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なぜ、私の前に世界は「現象」しているのか。この問いを巡り、現象学の祖はいかに思索し、どのような限界に漸近していたのか。気鋭の哲学者による驚きに満ちた「現象学」解読の、そしてフッサール超克の試み。(講談社選書メチエ)
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Posted by ブクログ
フッサールとの対峙し、格闘する。明瞭に言語化する作業は偉業だ。 特に第3章 記号と意味ー「現象」の内実が素晴らしい。息を飲む。 ・自己同一的なものとはすでにして過ぎ去り・失われたものの「反復」なのであり、 したがって認識とはつねに再認なのである。(P155) ・「記号」とは原理的に何ものかが不在で...続きを読むあることもって、その不在であるものが現前するという機構。 ・すべては不在を孕んだ「意味」(=記号)として現象する(P156)
[ 内容 ] 「世界が現象する」とはどういうことなのか。 フッサールの問題系に気鋭の哲学者が挑む。 驚きに満ちた「現象学」解説の、そしてフッサール解体の試み。 [ 目次 ] 第1章 たび重なる「転回」―数学から超越論哲学へ 第2章 事象そのものへ―「現象」への還元 第3章 記号と意味―「現象」の内...続きを読む実 第4章 身体と私―「現象」の媒体 第5章 世界―「現象」の場所 第6章 時間と他なるもの―「現象」の外部へ [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
フッサールの思考の進展を丹念に追いながら、超越論的現象学が本来的にたどり着いた認識の絶対根拠を明らかにしていく。現象学というものが実に根源を追求する学であることを、著者自らが実践しつつ納得させてくれる。
第1章では、心理学主義と論理学主義のはざまの道を歩もうとしたフッサールの努力が、たいへんわかりやすく整理されている。第2章以下では、フッサールの思索した道を著者自身の哲学的思索を通じてたどりなおしている。著者の議論はたいへん明晰だが、「現象学的」と呼ぶにはやや思弁的な性格が強いように思う。 フッサ...続きを読むールは、世界の一般定立に判断停止を施すことで、「現象」と呼ばれる領野に立ち返ろうとする。これが「超越論的還元」である。しかしフッサールは、こうした方法による超越論的現象学が、「超越論的自我論」としてのみ可能だと考えていた。著者はフッサールの自我論の構想にはしたがわないで、すべてが「現象する」ことからしか始まらないという事態に目を向け、その仕組みを解明することをめざしている。 著者はまず、現象する「何か」が「何か」であること、つまり自己自身に等しいことは、どのようにして可能なのかと問う。あらゆるものは時間の中に成立し、現象するや否やただちに流れ去ってゆく。そこでは、たえず不在へとみずからを譲り渡してゆくことの中で、はじめて現象が成り立っているのである。著者はこうした現象の仕組みを支えているのは、もはやないものを現象へと取り集める「想像力」だと考える。 次に著者は、想像力が「私は……をなしうる」(Ich kann ...)という「能力性」として、私の身体に根を下ろしていることを明らかにする。しかも、そうした私の身体の運動=感覚に相関して、そのつど世界が「地」の上の「図」として描き出されることになる。フッサールのいう「地平」、世界のこうした構造を意味していたのだと著者は述べている。 最後に著者は、「すべては現象する」ということからしか何ごとも始まらないにも関わらず、そのような事態が可能になっているのは、「すべて」が外部の「無」に接してしまっているからではないかと考える。そしてこのことは、すべての始まりである「現象すること」がその「起源」をみずからの内にもっておらず、その底が「無起源」へと抜けてしまっていることを意味する。著者は、晩年のフッサールの「生き生きした現在」をめぐる思索が、まさにこうした「無起源」をめぐる問題圏に触れていたのではないかと論じている。
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フッサール 起源への哲学
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斎藤慶典
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