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65歳、島に家を建てて、暮らしはじめました
伝統家屋の家に住むということ、祭り、食、人々との交わり。
光と祈りあふれる島での日々を綴った八重山日記
著者は勤めていた大学を定年前に退職し竹富島に移住、赤瓦で平屋造りという伝統家屋の家を建て、65歳にして初めての一人暮らしを始めます。
人口330人、娯楽施設はもちろん、買い物ができる店もない「不便」な島。ですが、年間25もの祭事・行事がある島での暮らしは、つねに神様とともにあり、島の人たちとの深い人間関係にも守られています。
伝統家屋の家に暮らすということ、祭り、食、人々との交わり……。島で暮らすことの喜びとともに目覚め、喜びのうちに眠りに就く、移住最初の1年を綴りました。写真多数。
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Posted by ブクログ
三砂ちづるさんの著作『竹富島に移住して見つけた人生で大切なこと』は、多忙な現代を生きる私たちが忘れかけている、人間本来の健やかな営みや時間の流れをそっと思い出させてくれる一冊である。著者が琉球の島々に魅せられ、中でも赤瓦の家並みとサンゴ礁の海が広がる竹富島に深く惹かれていく様子が、温かい眼差しで綴られている。本書のページをめくっていると、都会の喧騒から切り離された南の島の穏やかな空気感が、まるでそのまま手元に届くような心地よさを覚える。
本書を読んでいて何より印象的だったのは、その独特の語り口だ。エッセイを読み進めていると、著者の思考や思い出がふとしたきっかけで別の話題へと広がり、本筋から少し離れてしまう場面が何度か見られる。まるで目の前で著者がお茶を飲みながら、思いついたエピソードを楽しそうに語って聞かせてくれているかのような、親密でリラックスしたライブ感がある。最初は少し話が逸れることに驚くものの、不思議とそこに不自然さや退屈さは一切ない。むしろ、そうした脱線の中にこそ著者の日常の機微や、島の人々との心温まる交流、ふと脳裏をかすめる哲学的な思索が自然に溶け込んでいる。一つひとつのエピソードが無駄なく有機的に結びついており、読後は全体として見事なハーモニーを奏でているかのような深い満足感に包まれるのだ。
そして、ページをめくる手を動かすたびに強く胸を打たれたのが、定年後にこのような美しい島で暮らすという選択肢の素晴らしさである。規則に縛られ、時間に追われる日々の延長線上ではなく、ただ自然の営みに寄り添いながら人生の後半を過ごす。その生き方は、まさに夢のように眩しく、心の底から羨ましいと感じざるを得ない。竹富島には、世代を超えて受け継がれてきた伝統や、人と人との強い結びつき、そして自然と共生する知恵が息づいている。そこで暮らす人々は、時間に支配されるのではなく、おおらかな島時間の中で日々を慈しむように生きている。著者がその暮らしに身を置き、身体感覚を取り戻していく姿を追ううちに、自分の人生において本当に大切にすべきものは何なのかという問いが、静かに心の中に湧き上がってきた。
効率やスピードばかりが重視される現代社会において、本書は立ち止まることの価値を教えてくれる。気の向くままに話を膨らませる著者のユーモアと優しさに触れ、南の島の豊かな自然と暮らしに思いを馳せる時間は、読者である私たちにとってもかけがえのない癒やしとなる。人生の折り返し地点を迎えたとき、あるいは日々の生活に少し息苦しさを覚えたとき、いつでもこの本を開けば、竹富島の温かな風と、自分を取り戻すためのヒントが優しく迎えてくれるはずだ。
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