづける。たしかにこれによって保護者の労力は多少軽減されるかもしれないが、保護者が子育てに無上の幸せを感じて「もう1人ほしい」と思うようにはならないだろう。


    第二部 やまなみ文化はいかに創られたか
1 山間の町で育まれた心
戦後の時代に育まれた助け合いの精神/僻へき地ちで身につけた社会活動の精神/保育の理想と現実、そして挫折
2 子どもにとっていいものはすべて取り入れる
周囲の反対を押し切って開園する/徹底的に子どもに寄り添う/理想の保育を探求する旅/保育理論を地域の子どもに合わせて改良する
3 共働き家庭の出産を後押しする
子どもを“成長”させる保育を目指して/園の財政を保護者たちが支える/「何が何でもその子を産みなさい」/保護者会が主体になって園の理想を実現する/やまなみ経済圏の誕生
4 山並家の子どもたち
山並家に加わった「新しい家族」/茶髪の不良少女との10カ月/心に芸術文化の種を蒔まく/やまなみの物語性と演劇スキルの原点
5 奈落の底から新園舎を作る
失われた小さな命/世間からの容赦ないバッシング/新園舎設立に奔走する保護者たち/園の後継者を決めてください
6 新園舎に吹いた風
若者たちの夢と挫折/初めて子どもたちの心をつかんだ日
7 若き保育者たちの挑戦の日々
ドラマに彩られた新しい保育/“物語”を保護者と共有する/職員も大家族の一員になる/すべての人を受け入れ、一番の理解者になる/熊本地震によって破壊された生活/避難所となった園をみんなで支える
    第三部 それぞれの未来に深くかかわる
1 みんなが特技を磨いて補い合う保育
仕事を超えたところにある職員の喜び/全員で子どもの成長を優先する/職員全員で弱点を補い合い、特技を最大限に生かす/片親だからこそ職場に助けられた/毎週末に卒園生がボランティアに来る理由
2 卒園生たちと夢の舞台に立つ
幼馴染で構成される学童の絆/園から誕生した児童劇団/不登校からブロードウェイを目指して
3 通信制高校に咲くやまなみ文化
高校にも広がる園児との触れ合い/通信制高校生VSやまなみパワー/目の色が変わった高校生たち/行列ができるコミュニケーションの授業
4 全国に広まる卒園生たちのネットワーク
卒園後も肌で感じるやまなみの力/県外のやまなみネットワーク

    エピローグ
    道枝はつづける。
    「私はずっと『子育ては親だけでするものじゃない。みんなで助け合ってするものなんですよ』と言いつづけてきました。これってきっと子育てに限ったことではなく、人生全般に当てはまるものなんですよね。生きていくというのは、大勢の人と深くかかわり合って、時に泣き、時に助け、時に笑いながら歩んでいくことじゃないですか。
     そういう意味では、うちの園は人生の土台を作っていることになるのかもしれません。ここで培った絆が、保護者だけでなく子どもが成人になっても中年になっても高齢になってもずっと人生を豊かなものにしていく。それを色々な家族に会って感じている時が、私にとってものすごく嬉しい時間でもあるのです」

    0
    2026年10月24日

    Posted by ブクログ

    熊本市にある「やまなみ保育園」では、保育園に子どもを入れた親が次々と子どもを産むことで有名だ。二人、三人は当たり前。四人、五人の子どもを持つことも珍しくないという。それに興味を持った著者が、その秘密を3年にわたって取材した本である。そこには物語性を持った先生の教育、保育に喜んで参加する親、保育園の思い出を忘れない子どもたちという三者三様の関りがあった。結局、やまなみ保育園の秘密は、子どもを育てることが楽しくないと、子どもを持とうと思わなという当たり前の事実だった。

    0
    2026年08月17日

    Posted by ブクログ

    保護者目線だと園との相性とかもあると思うけど、活気のある先生、先生が楽しく働ける園はよいと思う!
    モンペだパワハラだモラハラだと言ってる昨今、教育現場は本当に大変。
    子育ても昔を持ち出されると取り巻く環境が全く違う訳で、、
    自分たちの保育方針を貫き、保護者を巻き込み、卒園児たちがこの園でよかったと思えるのは素晴らしい

    0
    2026年08月29日

    Posted by ブクログ

    やまなみこども園は、保育園の限界を超えている。
    でも、こんな園に我が子を入れられたら、子どもはもちろん親も成長するかも…。

    0
    2026年06月29日

    Posted by ブクログ

    自然に返したジョロウグモからのお礼。柿を盗る疑似体験。豊漁祈願の「ぶちあわせ太鼓」。ドラマを織り込む。スリルを味わう。挑戦意欲を引き出す。卒園しても生涯記憶に残る。地域丸ごと園の庭。保護者も参加し、支え合う。子どもとともに親も成長する。子育ては苦役から喜びに。子どもの数は3人、4人。もう一人産みたくなる。「少子化に打ち勝つ保育園」は奇跡のように40年。認可外の弱み、財政難、プールでの事故。数々の困難を地域一体の大家族で乗り越える。批判もある。普遍的にはできないが、子どもが増える未来への希望を与えてくれる。

    0
    2026年04月07日

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