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児童養護施設で育った元不良の翔太は先輩の誘いで「カタラ」という会員制バーの従業員になる。ここは言葉巧みに女性を騙し、惚れさせ、金を使わせて借金まみれにしたのち、風俗に落とすことが目的の半グレが経営する店だった。〈マニュアル〉に沿って女たちを騙していく翔太に有名私大に通いながら〈学び〉のためにカタラで働く海斗が声をかける。「俺たち一緒にやらないか……」。二人の若者を通して日本社会の歪み、そして「本当の悪とは何か」を描くベストセラー社会派小説、待望の文庫化。〈解説・豊崎由美〉
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Posted by ブクログ
ここ15年ほどの日本で起きた事件や社会の闇を彷彿とさせる出来事を随所に織り込みながら、本当の悪とは一体何なのかを容赦なく突きつけてくる、ノンストップリアル小説。
国の一大事業に群がる政界、財界、広告代理店。その下に幾重にも連なる中抜き会社、さらにその末端で搾取される零細企業。半グレやヤクザを介した金の流れ、ホストから風俗への斡旋まで、あらゆる欲望と利権が複雑に絡み合い、日本社会の暗部が次々と暴かれていく。
悪に染まる者、悪から抜け出そうとする者、そして悪によって人生を壊される者。
立場は違えど、誰もがこの悪の構造から逃れられない。
人間には、誰かを傷つけたり、貶めたりする心がある。ほんの気まぐれや嫉妬、優越感から誰かを踏みつけてしまうこともある。
しかし、明確な悪人ではなく、自分が悪だと認識していない人間こそ、本当の意味で恐ろしい。
犯罪ではない、間違っていない、誰だってやっている。
そうやって一つひとつの行為を正当化していくうちに、善悪の境界線は少しずつ崩れていく。
成功体験ですら、人を正しい方向へ導くとは限らない。
努力が報われる。人から認められる。自分の判断で人や時代を動かせる。
そんな経験を積み重ねるほど、自分は間違っていないという確信は強くなり、自分の価値観こそが正しいという錯覚を育ててしまう。
その自信が、やがて他人の声を聞かなくなる傲慢さに変わり、間違いを間違いだと認識できなくなったとき、人は自ら破滅へ向かうのだ。
悪人にならないこと以上に、自分は正しいと思い込みすぎないことの重要性。
本当に恐ろしい悪は、分かりやすい顔をして近づいてくるとは限らない。自分の中にもある小さな傲慢さや、誰かを見下す気持ちを見過ごしてはいけない。
悪とは、自分は悪くないと思った瞬間から、誰の中にも芽を出すもの。それを絶対に忘れたくないと思った。
Posted by ブクログ
XのTLで表紙が流れてきたので読んでみました。
月村了衛さんの扱うテーマが好きなんですよね。
今回はタイトルにもあるように、半グレはもちろんのこと、東京オリンピックの裏側も描いてらっしゃる。
フィクションであることは分かっていても、リアルの世界のあの人とか、あの人とか、顔が浮かんできてしまう描写力。
そして、あの事件の裏側(かなり抽象的……)。
会社の体質に問題があったんだろうな、とは思っていたけれど、その体質ってどんなもんだったのよ?!って、外の人間は思うわけですが。
内側の人間しか知り得ないであろう会社の姿も、痛々しく描かれています。
もうさ、不謹慎に聞こえるかもしれませんが、面白いとしか言えないじゃないですか。
この読書を通して、人間の持つ好奇心の力を改めて知りました。
600ページ弱の小説を1日で読んでしまうほど、突き動かされました。
もう、オチが気になって読まずにはいられないのです。
特に海斗。
ずっと人生を上手く泳いできた人間が、とあることをきっかけに落ちていく。
その姿を見ていると、やっぱり神さまっているんだ……と思ったり。
それにしても、月村了衛さんはストーリーの組み立て方が非常に上手いんですよね。
一つ一つの出来事は単純なのに、それらを組み合わせることで、複雑なストーリーを創り上げていく。
しかも、今回は読書を人物描写に使っているのが、たまらない。
登場人物がどんな本を読むのか。読書の向き合い方って人柄が出るんですね。
そこから、その人物の内面まで見えてくるようで。
こういう描き方、好きなんですよね。
『脂肪の塊』、読んでみよう……。
Posted by ブクログ
置かれた境遇がまるで違う2人が罪を犯す。その後の2人の生き様を、二つの章に分けて描いた作品。
翔太のような底辺からの犯罪は、生きるための必然という悲壮な切なさがある。
一方、海斗の側にある空虚さと欲望の際限のなさから生まれた犯罪は、挫折も痛感も知らず、欲しいものを手に入れ続けて来た人間だからこそ、他人の痛みや自分が誰かを破壊しているという事実に想像力が及ばないからこそたちが悪い。
スマートな人間が犯す無神経な罪の汚さに恐怖しつつ、本に救いを求める翔太の姿に胸を打たれた。
物語や言葉が、現実を生き抜く糧になり世界を広げてくれる。読書の真価と意義を改めて教えてくれた。
Posted by ブクログ
作中の翔太に影響されて、稚拙ながら人生初レビューです…笑
海斗のような"グレーな人間"こそ"人間の真の邪悪"なのではないかというメッセージは、地域や歴史を問わず存在する"人間の醜さ"を的確に表現していると思います。
自分ごとですが、私の身の回りにも「法で裁かれないことをしてなんで悪いの?」といった論調で、悪意を持たずして他者を傷つける人がいました。私は「なぜ悪いのか」を上手く伝えることができず、納得もされなかったため、今でも違和感と不快感が残っています。ラストシーンの翔太と海斗のやり取りには、当時の私達の会話に通じるものを感じました。
"誰にも裁けない悪"を"悪"とも思わない人間に対する不快感や諦め。本作では、私達が普段の生活で確かに感じているにも関わらず、上手く言語化できない感情が描かれているように感じました。
Posted by ブクログ
面白かったです。
翔太の話が特に良かった。
逆に海斗については生きる世界が違い過ぎて興味深かったです。
海斗に似た人として特定の方を思い浮かべる人も多いんじゃないかなと思います。
私は翔太のような人よりも海斗のような人の方が思い浮べやすいので、その事実に少し悲しいなと思いました。
そして海斗は恵まれた環境で育ってきたのに…という書かれ方ではありましたが、海斗にとって本当に恵まれた環境だったのか?というところは疑問に思います。
海斗が突き進んだのはお手本となる人達、そしてそれを助長する人達がいるからでもあると思います。
もちろん海斗が選択してきた結果ではありますが、海斗もある意味被害者なのではないのかなと思っちゃいました。
海斗の幼少期なども気になります。
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